第46話 『学園大戦』 その23


 『もちろん、鍵を開けなければならない。まずは、イミテーションではあるが、あの見た目だけの鍵を外さねばならない。しかし、それは簡単だ。ほれ、これが、その鍵づら。』


 大将は、持っていた大きなきんちゃくから、ずらっと、鍵の束を取り出し、その中から、ごく、当たり前の鍵一本だけを外した。多少、古ぼけているようだ。


 『昭和の前半に造られたかぎぞな。これで、外の鍵は外れるたい。しかし、問題は、真の鍵を外すやり方です。それには、ふたりが必要になるずら。』


 大将が、新山悟みた。


 『え? おれも、絡むのか?』


 『んだ。』


 大将が、さらに2本の鍵を束から外した。


 『あの建物の、表と裏には、この、ほれ、本のここに書かれた、この紋章が刻まれた、鍵穴を隠している蓋があります。イミテーションの鍵を外すと、回るようになる。ただし、表と裏は、同期していて、同時に回してやらないと、動きませんずら。ふたは、時計回りに開けます。蓋が空いたら、こちらが表の鍵。🌠のマーク。裏側は、月のマーク🌓。核爆弾の発射キーみたいに、これも、息を合わせて、同時に回すずら。回すときに、呪文を唱える。『うんじゃあまいやら』。と、三回。これも、合わないとだめずら。恥ずかしがってはならない。確信を込めて唱えるずらよ。三回失敗したら、開かなくなるから、用心してください。失敗したら、翌日にやり直しになる。それじゃ、間に合わなくなる。多勢に無勢。まりこ先生は、勝てなくなるずら。』


 『だれが、確認してるの?』


 新山悟が尋ねた。


 『地球生態コンピューター。』


 『な?』


 兄様が当惑した。


 『開発者は、謎とされております。遥かな昔からあったとされる。地球が本体のコンピューターであるらしい。で、無事にかぎが外れたら、何かが起こる。何かが、ふたりを阻止しようと現れるでありましょう。それは、その時でないと分かりませんずら。かなり、オカルト的なものが現れると言われますがや。しかし、そいつは、人間の意識に直に働き掛けるおぞましきイメージずら。非常に危険で、まともに触れると、メンタルに障害を与えるらしいずら。そこで、この、見た目メガネをかけてください。目に働き掛けるのではなく、脳に掛けるメガネずら。最初からかけてると、なにも見えないから、タイミング良くやらねばならないずら。その何者かを撃退さしたら、扉が開いて、スイッチが見えるから、切ってください。すると、市民の怪物化は止まり、次第にもとに戻るはず。ただし、元理事長とかは、すでに、人間には戻れない。彼等は、まりこ先生が、倒すしかありませんずらなもし。』


 『なんだか、いかにも、ファンタジー的マンネリ的なお話しね。』


 『オカルトとは、すなわち、マンネリずら。この真理を見過ごすべからず。竜や、怪物や、魔法使いや、異世界が出ないファンタジーは、ファンタジーにあらず、ずら。政治もまたそうであるずら。』


 大将が言い切った。

 


 


 

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