第9話 『学校の秘密』

 まり子先生は、極楽大学付属病院に向かいました。


 ここで薬学の教授をしているのは、まり子先生のお兄さんでした。


 ただし、お父さんは違う人ですが。


 ふだん、あまり交流のない人ですが、こういう時は、助けてもらってみようと、思ったわけです。


 もちろん、連絡はしました。


 無理やり、予定を入れてしまったわけです。



・・・・・・・・・・・・・・・・・


 『すぐに、分析なんて、できないよ。警察に言ったらいかが?』


 『まあ、冷たい。妹が毒殺されるかもしれないのに?』


 『あのね、ぼくは、探偵さんじゃない。』 


 『あそ、じゃあ、あの、入学のこと、はなしちゃおうかなあ。』


 兄は、大学に、不正入学していたのは、間違いないところです。


 『あのね、そういう、事実ではないことを、言わないでほしい。わかったよ。やりますよ。』


 『サンキュー。さすが、兄さん。』


 『脅迫しといて、よく、言うよ。ときに、あそこの、学校、やめた方がいいよ。』


 『あらま、どうして?』


 『いや、ここだけの、話だが、最近耳に入ったんだ。あの学校では、戦時中、軍の委託で、秘密の研究をしていたらしい。核爆弾をはるかに越える、『次元爆弾』を開発していたとか。』


 『じげんばくだん? あの、さん、に、いち、どかーん、てやつ?』


 『いや、爆発さした周囲を、異次元に飛ばしてしまう。きれいさっぱり。』


 『あるわけないわ。そんなの。』


 『まあ、そうなんだ。でも、なにか、危ないことを、研究していたことは、確からしい。かなり、いい線行っていた。いや、一応、成功さ、したらしい。中心にいたのは、あの学校の当時の理事長の兄だとか。しかも。』


『しかも?』


『まだ、生きているとか。きみ、知らないの?』


『知りませんわ。そんな、話し。』


『あそ。じゃあ、まあ、忘れてください。』


『聞いたものは、忘れないわ。』



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 最大限、急いでやる、と、お約束して、まりこ先生は、大学を出ました。


『ふうん。あの話し、知らないわけではないけど、あまりに、荒唐無稽な伝説で、学校の関係者は、誰でも知ってる都市伝説だからな。馬鹿馬鹿しいとは、思いますが、調べてみても、いいか。核爆弾が、次元爆弾になってるところが、あまりに、むちゃくちゃで、かえって、気になるな。』


 まりこ先生は、つぶやきました。


 せみさんが、じーじーと、泣き叫び、ふらふら歩く、天然パーマの、へんなおじさんを、追い越しながら。

 


                🎆




   

  


 

  


 


 

 



 


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