第88話 『ラストバトル』 その1


 まわりは、依然として騒然とはしていたましたが、怪人とまりこ先生の、ラストバトルが、いよいよ、ついに、始まろうとしていました。


 人類の運命が、勝手にかかっていたのです。


 しかし、ふたりは、睨み合ったまま、動きません。


 ふたりの、視線がぶつかる辺りの大気が、過熱に耐えられず、蒸発し始めました。


 『あややややや、なんという、現象でしょうか。』


 新山悟がうめいたのです。


 しかし、兄様は、冷静に見ていました。


 『猛烈な、相撲のしきりみたいな感じだな。』


 兄様は、それでも、かなり、不気味に言いました。


 『ああした、まりこさんは、初めてだな。いままでは、まったく、敵なしだったからな。』


 『あれは、敵ですか?』


 新山悟が尋ねました。


 『うん。あれは、互角以上の敵かも。しかし、そもそも、あれは、人間ではないだろう、からな。理不尽ではあるが、それは、でも、まりこさんは、気にしないだろう。』


 両者、にらみ合いが続きました。


 中間地点からは、濛々と、火山のような、激しい蒸気が溢れて、吹き上がっていました。


 やがて、怪人が笑いました。


 『かははははははは。さすがは、まりこ先生ですな。普通の人間ならば、すでに、焼け焦げているが、まずは、敬意を表しよう。』

 

 『あの、怪人の視線は、まさしく、殺人視線です。』


 らーめんやの大将が、らーめんを、床にこぼしたように、言います。


 『あいつは、ただ、ちらり、睨んだだけで、人を殺す。しかし、まりこ先生は、耐え抜いた。いや、互角に渡り合った。それだけで、すでに、もう、奇跡です、が、あれは、始まりに過ぎない。』


 怪人は、お口を膨らませると、あたかも、ろうそくを吹き消すように、ふっ〰️〰️〰️っと、まりこ先生目掛けて、吹き出しました。 


 すると、リング内にあった、あらゆる木々は吹き飛び、大地はぐるぐると、舞い上がったのです。


 『あわわわわあ! まるで、アニメみたいだあ。』


 また、新山悟が叫びました。


 もちろん、会衆みなが、沸き上がったのは当然でした。


 『まりこ先生、ばらばらになるぞ。』


 リングの中は、強力な洗濯機の中みたいになりました。


 つまり、大地が巻き上げられ、そこには、多量の木々や、石や、水も混じっていますから、まるで、ジーンズの洗い工程みたいになっていたのです。



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