第30話 『学園大戦』 その7


 『まず、余計なこと訊くな。あの本はあるかい?』


 まりこ先生の兄さまは咳き込むように言います。


 『ありますよお、ちゃんと。ほら、ここに。』


 『それだ。おいら、なんかおかしいと思っていた。そいつは、本のようで、本ではない。たぶんね。』


 まりこ先生は、顔の筋肉が、緊張状態から次第に膨らんで行き、ついに、爆発しました。


 『あ〰️〰️〰️、っはっはっは。ひひひひひ。』


 『笑うな。くそ。言ってるほうも、笑いそうなんだから。』


 『だって、ひはひひははははは。これ。本でしょう。』


 『ああ。見た目はね。』


 『見た目が本で、中身は違うと?』


 『ああ、そうだ。それが、正解だ。あれ、あいつ、なに。崩れたたこ焼きの化け物か。』

 

 『摩耶真さんよ、兄さんの同級生の。』


 『なんだ。怪物化したのか。似合ってるな。』


 『かわいそうに。あれでも、一生懸命だったんだから。』


 新山悟が、口を挟みました。


 『このひとが、まりこ先生のあにきかい? 天才とか言われる。』


 『そうだ。まさに、天才だ。いいか、その本、開けてみろ。』


 『はいはい。じゃ、最初のページ。』


 『うん。なんとかいてる?』


 『全人類に於ける画期的進化創造論』


 『著者は?』


 『狩鴨大三郎。この学園の創立者。』


 『では、中間どころの、読めない部分を開いて。』


 『あいよ。ほら。しおりを入れときました。』


 『よし、それは、文書じゃないんだ。』


 『文書じゃないんだ? って。じゃ、なに?』


 『その、見た目、本の、かぎ。全体を開くキー。』


 『はああ〰️〰️〰️。暑さにやられましたか。兄上様。』


 『いいかい。やってみるから。みてろ。』


 『はいはい。』


 まりこ先生のお兄さんは、その分厚い本を持ち上げ、なぞのページの部分を、引きちぎったのであります。



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