第70話 『大将の正体』 その3


 『勘違いとな。それはなにか、説明せよ。その間、命は伸ばしてしんぜよう。』


 巨大な怪人が、威圧的に言いました。


 『それは、どうも。では、あなたは、いま、このあたりを中心に、なにが起こっているか、わかっていますか?』


 怪人は、怪訝そうに、答えました。


 『なにが起こっているか、と? わたしは、さきほど、きみに起こされたばかりなり。それが、分かるわけがない。』


 『ならば、確かめてください。あなたに、その力があるのならば。それが、あなたの役割ではないですか?』


 まりこ先生の兄様は、意図的に、怪人を揺すぶりました。


 『そのようなことは、簡単である。わたしは、即座に、すべての世界を見て、聞くことができる。このあたりなど、造作もないこと。む、む…………ややややや。これは、なにか?』


 怪人は、目を見開き、両耳に手を当てました。


 まるで、作者みたいに。


 『このものたちは、なにをしている。聖なる言葉を叫んでおる。しかし、足りない。』


 『足りない、のですね。』


 『むむ。きみ、まず、説明したまえ。』


 『いいでしょう。』


 兄様は、腕組みをして、両足をひろげ、いかにも、ならば聴かせやしょう、というような、やや尊大な態度に出ました。


 大学の先生なので、そういうあたりは、得意なのです。

 

 新山悟は、ひやひやしながら、眺めておりました。



         🧔!💫

 


 

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