暗殺部隊

 ザイガードはシャドゥーとデスを連れて、ダゴヤの外れにあるクラブを訪れた。賞金稼ぎがよく集まるこのクラブに古くからの知人がいた。ザイガードはその男を暗殺部隊に引き入れようと考えたのだ。クラブの受付に顔を出すと、すぐにオーナーが出てきてVIPルームに案内された。




「ザイガード様、お久しぶりです。今日はいかがされましたか?」


「ゲルラ・メロクに会いたい」




 禿げた頭の中年オーナーはその名を聞いて寂しそうな顔をした。




「申し訳ございません。ゲルラはもう何か月も行方不明でして。代わりの者なら手配できます」


「行方不明だと? 残念だ。奴には地獄樹海創設時に随分と世話になったが」




 ザイガードはゲルラが死んでいるだろうと確信した。殺人衝動のある男が何日も姿を隠せるわけがない。




「で、代わりの者とは?」


「影の王とアルトという賞金稼ぎです。ご存知ないですか?」


「いや」


「まあまだ名前は売れてないかもしれませんが、腕は一流ですよ」


「会わせろ」




 ザイガードは語気を強めて言った。ゲルラ以下の雑魚ならオーナーもろとも殺してやる。


 しばらくすると二人のロボットが入ってきた。一人は頭から触手を生やした人間型のロボット。そしてもう一人は宙に浮いた一つ目のロボットだった。




「俺はアルト。こいつは影の王」




 触手のロボットが言った。




「どんな野郎が来るかと思ったらヒョロヒョロじゃねーか」




後ろにいたデスが笑いながら二人を馬鹿にした。確かにシャドゥーやデスと比べると二人は少々小柄だ。




「黙ってろ、デス」




ザイガードがデスを咎めた瞬間、影の王の姿が一瞬で消え去った。




「また殺しすぎちまう……」




そう声がした。影の王はデスの背後に音もなく立っていた。と同時にデス、シャドゥー、アルトが刀の鞘に手を付けた。誰かが動けば皆一斉に剣を抜く。まさに一触即発だ。




「ほう。少しはやるらしいな」




 そんな事態にもザイガードは冷静だった。




「俺たちに何の用だ?」




 前に立つアルトが言った。




「邪気の王様からの勅命で、ある男の暗殺を頼みたい。報酬は多く出す」


「誰だそいつは?」




 影の王は身動き一つできないデスの背後で言った。




「機械皇帝、カルナだ」




ザイガードの回答に影の王は続けた。




「断る。弱い奴をこっそり殺すのは好きじゃない」


「俺たちは強い奴と戦いたい。それだけだ」




とアルトが付け加えた。




「強い奴と戦いたいのか。その機会はあるぞ。しばらくは皇帝の信頼を得るため皇帝軍で戦ってもらう。共存軍の奴らとも戦える」


「南方戦線にも行けるか?」


「ああ」




影の王は声もなく笑った。




「それなら引き受けてやる」




そしてデスの背後から消え去り、アルトの横に戻ってきた。




(こいつ足がないせいか気配すら感じねえ。危うく殺されるところだった)




デスは鞘から手を離すと心でそう呟いた。額のお札に汗が滲む。




「南方戦線で殺し損ねた女がいてな。また戦場に戻れるなら大歓迎だ」


「では決まりだな」




ザイガードは静かにそういうと立ち上がって4人を回し見た。忠実な神官シャドゥー。残忍な修行僧のデス。そして影の王とアルト。素晴らしいメンバーが出揃った。これなら邪気の王様もお喜びになるだろう。さて地獄樹海へ戻るとしよう――。


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