第21話 『大戦勃発』 その1


 『ボス、まりこ先生捕獲部隊が帰りません。なぜだか、電波障害があり、電話も通じない。内線もダウンしました。なんだろう、これはあ?』


 『ふん。妨害工作を始めたか。よろしい、では、こちらも、前倒して実施しよう。影化エネルギー充填開始せよ。』


 『きわきわ! 影化エネルギー充填。現在30%、急速充填。』


 『ふん。あわれな現世人類ヨ、間もなく、新しい人類による、新しい世界が始まるのだ。同化するか、奴隷となるか、消滅するか、それは運しだいだ。ふあああははははははははははああああああああひひひ。』


 『理事長て、あんな笑い方するか?』


 部下のひとつの影が、隣の影にささやきました。


 『いやあ。はいじめて見た、聞いた。なんか、おかしいような。』


 『こらあ。そこ、会議中の無駄話は禁止!』


 『へい。きわきわ。すいません。』



    ******************:



 まりこ先生は、換気口に挿入されたパイプから、光ケーブルを引き入れ、例の、ブラック・ボックスに接続する作業を終えました。


 ブラック・ボックスは、パソコンに接続しています。


 しかし、常温核融合装置の本体は、すぐに全面稼働するわけではない。


 少しずつ、稼働率を上げて行く必要があるのだと、兄から言われています。


 急ぐと、暴発する可能性がある。


 もしかしたら、核融合が止まらなくなり、なにが起こるか、実はわからないのだとか。


 『んな、あぶないもの、作るなあ!』


 と、兄を批判してきたものの、ここは、これに掛けるしかないのです。


 とりあえず、まりこ先生は、通信回線、無線の妨害を開始しました。


 

   ******************



 『先生、ぼくらがすべきことは、済んだのかな?』


 校舎の、もう暗い壁に寄り掛かって座ったまま、新山悟が尋ねました。


 『まあ、とりあえずは。あとは、また、合図が来るのを待つだけだよ。』


 『どんな、合図?』


 『さああ?????? 具体的には聞いてないけど、合図があったら、校舎に突入せよ、だと。』


 『どこから?』


 『ほら、そこ。古い階段の踊り場の窓。あれはね、開けたら閉まらず、閉めたら開かずと言う、恐ろしい窓なんだそうだ。そこに、ぼろの梯子があると、言ってたと。』


 『先生、確かに、あるよ、そこ。ほら。校舎の下。』


 校舎の基礎部分にある空間に、梯子の亡骸の様なものが、横たわっていた。


 『大丈夫かなあ。木製ですね。ぼろぼろっと、崩壊しそうな感じですよ。』


 『なせばなる。なさねばならぬ。待とうね・・・・』


 『あい。』


 『君は、良い生徒だ。』


 『先生も、早く復帰しましょう。』


 『うん・・・・考えてみる。無事に帰れたら。』



     ***************** 



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