第81話 『大将の正体』 その14


 『我が友よ、これは、いかなる訳か。』


 その、巨大化した怪人が、雷のように尋ねたのです。


 もちろん、初代理事長に向けて、尋ねたに違いありません。


 しかし、初代理事長は、答えません。


 『再度、問う。これは、いかなる訳か。』


 返事がありません。


 『ふむ。そなたは、かつては、若き騎士であった。この世界に蔓延る不正や争いや差別を極力無くし、広く公正な世を作ると語った。時間は掛かるであろうが、諦めずに、互いを高く認めあい、物理的な力ではなく、語り合いの力で、価値観の押し付けあいではない、金による圧力でもない、真の相互理解を達成したいと、語った。非常に困難な課題だが、教育に掛けてみたいとも。わたしは、その理想を試してみようと思い、そなたに、長い命を託した。説明せよ。これは、いかなる訳か。』


 初代理事長は、目が取れた顔を、怪人に向けて上げました。


 『これこそが、その、解答である。ただし、まだ始めたばかりだ。ここから、その理想の達成が始まる。みよ、この人たちは、あなたに似ている。あなたの後継者たちだ。みな、見た目には惑わされない存在なのだ。』


 『ほう。しかし、闘っているではないか。』


 『これは、スポーツだ。殺しあいではない。互いの意思をぶつけ合い、お互いを試している。武道なのだ。まりこ先生は、旧世界の代表者である。我々は、新世界の代表団である。』


 『うんま。よくもまあ。そんなことを言えるわね。話し合いをしたこともないのに。』


 まりこ先生が言いました。


 『まずは、互いの意思の固さを確かめるのだ。』


 初代理事長が断固として言いました。


 『あなた、どこかで、筋道を踏み外してるわ。これは、戦争の理屈と変わらない。問答無用のやりたかよ。この人たちに説明した? 話し合いをした?』


 『まさに、これが、話し合いである。』


 まりこ先生は、絶句しました。


 『あきれたわ。ただの独裁者ね。』





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