第4話 地獄の給食と先生 中編
元々食が細かったものの、外食にも慣れだしてきたころに、この地獄。
会食恐怖症が回復どころか、今思えば悪化しはじめていた。
私はたぶん(個人的な見立て)会食恐怖症の中でも、軽度なほうであった。
が、この地獄は私を「会食恐怖症の牢獄」に連れ戻した。
とにかく、「いただきます」の合唱が、「バルス」よろしく、私の滅びの呪文だった。
「いただきます」と同時に席を立ち、給食を減らしに行く。
この時の瞬発力は、オリンピック選手にも匹敵していたであろう。
吐き気をおさえながら減らしに行くと、先生がそこには立っている。
バレないように半分以上減らそうとしてもだめだった。
「ちゃんと好き嫌いせずに食べなさい」
違うんだよ!とも言えずに、震えながら席につく。
なんというか、スズメの涙ならぬ、スズメの一口で私はちょびちょび食べた。
思い返せば、一緒に食べていたクラスメイトには申し訳がない。
同じ班に、死ぬほど憂鬱そうにご飯を食べているやつがいるのだから。
毒入りで、これを食べたら死にます、と言われたご飯を食べているような顔つきなのだ。
受刑者の気分だった。
給食の時間が終わってからが、地獄の真価を味わえる。
小学校四年生という多感な時期において、他と違う行為を、それも人より「劣っている」行為をするのはひどく傷つくことだった。
もちろん私はとんでもない被害者だし、人より食べられないことも会食恐怖症であることも、「劣っていること」だとは思わない。
だが、この当時はひたすら惨めで、公開処刑をされている気分だった。
街頭に素っ裸にされて、身体中に罵詈雑言をかかれて、逆さまに吊るされるのと同じくらい辛かった。
食器は当番の回収に間に合わないから、自分で水場で洗って、教室の黒板横にある小さな棚の上に置いた。
午後の授業中に見える食器が、ほんとうに恥ずかしかった。
このことは、ますます私の会食恐怖症を悪化させる事態となった。
ついには、朝から腹痛吐き気に襲われるようになった。
昼から始まる地獄に、心身ともに限界を訴えだしたのだった。
会食恐怖症日記 名無し @nanasinogonbei
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