第58話 『学園大戦』 その36


 つかの間の休息というものは、まるで、天国のようなものであります。


 昼休みが45分に縮小されたときは、まりこ先生でさえ、愕然としたものです。


 その15分の差こそ、昼御飯を買い出しに行く、散歩時間をも兼ねた、貴重なものだからです。


 学園にいたら、昼休みも、まりこ先生には、生徒からのアプローチがたくさんあるのでしたから。


 つまり、教員からは絶対的不人気のまりこ先生ではありましたが、生徒の面倒見は割に良いので、生徒たちからは、人気があったのです。


 しかし、この休憩時間に関しては、管理職以外の意見は、ほぼ、まとまっていました。


 その後、結局は大多数の教師や職員からの猛反発で、60分に戻されましたが、その分、終業時刻が遅くされました。


 まあ、元々それは、あって無しみたいなものですが。


 それで、いま、まりこ先生は、ふと、気がついたのです。


 『ああ、自分は、なんとばかだったことか。』


 そうなのです。


 まりこ先生の元彼と言っても、ひとりではありません。


 確かに、かの、ひとばかり良い、弱虫の摩耶真も、そのひとりではあります。


 さっき、ひとひねりにしたのは、摩耶真の前の彼氏でありました。


 はるか、彼方に行ったはずなのに、なぜだか、ここにいることを、あまり不思議には思いませんでしたが。


 そこで、それと関係はありませんが、以前、生徒たちに、いろ男の肖像画を描かせたことがありました。

 

 まず、ぬり絵を描かせ、それから、オリジナルを描いてもらったのです。


 まりこ先生は、『創造学習』という、正体不明の教科を受け持っていたからです。


 あの時、まりこ先生が描いた、サンプルぬり絵は、前のほうの元彼をモデルにしていたのです。


 それは、まあ、たまたま、のことである、としておきましたが。


 しかし、あの時、生徒たちが描いたオリジナルの絵を見て、ぴん、ときているべきだったのです。


 なぜならば、それは、どれも、今、目の前にいる怪物たちそのものだったからです。


 そのあと、初代理事長の、とぼけた幽霊みたいなのが、現れました。


 当然に、つながりがあること、と、考えるべきだったのです。


 まりこ先生は、すでに、学園の怪物を退治するべく密かに動いてはいたのですが、具体的な姿は、あまり想定してはいなかったのでした。


 『これを、示していたわけね。』


 と、まりこ先生は、認識したのです。

 

 相手側も、じわじわと、まりこ先生を念頭に、ワケわからない仕込みを、してきていたと言うことなのです。

 

 


 


 


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