第21話 宝石瓜
「ボス、こんど一度、開拓地に来て見てくだせぇ」
「ああ、暇を見つけて行くよ」
「それと、こんなのを見つけましたぜ」
チンピラヴァンパイアが奥地で見つけたと言って、小振りの枕ぐらいの綺麗な果物を持ってきた。
七色の透き通る果物だ。
「ジュサ、これなんだけどなんだか分かるか」
「それってもしかして宝石瓜じゃないの。オークションで金貨千枚の値段がつくらしいわよ」
「これが一つ見つけただけで、王都に
さてとどうするか。
売るのは簡単にできる。
ボルチックさんに頼めば良い。
たが待てよ。
話では宝石瓜は鑑賞用でなくて食用だ。
アンデッドにしてから売ってみよう。
なんとなく格が高いんじゃないかと思った。
「宝石瓜よ塩を
頭の中に響くファンファーレ。
久しぶりに来たな。
やっぱり格が高いのだな。
「あー、アンデッドなんかにして。
「俺達は味見できないけど美味くなっているはずだ」
それから、ジュサに宝石瓜の格を下げさせて、ボルチックさん売り渡した。
今日はボルチックさんと会合の日だ。
「どうでした宝石瓜」
「切り分けて売ったら、もの凄い評判で」
そりゃ金貨千枚は一括では出せないよな。
百等分すれば金貨十枚だから、なんとか買えるだろう。
「それほどですか」
「最初に買った人がなんとグルメで評判のグレンスさんでして。クチコミで噂が広がってあっと言う間に完売です」
「それは良かった」
「ものは相談なんですが、宝石瓜の漬物をもっと作れませんか」
「作りたいのはやまやまなんです。けど、材料がなんとも」
「ではこういうのはどうでしょう。宝石瓜の漬物を売ったあなたと私のお金で商売しませんか」
「具体的にはどんな事を」
「オークションで宝石瓜を競り落とすのです。それで漬物を作る」
なるほど俺はレベルアップが出来るので損は無い。
「是非やりましょう」
「良い商売ができた気がします」
「ではオークションで落札できたら連絡して下さい」
「ええ」
がっちりと握手してから別れた。
オークションで宝石瓜が落札されるのを首を長くして待とう。
俺はデルバジルを護衛にして、森の奥の開拓地に行く事にした。
目印の樹の傷を頼りに森を歩く。
この辺りの魔獣もだいぶ減ったな。
道中、魔獣の襲撃もなく目的地に着いた。
開拓地は木が切り倒されて、切り株がゴロゴロと転がっていた。
「おい、来てやったぞ」
「どうです。広いでしょう」
そうだな。
百人ぐらいは住めそうだ。
だが、まだまだだ。一万人ぐらい住める大都市にしたい。
「よくやった。これからも変わらずに励め」
そうは言っても、まだ建物を建てる段階では無いようだ。
しばらくしたらまた来てみよう。
俺は今、
ジュサが朝早く村から野菜を回収するので、起きた俺はそれを漬物にする。
漬物にしたら街まで運ぶ。
そして、街でシャデリーとデルバジルの報告を聞いて色々な対処をする。
街から帰ったら、チンピラヴァンパイアの報告を聞くといった具合だ。
漬物作りを別の死体術士に任せられたら良いのだが。
待てよ。
漬物作りは別に死体術士だけの特権だとは限らない。
呪術で作っても良いんじゃなかろうか。
「ジュサ、呪術で漬物が作れないか」
「そんな事を考えた事が無かったわ」
「塩を染みこませる呪いだ」
「なるほど。かの物を塩と乳酸菌で苦しめたまえ【カース】。あーあ、本当につまらない物を呪ってしまったわ」
「お味はどうかな。うん、普通の漬物だ。でもこれはこれで美味いな。聖水漬けには劣るけど、売り物にはなるな」
後はシャデリーの闇魔法で漬物か。
えーと、腐敗魔法は別系統だし。
精神魔法は関係ないな。
塩を染みこませてから乳酸菌の活性化が出来れば良い。
乳酸菌の活性化は精神魔法でなんとかなりそうだ。
塩は魔法毒に侵すのでなんとかならないか。
塩だって毒の一種みたいなものだろう。
そうと決まれば街まで野菜を運んでシャデリーに試してもらおう。
俺は店までやって来てシャデリーを呼んだ。
「闇魔法で漬物を作れ」
「ええええっ。どうやって」
「塩の魔法毒に侵してから乳酸菌を活性化だ」
「乳酸菌ってなに」
「そこからか」
一時間掛けて細菌のレクチャーをした。
「という訳だ」
「やってみるよ。塩の毒でこの物を侵したまえ【ダークポイズン】。乳酸菌よ狂乱せよ【フレンジイ】」
「食ってみるか。ふむ美味いな。ちゃんと漬物になっている。塩加減はちょっと調整が必要だな。シャデリー、副会頭に昇格だ。代わりの店員が見つかったら漬物を作れ」
「まったく闇魔法で漬物を作るなんてね」
「ところで前から疑問に思っていたけど闇魔法はどこで覚えた」
「それね。言いたくなかったけど、禁忌持ちのコミュニティがあるのよ」
「紹介してはくれないのだろうな」
「そうね。あなたは危険すぎる。コミュニティのメンバーは平和を愛する人がほとんどだわ。そっとしておいてほしい」
「なにか困った事があったら言えよ」
「ええ、頼らせてもらうわ」
漬物を作る必要が無くなって手が空くな。
チンピラ狩りもほとんど終わった事だし。
そろそろ、
デルバジル、最後までばれなかったな。
意外と優秀なのか。
長く使ってやるかとも考えたが。
禁書には記憶が動かすと書いてあった。
たけど、魂が囚われているような気もするから、切りのいいところで死体に戻してやろう。
早く支部を壊滅させる作戦を立てないとな。
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