第2章 世界樹から始まる英雄への道
第8話 世界樹に辿り着く
ジュサという仲間も得て漬物作りはさらに加速した。
現在のレベルは40。
リビングアーマーも作れるようになったのだが、目標とする50には届かない。
40の状態で足踏みだ。
原因は分かっている。
武人が
野菜は言うなれば
いくらゾンビにしてもこれ以上レベルは上がらない。
だが、アンデッド用の回復魔法【アンデッドヒール】を覚えたのはありがたい。
これで劣化したアンデッドを元に戻せる。
リビングアーマーが劣化すると懐にやさしくないからな。
よし、教会に歯向かうと決めた俺に恐いものなどない。
やってやるぞ。
雑兵ではない大将首を。
「ジュサ、協力して欲しい事がある」
「なによ。改まって」
「世界樹の実を街まで運ぶ」
「えっ、私は走るのは嫌よ」
世界樹の実は足が早い。
捕まえるのに走らないといけないって事じゃない。
腐るのが早いんだ。
世界樹の実から作られるエリクサーは新鮮な実でないと作れない。
なら、やる事は決まっている。
「走らなくていい。策がある」
「それならいいわ」
「足自慢の人間は誰でも世界樹の実を運ぶ挑戦権が与えられる」
「ええ、農民だろうが、スラムの住人だろうが問題無いわね」
「しかも、実がなっている期間は何度でも挑戦できる」
「でも、世界樹は教会が管理しているでしょ。私達の職業がばれないかしら」
「前に一攫千金を求めて挑戦した事がある。その時に鑑定士は居なかった」
「世界樹の実はどこに売るの」
「もちろん教会に売ってやる。教会に反抗するための金を教会に出させるんだ。痛快だろ」
「そうね」
世界樹の樹は魔獣の森にある。
俺はリビングアーマーの
「やっぱり出てきた。オークだな。ジュサ、思いっ切り呪ってやれ」
「かの者の握力を弱体化させたまえ。【カース】。もの凄いつまらぬ者を呪ってしまったわ」
「行け。
フライングソード2本が空中を飛び交う。
オークは棍棒で払おうとしたが、棍棒がすっぽ抜けて空振りに終わった。
握力が低下した状態だからな。
フライングソードがオークを一撃で刺し貫いて戦闘は終わった。
「先を急ごう」
「ええ、オークは臭くて嫌だわ。ああ、服を呪いたい」
戦闘は何度かあったが、フライングソードとリビングアーマーの敵ではなかった。
目の前に天を突くような巨大な樹が見えてくる。
世界樹だな。
樹には桃色の実が沢山生っていて花が咲いたようだった。
さて、いよいよ世界樹の実を街まで運ぶ大作戦だ。
「どんな作戦で行くのよ。いいかげん教えてよ」
「普通の人間は世界樹の実を運ぶのにチームを組む」
「そうよね、ベースキャンプを道中に設営するのが普通のやり方。その中に氷魔法使いを待機させるのがもっとも確実だと聞いたわ」
実を運ぶのは足の早い人間がやる。
それだと大掛かりになるので実入りは少なくなる。
それに、そこまでやっても成功率は良くない。
氷魔法だと腐りは止まるが、細胞が壊れる事で劣化が少し早まる。
差し引きとして、何もしないよりましという程度だ。
時空魔法使いの時間停止という手もあるんだが、魔力が
「俺は
「早く教えて」
「人が見えてきたから、続きは実を貰ってからだ」
世界樹の根元に着いた。
辺りは人でごったがえしている。
よくもまあ、こんな奥地まで来たな。
冒険者と思しき人間が大半だ。
中にはろくに装備も持ってない連中もいる。
職業の力があるから、装備だけでは一概に実力は測れない。
俺は実を貰う列に並んだ。
聖騎士が一人一人に桃に似た実を渡す。
俺はひやひやする感情を読み取られないように平静を装って実を貰った。
ジュサの所に行こうとすると男が嫌な目でこちらを見ているのに気づいた。
女連れで来ている人間はいないから要らぬ
念のため集団から離れジュサに話し掛ける。
「まずは世界樹の実を割る。種を取り出すから、ジュサは種を殺す呪いを掛けるんだ」
「それなら余裕だけど」
「俺はそれをゾンビにする。魔力が抜けるまでは新鮮なままだ。それだけじゃない。劣化したら【アンデッドヒール】で回復する」
「確かに、種を殺さないとゾンビに出来ないわね」
「ああ、砕いても良かったんだがなるべく破損させたくない。質が下がるからな」
「それじゃ、やるわね。この物を衰弱させたまえ。【カース】。また、つまらぬ物を呪ってしまったわ」
「よし。世界樹の実よゾンビになれ。【メイクアンデッド】【アンデッドヒール】」
割った実も【アンデッドヒール】で元通りだ。
これなら、ゾンビだとはばれないだろう。
かなり魔力を注いだはずだが、ファンファーレは鳴らないな。
一回ぐらいでは駄目って事か。
【メイクアンデッド】の経験値は最初の一回が一番多い。
魔力を切らして、再びアンデッドにすると経験値が少なくなる。
運ばないで、何回も実をもらうと目をつけられるだろうな。
一回一回、確実に運んだほうがよさそうだ。
「急いで街まで向うぞ。ジュサはリビングアーマーに担がれてくれ」
ジュサがリビングアーマーの肩に担がれる。
「ちょっと、誘拐されるみたいで、嫌なんだけど」
「お姫様だっことどっちが良い」
「おんぶとか肩車って選択肢はないの」
「お前スカートだろう」
「そうでした。お姫様だっこ希望」
「はい、はい。
俺はリビングアーマーの
ちらりと後ろを振り返ると嫌な目つきの男がぴったりと後を付いてくる。
そんなに女に飢えているのか。
女なんか街にいけば
リビングアーマーが速度を上げ男を引き離した。
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