第3話 Secret love!!

『いいか、校内にいる間だけでいいから俺の指示に従ってくれ!!』

『了解です!』

LINEに書かれたメッセージには、どこか晴人の必死さを疑わせた。


話は約1時間前に遡る――




『なぁ夢月、お前今まで何人に告られた?』

朝食を食べながら、晴人は懸念していた事を夢月に問うた。

『えーと・・・多すぎて覚えてないです』

(ほぅらやっぱりな)

晴人も半ば分かっていたのだ。

夢月は人目を引く容姿、しかも中々の美人。

ともなれば告白されまくるのはわかりきっている。

まぁ当然数も多けりゃ覚えきれもしない訳で。

『とりあえずバレたら主に俺が殺されかねねぇ!!』

伝え聞いた話ではあるが、夢月のファンクラブもあるらしい。

バレたら晴人の命が危険に晒される。

『いいか、とりあえず学校ではLINEで連絡する!!』

『え、ええ!?』

『バレれば死ねる!!』

切実な思いだった。

やはり我が身かわいさか、そのメッセージから感情を読み取った夢月はそれを了承するのだった。



――――そして、今に至る。

(授業中でもLINE使えるのはありがてぇ・・・)

一歩間違えば死に直結する、もはやこれはゲーム。

晴人の脳内ではどうすれば良いかはある程度は予想がつく。


しかし、あの夢月だ。

あの夢月である。


ハイパードジの夢月である。

いつ予想外な行動に出るか分からない、その上いつぼろが出るかも分からない。

ひたすら怖い。

おそらく4分の3の確立でドジを踏むのだろう。

というかドジらない方がおかしい。

「えーでは、この文章の中に答えが書かれてる訳だが・・・赤崎、どこかわかるか」

現国の授業中、夢月が当てられる。しかし夢月はLINEに夢中だ。

『夢月、お前当たってる!!』

『!?』

途端顔を上げ、急いで辺りを見回し、声をあげる。

「そうか、君はそういう奴だったんだな、です!!」

「いやなんでエーミールゥ!?」

うっかり大声で突っ込んでしまう程驚愕の回答。

何より今やってるのは論説文だ。何故今それが出てくるのだ。

「お、おぉ・・・もういいぞ」

先生さえ呆れる回答だった。




「んーではこの問題を・・・大凪!!解きなさい!!」

「うげぇ!?」

かのタイ米直々のご指名だ、答えない訳にはいかないのだが・・・

晴人はとてつもなく数学が苦手、中学生の平方根までしか碌に解けやしないのだ。

「え、えぇ~と・・・」

解けないだろう、とドやりながら見つめてくるタイ米の細い顔をこれほどまで殴り飛ばしたくなったのはいつぶりだろうか、と晴人は思うが今はそれどころでは無い。

すると、スマホから小さく通知音が鳴る。

『x+8x+16、ちゃんとやったら式展開になります!!』

おいマジか、それなら解けるぞとばかりに知識をフル回転。

「えーとえーと、あーすりゃこうなって・・・あ、x+8x+16!!」

「なっ!?・・・くっ、正解だ!」

「あ、あっぶねぇー・・・」

こういうとき、本当にLINE使えてよかった・・・と、心底ありがたみを感じる晴人。



しかし、事件は昼休みに起こってしまった――――

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