第72話 『大将の正体』 その5


 タルレジャ拳法は、タルレジャ王国に伝わる古武道です。


 伝説では、火星の女王さまだった、ヘレナさまにより始まり、火星文明の終焉とともに、王国はヘレナさまと共に地球に移り、その拳法も伝わったとされます。


 しかし、これは、伝説に過ぎません。


 火星に海があったのは、35億年以上前で、タルレジャ王国が地球に移ったのは、教典では、2億5千万年前とされること自体が、すでに矛盾していて、あり得ないからです。


 しかし、タルレジャ拳法は、タルレジャ王国で、やはり、ヘレナさまが開祖の、タルレジャ教とペアで伝わってきました。非常に変わった宗教で、他宗教とかけもちしても構わないという理念がありまして、また、他宗教をけして批判しないという基本もあります。


 実際、まりこ先生は、さっぱり真面目ではない仏教徒ですが、つまり、タルレジャ拳法自体は、最初期から、異教徒にも開放されていました。


 まりこ先生は、タルレジャ拳法だけではなくて、柔道や合気道の段位も持っておりますし、ボクシングもかなりできます。それらを、独自にアレンジして、ここまでは闘いました。


 しかし、この相手には、タルレジャ拳法で、闘う必要があると見たのです。


 

 タルレジャ拳法では、攻めの型と、守りの型は常にセットです。


 まりこ先生は、まず、定石通り、第一の型から始めました。


 相手の力を試す技です。

 

 まりこ先生は、猛烈に早いです。さっと仕掛けて、相手の反応を確かめます。


 たしかに、手応えはあったのですが、普通なら、これで相手は倒れたり下がったりするはずですが、実際には、なんの影響も与えなかったし、反撃もされませんでした。


 あきらかに、これまでの相手とは、格が違います。


 『ほう。タルレジャ拳法か。珍しいな。きみは、あそこの王女さまに、会ったかな?』


 タルレジャ王国の第一王女、ヘレナさまは、タルレジャ拳法の、世界に三人しかいない、大師範のひとりで、創始者の直径の後継者です。ただし、まだ若いので、総帥はアジアの奥深くにいる第一大師範が勤めていました。あとひとりは、双子の妹、ルイーザさま。次席には、もうひとりの妹のヘネシーさまがありました。


 『一度だけ。昇格試験で。』


 『すばらし。彼女は、不滅の存在なのを知っているかね?』


 『はあ。ばかな。王女さまがたは、人間だ。』   


 まりこ先生は、第二段を繰り出しました。 

 


 

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