第83話 『大将の正体』 その16
初代生徒会長は続けます。
『副会長さんとは、必ずしも同意見ではありません。しかし、二人とも、最近理事長先生のありかたには、疑問がありました。元祖源泉師さまが、やがて人類の滅亡をお謀りになるということは、我々の共通認識です。しかし、人類が努力する限り、源泉師さまは見守ると教えられてきました。それは、かの、ゲーテ様が『ファウスト』のお終いの方で、早くに亡くなった子供たちの変わった天使たちに、いわしめていましたようにです。』
初代生徒会長は、一気に言って、そこで一息入れたのです。
『あなたの先輩は、ゲーテも読んでいたみたいね。見習いなさい。』
と、新山悟に、まりこ先生が言いました。
『だって、あいつ、昔の生徒だろう。その後、長く生きてるんだから、知ってて当然ですよ。』
『あなた、へりくつは、たつのにね。』
『そりゃあ、偏見です、まりこ先生。哀しいなあ。』
『しかし、いまの会話を聞きますと、源泉師さまは、本当に、近く人類を滅ぼすおつもりなのですか?』
と、初代副会長が尋ねます。
『申したように、まだ、検討中である。また、君たちは、すでに人類ではない。』
すると、初代理事長さんが、反論しました。
『いや、源泉師様。あなたは、我々を含めての、すべての人類種を滅ぼそうとお考えであると、わたしは、ようやく気が付いたのです。愚かと言えば愚か。しかし、あの奥義書の原本の内部に、わたしは隠された意味を読み取ったのです。それは、つい数年前でしたが。啞然とはしたが、他に解釈のしようがなかったのです。まりこ先生が見つけたのは、写本ですが、その部分は含まれない。念のために保管していたが、あのような場所を探すものがいるなど、考えなかった。見つかるはずは、なかった。』
まりこ先生は、言います。
『ふうん。まだ、いきさつは分からないけど、どっちもどっちの様な気がしますねえ。』
すると、兄様が、話に入りました。
『ぼくはね、あの本の読み方は、解読したよ。』
『ふふ。ばかな。人間ごときには、無理だ。』
初代理事長が、いまだにバカにしたように言いました。
『そらあ、あなたが読めたんだったら、ぼくに読めないはずはない。』
『なんと、おろかな。一緒にするでないぞ。』
初代理事長は、言い切りましたが、ちょっと不安そうです。
すると、怪人が答えたのです。
『ははははははははは。おろかなのは、あなたかもしれぬな。わが友よ。よいかな。あれは、あなたが原典とか原本とか言う、あれは、つまり偽りである。』
『なんと?』
『その様なものは、そもそもないのである。でっちあげだ。ははははははははは。』
『あわわわわわわわわわ。』
教頭先生が、卒倒しそうなくらいに、震え出しました。
『あの、まりこ先生、さぱりわからない。この話は、つまりなんでしょうか。』
新山悟が、あわあわと、言いました。
『おや、偏見かしら?』
『せんせ、それ、いやがらせです。』
『ふうん。まあ、つまり、やっぱり、明らかに、たぶん、どっちもどっちなのでしょう。ねえ、お兄様。』
『ふん。ふだんは、あにき! なのにな。ま、いいや。じゃあ、ぼくが読み取った内容を、ごく簡単に言います、参考にです。あなたの話しに割り込むが、いいですか?』
すると、初代生徒会長が、じつに丁寧に、まるで天使のように両手を差し伸べながら、お辞儀をしました。
『お伺いさせていただきます。』
『おもしろい。発言を許そう。』
怪人が、言いました。
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