第19話 『監禁』 その2
だらだらした坂を上りきると、大学の研究所の敷地となります。
小さめな裏口があり、普段は鍵がかけられています。
監視室がありますが、常駐はしていないようです。
『ここも、合理化だな。』
『でも、先生、なんだか、すごく危ないものなんじゃないの。核融合炉なんて、超超秘密だろ。』
『うんだ。常温核融合といわれる分野だとか。正統的な科学領域からは、ちょっと外れたところにあったけど、最近はきちんとした研究もあるとは、聞いたような。でもね、ここの研究所は、農業用科学薬品の研究所で、核融合とは、関係ないように思うよ。だから、まあ、怪しいですが、なにしろ、お話の主題自体が尋常ではないからね。毒をもって毒を制すさね。』
『すごく、分かりやすいようで、さっぱり、分からないな。』
『うん。あ、あのひとかな?。』
裏口に、幽霊のような、ぼんやりした、白衣の人物が立っていたのです。
手には、ちょっとでかい、リール巻きみたいなものを、抱えている。
『あ、君たち、まりこの、使者さんかい。』
『はいな。ヒュヴァ・パイヴァ!』
それが、合言葉、だからと、言われたからです。
『パイヴァ!ようこそ。あ、敷地には、入らないでね。はい。これ、引っ張っていってください。まあ、細いけど、光ケーブルです。たぶん、ちぎれたりはしないと思いますがね。大事に引っ張っていってください。研究室の装置と、まりこが持ってるブラックボックスを、これで、つないでください。そうしないと、エネルギーは発生しない。』
『これで、そんな、大きなエネルギーが出来るんですか?』
『まさに。まあ、首都圏の1日分くらいの、ある種のエネルギーが得られます。しかも、短時間にね。ダークエネルギーに、相当するものですが、まだ、秘密です。農業に、革命を起こします。しかし、人類の危機とか、まりこが騒ぐし、ぼくは、彼女には、弱いんです。じゃ、よろしくね。終わったら、返しに来てね。』
その、まりこ先生の兄といわれる人は、さっさといなくなりました。
『なんだか、ますます、怪しいなあ。』
『まあ、乗りかけた新幹線だ、仕方ないさ。もって行こう。』
『あい。先生。』
・・・・・・・・・・・
まりこ先生が立てこもる、暗闇迫る、女子休憩室には、いまや、あやしの人たちが迫っていました。
『ここしかないすな。カーテンが引かれて、光はもれてこないが、中にいるに違いない。ほら、人間感知器が反応している。一人だけだ。間違いない。』
『踏み込みますかな。こっちは、10人いる。』
『ですな。拘束する必要が、ありますからな。』
『鍵が、掛かってますな。』
『まあ。当然でしょう。こいつで、爆破します。中にいる人は、閃光で、気絶する。はい、閃光保護メガネです。全員いいですか。油断はしないように。準備、よし。やります。離れてください。』
先生方は、休憩室から、本館に向かって角を曲がったところにかたまったのです。
『やります。すりー、つう、わん、じろ!』
ずばばん!
あまり、派手ではない音がしましたが、ものすごい光線が、あたりにいっぱいに、広がりました。
『よし、入る❗』
先生方は、大挙して、休憩室になだれ込みました。
うっすらと、漂う、煙の中に、防護マスクを着けたまりこ先生が、仁王立ちになっていたのです。
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