第44話 『学園大戦』 その21
だから、ラーメンやの大将に、出前を頼んでいたのは、まりこ先生の兄様だったわけなのです。
しかし、ラーメンやの大将は、ここに来るまで、まさに無敵でした。
学園に集まった、怪物と化した街の人達の中も、なにごともなく、すいすいと自転車を走らせました。
むしろ、怪物たちは、あえて、避けてやるという感じでした。
つまり、彼らからみて、大将は、仲間みたいな存在に見えているらしいです。
あるいは、妨げてはならない、なにか、偉い人
のような。
『ならば、おいらが、これから、電話で、まりこ先生が、一騎討ちに出ると伝えましょう。まずは、お召し上がりください。』
『時間がないようですが。』
新山悟が、時計をみながら言いました。
しかし、大将も、無視するように、がらけーを、懐から取り出しました。
『あ、もしもし、理事長? おいらだ。まりこ先生が、一騎討ちに出る。やつに、伝えてくれ。うん。…………オッケーだな、時間は止めてくれるな。よしよし。15分後、本館正面。分かった。』
大将は、がらけーを懐に戻して、言いました。
『そういうわけで、やつは、一騎討ちに合意した。まりこ先生に、世界の運命がかかった。』
『あの、その展開は、さっぱり、分からないよ。あの初代理事長ってのは、何者?』
新山悟が、困惑しながら言った。
『やつは、まあ、生きた亡霊だ。普段は、あの本館にある、地下世界に籠っている。お付きが3人いる。みな、怪物だが。つまり、彼らは、半分不死である。しかし、肉体は弱いから、50年おきに、新しい身体に置き換える。しかしながら、それは、面倒だ。置き換えは手間がかかる。なぜなら、普通の人間は、直ぐには使えないから、まず、怪物にするんだ。あらかじめ、怪物なら話は早い。すぐに使えるし、いろいろ便利だ。ならば、人類全てを、新人類に変えてしまおう。人類は偉大なる不死となる。新しい身体は、作り出せば良い。しかし、全員は無理だ。身体を使う側と、使われる側に二分されるが、まず、その前に、新しい人類に変身したもののうち、4割くらいは、うまく適応せずに、すぐに、死んでしまうだろう。残ったものが、世界を形作るのだ。立場を二分してだが、共に、必要なのだ。と、ま、概略は、てなわけぜよ。しかし、おいらは、今さらながら、疑問に思っているのです。だから、まりこ先生に、肩入れいたしやす。いまは、時間がないから、詳しくは、またにしますが。この、ラーメンが、重要です。まりこ先生。これ食べたら、怪物にはならない。』
『おれたちもれすか?』
『さようですな。免疫ができます。』
『おわ。』
しかし、まりこ先生は、怒った。
『なんという、自分勝手な。まだ、良く分からないけど、それって、まずは、大量殺りくでしょ。』
『そうですぜよ。』
『許せない。断然許せないわ。で、あいつの弱点はどこ? 』
『ない。弱点は、ないですなあ。やつも、まいやらの達人ですからな。しかし、あれは、実態がある怪物ですから、どこかに、弱点もあろうかと。』
『大将さん、助言になってない。まいやらって、だいたい、なに?』
とは、新山悟の意見です。
『まあな。本学園の一騎討ちの伝統は、みなさん、ご存じでしょう。』
『参ったと言うか、あるいは、なにも言えなくなるまで、無制限にやる。しかし、今は、そんなこと、どの部活でもやってないわ。』
『ひとつだけ、残ってるんです。ラーメン武道。表向きは、生徒会。またの名を、まいやら武道。』
『なんと。それは、知らないわ。』
『まあ、秘密裏にやってますからな。おいらが、師範であります。』
『な、な、な。』
3人とも、あ然となりました。
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