第82話 『大将の正体』 その15
怪人が、こう言ったのです。
『ならば、我が友よ、わたしが結果を決めよう。お嫌かな?』
あたりがざわめきました。
『あなたは、結果を決める立場にはない。』
元理事長は、まだまだ荒い息ながら、あっさりと言い放ったのです。
すると、怪人は言いました。
『ならば、あなたの力を奪おう。あなたは、さらには、生きることがでなくなり、人々は力を奪われて、早晩もとに戻るだろう。』
『ならば、闘うしかない。あなたは、やがて、人類を絶滅させる気でいる。その日も決めていた。あと1年後だ。だから、急ぐのだ。』
また、あたりが一段と、騒然としました。
『なんと。それは、いまだ、決めてはいない。いまも、人類の行いを測っている。いまだにだ。遺憾なことに、伸ばし伸ばしになってきているのである。人類は、おろかな時期と、多少はましな時期を繰り返してきたからだ。ここしばらく、多少はましだったが、再び、おろかになりつつある。』
『なに、この会話は?』
さすがのまりこ先生も、理解に苦しんだのです。
そこに、ようやく、割り込んできたのが、初代生徒会長と、副会長でした。
『先生も、元祖原泉師さまも、おやめください。わたしたちの話を聞いてください。わたしたちは、長年、理事長先生に従ってきました。逆らうことはなかったが、一抹の疑問はいつも抱えていました。』
『君たちの出るべき場合ではない。ことは、すでに、トップに及んだ。』
『お言葉ですが、まりこ先生がおっしゃいますように、あなた様は、他人の意見を、ほとんど聴きません。いつもあとから、決めたから従うべしです。』
『それが、正しいからだ。きみたちに、道を作るのが、わたしの仕事である。』
『それは、強制です。』
初代副会長が言います。
『きみのような、利口な弟子までが言うのか?』
『あまり、言いたくはなかったのですが、やむを得ずです。このままでは、元祖原泉師さまは、人類を絶滅させるでしょう。』
『センセ。この、怪物たち、なにを言い合ってるんですか?』
やはり、一層、訳が分からない新山悟が、まりこ先生に尋ねたのです。
『さてと。内輪揉めは、分かりにくいものよね。レフェリーさま、あなた、速やかに判定しなさい。こちらの元理事長さまは、視力を失くしていますよ。はやく、手当てしなくては。』
『いや。いや。それは、ちと。まずいかと。』
レフェリーは、あえいだのです。
『なに言ってるの。あなた様は、レフェリーさまですよ。いま、まさに、あなたの判定が必要よ。それとも、もうちょい、闘わせる? いいわよ、あたくしは。でも、そうした感じではないし。』
まりこ先生は、すでに、元気回復したみたいでした。
『あんたは、なんなんだ? まったく、ダメージがみられない。あり得ない。人間ではなかろう。』
元理事長先生は、まだ、ほうほうの体ながら、ちょっとだけ、違う向きに、まりこ先生を指差しながら、言いました。
だれにも、もはや、勝敗は明らかに見えました。
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