第59話 『学園大戦』 その37
『むむ、このメールはどういう意味だろう。』
まりこ先生の兄様は、ふと首をかしげました。
『兄様、この気味悪い建物の中のスイッチを切れば、なんにしてもいいんだろう。早くやっちゃおうぜ。』
新山悟は、わりにせっかちなのです。
『まあ、そこはそう言われたものの、確証はないしな。』
『みんな、確証なんかないよ、兄様。このおかしなおかしな、世の中。』
『ふん。そうだね。ときに、きみ、なんで、ぼくを兄様と呼ぶの?』
『いや。そりゃあ、尊敬するまりこ先生のお兄様だからですよ。ふんふ
ん。』
『ふう~~~~~~~ん? 惚れてるのかな。』
『なななな。おれは一介の高校生に過ぎないっす。師弟のあいだがらって、ものです。』
『あいだがら、ねえ。まあ、いいか、とにかく、今は、おやじさんを信じるしか道はない。このメールの意味は、気にはなるよ。だいたい、ぼくの研究分野だ。純粋水爆が本館の地下にある。おそらく、1000万人とかが怪物になったら起爆するとかの仕組みなんだろ。どういう仕組みかなんて、分からないよ。10%が再生する、というのは、なんだろう。本当に死んだ者が生き返ることは、ない。もしそうなら、それはオカルトだ。今は、前に進もう。ほら、ぎーぎー言い終わった。お、がちゃあ、と言ったぞ。』
そうです。がっちゃっと、鳴りました。
そうして、その蔵みたいな建物の、ちょうど腰のあたりが、さらに、ぎ~ご~、と小さな唸りを立てながら回ったのです。
昔の、からくり人形とか、お祭りの山車、とか、なんだかそういう類の趣があります。
それから、その腰のあたりの高さの壁の一部が、なんらかの紋章のように浮かびあがり、輝きあがったのです。
『こりゃあ、びっくし。LEDみたいだなあ。そんなもの、むかしにあった訳がないのになあ。』
新山悟が言いました。
『ううん、意外と、新しいのかもしれないね。それか、後から、改修したかだな。』
『冒険映画とかなんか、古代遺跡なのに、すっごい仕掛けがあったりするすよ。』
『まあ、あれは、フィクションだからな。とはいえ、「アンティキティラの機械」なんていうのもあるし、昔の人を甘く見てはならないことは確かだ。お、鎖が下がって行く。』
その四本のポールに支えられていた、建物をぐるっと囲んでいた、ただカギを開けるためだけに存在したような障害物は、地面の中に、再び消えて行きました。
『そらあ、なんですかい。あんこきてらのききかい? それんしても、こういう仕掛け、って、なんか、すごく、無意味、無駄、みたいに思うんですが。』
『「アンティキティラの機械」は、1901年に考古学者のスタイスさんが、地中海のアンティキティラ島の沖合の「アンティキティラの沈没船」のなかで見つけた、謎の物体だ。最近も、「オーパーツ」とか言われて、オカルトの象徴みたいなものだったが、中身を詳細に調べた結果、おそらく紀元前3から1世紀に、ギリシャで作られた一種の天体観測用とかの計算機と考えられているんだ。宇宙人じゃなくて、人類が作ったものだよ。ぼくらは勘違いしやすいが、たった2000年ちょっと前だ。現代の科学や哲学の骨格が作られたし、当時の先端学者や技術者の頭脳は、けっして、ぼくらに引けを取らない。』
『そうなんれすかあ。で兄様、どううしますか?』
『あそこに、カギ穴があるんだろう。開けようじゃないか。きみ、反対側に行ってくれたまえよ。』
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