第63話 『学園大戦』 その41

 『いいか、やるぞ。』


 まりこ先生の、兄様が言いました。


 『鍵穴発見。差し込みました。準備完了。』


 『よっしゃ、よっしゃ。では、リハーサルどおり、いきますよ。根性入れてやる!』


 『あいよ!』


 『せーの。いち、に、さん。 うんじゃあまいやらあ。』


 『うん、じゃあまいやらあ。』


 『あ、ちょっとずれたなあ。』


 すると、両方の壁に、嘲るような、文字が浮かび上がりました。



 『ことばがずれていて、いまいち、覇気がない    ため、却下します。』



 『なんだよ、それ。』


 新山悟が、ずっこけました。


 『いや、たしかに、ずれたし、いささか、羞恥心が出た。やりなおし。もう、一発できめるぞ。』


 兄様がそういったときです。


 ちょっと離れた場所で、懐中電灯の光がちらつきました。


 『あれ、だれか、いるか?』


 警備のおじさんです。


 『あ、来たか。まずいな。ちょっと待て。』


 兄様が、そちらに歩いて行きました。


 そうして、警備のおじさんに、なにやら、説明しております。


 『これは、重要な実験なんです。邪魔しないでください。失敗したら、ぼくの、学者生命は終わりです。たのんます。』


 しかし、警備のおじさんは、なかなか、引かないようです。


 『しかたない。あそこには、大戦中の細菌兵器があると思われます。これから、防護服に着替えて調査しますが、ここは、危険です。あなたも、ご家族も。ぼくらは、ま、仕事ですからね。しんでも、それまでです。大学は見て見ぬふりします。そういう、約束です。あなた、そこで、見てますか? 』


 警備のおじさんは、いなくなりました。


 『時間がない。あと、一回で決めるぞ。失敗したらほんとに、この世界は終わりかも。』


 新山悟は、根性入れ直しました。



        🪓


 

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