第24話 『学園大戦』 その1


 戦争とか、紛争が始まるとき、予想外の衝突から開始されてしまう場合があります。


 今回の場合も、当初の計画では、深夜にスイッチが入れられるはずでしたが、学園を支配する化け物側は、まりこ先生の介入を知り、計画自体をまえだおしして、しかも、仲間内にも知らせないまま、始めてしまったのです。


 それは、集合しかけていた、化け物側に意識を支配されている生徒や保護者たちにも、影響しました。


 彼らの体は、まだ、初期化されていませんでした。


 つまり、新しい書き込みが正常にできない状態で、無理矢理に改造パターンに入ったらしいのです。


 通常ならば、人間の姿のまま、一種のロボット化だけするはずが、人間の肉体を、維持できなくなったのです。


 体は、各自独特の変貌をしてゆきました。


 まさに、怪物になったわけです。


 摩耶真先生は、そのタイミングで、学校内に突入しました。


 新山悟は、その後から、はしごを登っていました。


 しかし、元々、もう、ぼろぼろのはしごは、ついにばりばり、と、段が折れてしまい、上がるのにてこずっていたのです。


 一方、まりこ先生は、大学研究所の核融合装置との接続に、意外に、これも、苦労していたのです。


 光ケーブルと接続して、ソフトを起動すれば動きだす筈なのですが、うまく行かないのです。


 『なにかが、邪魔してるなあ。なんだろう。くそ、兄さんに聞くか。』


 まりこ先生は、大学にいるはずの兄に、電話をいれましたが、出てくれません。


 彼は、呑気に、ラーメン屋さんに出ていっていました。


 ちょっと変わったラーメン店で、ご主人は、大のクラシック音楽好きだったのです。


 そこで、いつも、BGMは、ばりばりのクラシック音楽ばかりでした。


 今は、『歌劇カルメン』の、全曲版のDVDが流れていたのです。


 大画面のテレビには、映像が写されていますし、ちょうど、『闘牛士の歌』が始まったところでしたから、呼び出し音が聴こえなかったのです。


 『くそ、あいつ、なにやってるの。』


 まりこ先生は、いったんあきらめて、次に摩耶真に電話しました。


 摩耶真は、まさに、怪物化した生徒に、襲われたところでした。


 電話どころでは、ありません。


 『うぎゃ。なんだ、この、タコと海老が合体したようなやつは。』


 しかし、見れば、まだ残っている制服と、名札が目に入ったのです。


 『こいつ、生徒か。』


 生徒に怪我させるわけには行かないでしょう。


 しかし、明らかに、怪物化した生徒のほうが、かなり、強いのです。


 摩耶真は、ピンチでした。


 生徒は、摩耶真を、抱え込むようにしたうえ、巨大なお口をあんぐりと開けて、摩耶真を丸まま、食べようとしたのです。




    🔪 🥄   ・・・・・


 

 



 

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