第2話 幸人(こうじん)
知性もまた愛と同じように物質ではなく、霊的なもの・・・
人は霊的なものを所有することによって、より幸福になる。
青年は考えた。考え続けた。彼は歩きながら、また、机の上でひたすら長い年月を考え続けた。
私は一体何なのか?
突然私の前に光が現れたのだ。そしてこの世の中の全てがこうして私を取り囲み、私の前に厳然と存在するようになった。
世の中、一体これは何なのか?
世界は様々なことを語る、しかし私には一切関係のないことだ。私は生きねばならぬ、世の中が面白いゆえに。興味深いがゆえに。
20数年前に忽然としてこの世が現れた。しかし、私は決してこの世に洗脳されることはない。私がこの世に現れたのではなく、私の前にこの世が現れたことを私は知っているのだから。
・・・・・
この世に自分が現れたことを疑わないものを、私は俗人と呼ぼう。そして、この世が自分の周りに訪れたことを知るものを、幸人と呼ぼう。
なぜなら彼は死を死として受けとめないからだ。死は疑問に対する答えなのだ。幸福とは、死から遠く離れること、不幸とは、死を感じることに他ならない。死が「疑問に対する答え」であるゆえに、その人は幸人なのだ。
幸人よ、あなたの前に、見よ、あなたと同じ人間がいる。見よ、あなたを包む自然を。これら興味深いものを味わい知れ、これらの正体を観察し、知り得るが良い。生を受けたのならば、その生を堪能するが良い。
青年はこうして自らを幸人とよんで、この世の中で生活するようになった。彼の中で、陽が上り始めたのだ。それは彼の人生の曙光であった。
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