第90話 『ラストバトル』 その3


 ラーメンやの主人が、さらに言いました。


 『あれは、運だけで乗り越えられるものでは、ありません。まりこ先生は、すぐに、見抜いたのでしょう。』


 『え? なにを?』


 兄様が尋ねたのです。


 『あなたは、気がつきましたか? あの渦の内部では、早すぎて回りからは分からないが、巻き込まれたすべての物体が、常に等速度で、等間隔で回っていて、ほとんど、互いにぶつかってはいなかったかもしれない。まあ、多少、外周では、敢えてぶつけたかもしれないが。つまり、内周と外周では違っていたのでは? もし、下手に小細工したら、その関係性は崩れて、人間などばらばらだった。かも。たぶん、まりこ先生は、何かにつかまっていたかもしれないが、なにもしないことが、唯一の手段だと見たのでしょう。それは、自然ではなくて、たぶん、あやつが、そうなるように、コントロールしていたのでしょうがね。まあ、もしかしたら、最終的には、まりこ先生に、重傷を与えるくらいを狙っていたのかも。しかし、敢えてぶつけたりはしなかった。内部では、見えていない駆け引きがあったとみるべきでしょうな。まりこ先生の勝ちというあたりかと。』


 『はあ。』


 こんどは、兄様が、ちょっと不服そうでした。


 『そんなことできるとは、思えない。』


 『うん?』


 新山悟は、兄様の言い方に、ちょっと、ひっかかったのです。


       🍣


 

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