第60話 『学園大戦』 その38
新山悟は、しぶしぶながらも決心して、その不気味な蔵風建物の向こう側に行こうとしました。
すると、まりこ先生の兄様が、待ったをしました。
『まてまて、ちょっとだけ、予行演習しておこう。見えないけど、声は聴こえるだろ。掛け声を掛けるから、それに合わせてやろう。』
『そら、いいけど、兄さま、誰かに聞き咎められたらどうする、特に、あの怪物に。』
『ここは、学園ではなく、大学側で、しかも、夜中には人が来ない場所だ。まあ、たまに、警備のおじさんは来るだろうが、ぼくは顔見知りだから、なんとかするさ。』
『みんな、怪物になってるかも。』
『まあね。そんときはそんとき。案ずるより産むが易し。虎穴に入らずんば虎子を得ず。ケセラセラ。』
『はあ。ケセラセラ、て、なに?』
『なんと、知らない?』
『あい。知らない。』
『まあ、ぼくも、世代は違うがね、むかし、流行ったんだ。ドリス・デイさんの唄で流行った。日本語でも流行った。どうにかなるさ、という意味だとされる。そこで、これが、星印だから、表側のカギ、つまり、こっちだと思う。根拠は、鎖のカギがこっちだったからだ。で、これが、月のマークのカギだ。そこで、ここにあるような紋章と同じものがあるはずだから、それを確認してください。できたら、よし! と、言ってね。そしたら、カギ穴にこいつを入れて。お、入った。こうなるはずなんだ。そこまでできたら、また、よしよし。と、言ってね。問題は、それからだ。大将の話だと、『うんじゃあまいやら』と、同時に言うんだ。根性を入れて。大将は、三回しくじったらゲームオーバー、と言ったよな。』
『あの、そんなの、信じるんですか?』
『まあ、ここまで話が合ってたし、あの大将が言うんだから、ホントだと思うんだ。』
『ふうん・・・あの人、何者、なんですかい?』
『さあね。このミッションが上手く行ったら、聞こうじゃないか。いいかい。で、君がまず、このように、カギを入れ、よしよし、と言ったら、次に、ぼくが、レディ? と言うから、君は、準備が良かったら、オッケー、と言いなさい。それから、ぼくが、ワン、トウ―、スリー、と数えたら、『うんじゃあまいやら。うんじゃあまいやら。うんじゃあまいやら。』だ。よし、練習しよう。』
『え? 練習?』
『当たり前だよ。なにごとも、練習だ。テンポが合わなければ、合奏にも合唱にもならないだろ。』
🔫
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