第29話 『学園大戦』 その6


 摩耶真が叫びました。


 『なんだか、体が変だ。』



 そりゃそうでしょう。


 今までは、変わりなかった、彼の体が、みるみる大蛇さんと、うさぎさんと、なまずさんを足してかき混ぜたみたいになったのです。


 つちのこさんの、化け体みたい。


 まりこ先生が、尋ねました。


 『ご気分はいかが? なにか、とくに、食べたいとか。』


 摩耶真は、答えました。


 『こじらを、食べたい。ああ、そこに。こじらが。食べたい。』


 と、新山悟を見つめながら言います。


 まりこ先生は、摩耶真の頭を、木刀で、すこん、と殴りました。


 まりこ先生は、タルレジャ拳法師範です。


 摩耶真は、即、卒倒です。


 すると、新山悟が言います。


 『さすが。強いな。ぼくが思うに、化け物化には、二段階あるのでは、一段階は、体が怪物になり、精神にも、ちょっと異常が起こる。第二段階で、怪物化が、完了する。ただ、第一段階が発現するタイミングには、個人差がある。』


 『あなたね。じゃ、あなたは、なに。わたしは、だれ?』


 『や、や、や、や、まりこ先生、だいじょぶ?』


 『まあ、あたまにきてることをのぞけば、変わりないわ。しかし、わざわざ、常温核融合エネルギーを導入して、あの本にあった怪物化防止エネルギーを発生させたのに、だめだったかなあ。』


 『こいつ、どうする。暴れだしたら、いかに、あほの休職教師と言えど、やっかいだぜ。』


 『あなたね、いやしくも、教師に向かって、よく言いますわね。あちらの柱に、くくりつけておきましょう。』


 『やっぱ。やるんだ。』


 『安心、安全のためよ。』


 『聴いたようなセリフだね。』




 『どんどんどん』


 『あり。だれか、ドアを叩いている。』


 『わかっております。だれかしら。』


 『どんどんどんどんどん』


 『かいぶつだぜ。先生。きっと。』


 『変態しなかった人かも。』


 『あけろ、まりこ。おいらだ。あけやがれ。』


 『あらま。おにいさまですね。』


 まりこ先生が、さらにこう、言いました。


 『オスカーシュトラウス!』


 そとから、返事が来ます。


 『ワルツの夢。』


 『ヘイノカスキ!』


 『夜の海辺にて。』


 『あんたたち、なに、いってんの?』


 新山悟の質問は無視して、まりこ先生は、封印していた重力鍵を、がばと、開封したのです。


 ただし、木刀は、構えたまま。


 

        ⚔️


 

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