第38話 『学園大戦』 その15
副会長の発言を遮るように、それ、は現れたのです。
滅多に姿を現すことがないのは、大概のカリスマ的な指導者そのものです。
それが、付加価値を産み出す訳なのですが、まったく現れないのも、意味がないです。
たまには、出なければ。
しかし、それ、は、現世的には、すでに、死者でありました。
従って、出たとすれば、幽霊なのでした。
それは、本学園の、創立者にして、初代理事長であります。
彼の信条は、『社会に役立つ知識を身につけ、実際に社会に役立てる。』と、いう、ある意味非常に、ストレートなものであり、学究的というより、実用の学習という、現実的なものでした。そのあたりには、怪しいものは、なにもありません。
学園は、中等学校、高等学校にあたるもので、それは、つまり、十分に意味があるものでした。
しかし、彼は、戦後すぐに、理科系の大学の設立をも計画しておりまして、そのための土地も用意していたのです。
それが、となりの大学です。
しかし、戦争が、結果的に、彼を排除したらしいのでした。
詳しいことは、あまり、皆、知らなかったのですが。
終戦後、すでに、高齢の初代は、なぜか、となりの大学創立メンバーから外され、失意のうちに、亡くなったというのです。
何が、原因だったのでしょうか?
まりこ先生の兄さまは、ずっと、そこらあたりを、暇なときに探っていました。
ときに、大学の敷地内に、許可なく立ち入り禁止の、不思議な建物があります。
『復古館』と呼ばれます。
別名、『幽霊館』です。
見た目は、『蔵』みたいなものです。
鉄筋コンクリート造りなので、それほど古いわけでもないようです。
周囲には、柵が巡らしてあり、鉄の扉には、厳重な施錠がしてあります。
しかし、わかっている限り、誰も、柵の鍵も、建物の鍵も、持っていないうえ、『触るべからず』という、暗黙の約束があります。
電気も水道も、ガスも入っていません。
まりこ先生の兄さまは、なんとか、ここを調べてみたいと思っていて、大学側に働きかけてきました。
しかし、資料らしい、資料もないというのです。
どうも、胡散臭いのです。
しかし、兄さまは、ついに、その端緒を見つけました。
それは、あの、ラーメン屋さんの、おやじさん、だったのでした。
🍜🍥
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