#4

「玲ちゃん! なんでそんな早足なの!? 追いつけないよ!」

「ついてこないでください」

 となり街のターミナル駅に着いた二人は、彼女が生前住んでいたという住宅街を目指すことにした。この駅の地下は近辺の町では一番の繁華街で、玲も何度か訪れている。地下街の目抜き通りを、玲はランニングに匹敵する速度でずんずんと進んでいく。

「玲ちゃん! 玲ちゃん!」

「……なんですか?」

 玲が面倒そうに振り返ると、彼女はカジュアル服のウインドウに張り付いていた。玲を満面の笑みで見つめると、手をぱたぱたと振って招き寄せる。

「このボーダーとショートパンツ、玲ちゃんに似合いそう……。玲ちゃんはスレンダーだし、手足も長いからこんな感じの組み合わせがいいかなぁ?」

 玲はあきれ顔で彼女を見ていたが、黙殺して先を急ぐことにした。

 あわてて駆け寄ってきた彼女は、不満そうにぶつぶつと言っていたが、しばらくするとまた嬌声を上げた。

「玲ちゃん! ちょっとこれみてよ!」

 玲が黙って後ろを振り向くと、彼女は和菓子屋のまえで目をきらきらと輝かせながら店先の張り紙を指さす。

「ここの善哉、すごくおいしいのよ! 一日限定三〇杯なんだよ? 今なら間に合う! 入ってこうよ」

 玲はこめかみが引きつるのを感じた。

「……………………頭蓋骨ごとここに置いていきますよ?」

 彼女はわかったわよと頬を膨らませると、しぶしぶ店先を離れる。

 その後も彼女は、ゲームセンターやファンシーショップを見つけるたびに、玲を呼び止め辟易させた。

 二人が住宅街に着いたのは、玲が十二分に疲弊したのちであった。

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