第10話 『学校の秘密』 その2


 その、不気味なおじいさんは、まりこ先生に追い越されがてら、つぶやいたのです。


 『おそろしいことが、起るべな。』


 『はあ?』


 まりこ先生は、老人を振り返りました。


 しかし、その姿は、すでになかったのです。


 『おわ。不吉なものを見てしまったかなあ。幻影だろうな。おかしな薬を飲まされたし。後遺症かも。』


 あくまでも、現実的な、まりこ先生なのです。


 『帰って、休もう。今日は。』



       ****************



 学校内の、あの怪しい部屋です。


 影たちが、話し合っていました。


 『ついに、この時間を制圧する時が来た。』


 中でも、一番、影が濃いものが、言いました。


 『先生、しかし、あの教師はどうしますか。おっつけ、勘ずくかもしれません。』


 『うむ。今のうちに、やはり、排除すべきだな。先般は失敗したようだが。』


 『あい。意外と、悪運もあるようです。』


 『悪運尽きれば、速やかに消えさるべし。悪運など、長続きはしないものだ。』


 『あい、先生。次の手を打ちます。』


 『うむ、それにしても、あいつがいなくなったのは、気になる。どこに、逃げ込んだか。まだ、わらぬか?』


 『はい。あくまで、影である以上、姿を現せるのは、一瞬のみ。』


 『む。一瞬たりとも、気は抜けぬのだ。とくに、今回のように、突飛な相手にはな。』


 『あい、先生。』


 『まあ、それは、そう気にすることもなかろうて。この時間がすべて手に入れば、もろもろの雑事は、それに絡まって収まる。決行は、あすの深夜、12時とする。よいな。各自、持ち場を死守せよ。』


 『あい! 先生。』




      **************** 

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