第40話 『学園大戦』 その17


 真っ暗な夜。


 今宵は月もありません。

 

 このあたりは、学園地帯で、幼稚園から大学、なにかの研究所まで、わりに狭い範囲に揃っておりました。 


 ラーメン店に限らず、食べ物やさんには、激戦地域なわけです。


 しかも、うるさ型のお客さまも、わりと、あります。


 そんな環境で、このあたりでは、圧倒的な歴史を誇るのが、『ラーメン北欧または、まいやラーメン』で、ありました。


 今の店主は、三代目。


 最初に始めた祖父は、とある帝国大学を卒業して、北欧は、フィンランドあたりに遊学し、やがて、現地で奥さまを見つけて、結婚。


 しばらくは、教師をしていましたそうな。


 まだ、二十歳をちょっと越えたあたり。


 実家が、金持ちだったことから、なんとかなるさ、と、たかをくくっていた、らしい。



 しかし、現地の独立時の内戦で、奥さまを亡くし、帰国。


 帰ってみれば、大地震の影響で、あえなく、実家の会社は倒産。


 流れ流れて、四国で、うどんの修行をはじめたらしいのです。


 そのあと、暫くは、なぜか、北海道にいたらしいのですが、いくつかの店を渡り歩いていたりして、自分の店はもてなかったようです。


 ほんとうに、北海道にいたかどうかも、怪しいと言う常連さんも、あるんだ、とか。


 四国で、なにかが、あったのではないかとも言われるけれど、わかりません。


 第二次世界大戦中は、どこにいたのか、何していたのか、これもさらに、謎らしいです。


 一部には、海外にいた経験もあることから、スパイをしていたのではないか。


 なんて話しも、常連さんには、あるようです。


 戦地には行ってはいないらしいが、くわしいことは、だれも知らないと。


 でも、収入はあり、国から目をつけられたりもしなかったとか。


 しかし、いつの間にか再婚していて、一人息子ができたが、これが、大将の父親。


 祖父は、ちょっとしたチャンスがあり、いまの場所でラーメン店を始めました。


 そう、若いはずがありません。


 しかし、祖父さまは、かなりの長生きでしたような。 


 このあたり、当時は、まだ、学園があるだけの、田舎街だったようです。


 ただし、戦時中に、軍関係の研究施設があったらしいとも言われますが、これがまた、よく、分からないらしいです。


 ただし、学園と、軍に、なにかの秘密の関係があったことは、確からしいです。


 それも、常連さんの話ですが。


 しかし やがて、時代は進み、次第に人も増え、なにしろ、抜群においしかったので、人気になりましたそうな。


 当初は、学園との関係も良好だったらしいです。


 この、チャンスを作ったのが、学園の2代目だったらしい。


 で、父親は、真面目一筋の、要領はあまり良くない人だったようですが、高度成長期にも、支店を出すとかには、まったく興味もなく、奥さんと、息子さんが、食べられるだけの仕事をしてきたとか。


 やがて、今の大将の時代になるのです。


 何を隠そう、学園の出身で、となりの大学の理学部の卒業生でありました。


 ところが、ある事件により、理事長と、決定的な対立関係になったらしいのです。


 あくまで、個人的な問題だと言われますが、火種は、父親の代からあったとかも。


 まりこ先生の兄様は、これこそが、今まさに起こっている事件の、伏線になっているに違いないと見たのでした。


       🍜🍥 🍜🍥 🍜🍥



 その、暗いが、雨などは降らない陰鬱な夜。


 一台の自転車が、学園の裏門をくぐりました。


 

         🍜🍥

 

 

 



 


 


 


 


 

 

 

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