月の戦い
「全艦、無事に月の軌道に乗りました」
ススの報告にアロスは胸をなでおろした。
「目標まで全速前進だ」
レッドの目の前には広大な宇宙が広がった。目標である月の裏側を目指して艦隊は暗闇を進んでいく。その速度はレッドが今まで乗ったどの乗り物よりも速かった。まるで流れ星のようだ。
特別な改造を施された宇宙艦たちは瞬く間に月の裏側へと回り込み、皇帝軍の戦艦の背後につけた。
「敵艦隊、確認しました。大型艦1機、中型艦2機、小型艦7艦機です」
「全艦、戦闘配置につけ。シールドを貼るのを忘れるな。一気に叩くぞ」
アロスの指示で艦はハッチを開き、巨大な主砲を構えた。レッドは副砲のトリガーを握りしめる。彼らの役割は戦艦から放たれる宇宙戦闘機を撃ち落とすことである。
「コザラのやつに一泡吹かせてやる。各艦、準備ができ次第、主砲を放て!」
☆☆☆
「後方に敵艦隊! ものすごい数です!」
皇帝軍の司令艦デッキではオペレータのロボットたちが慌てていた。仮眠から飛び起きたコザラ提督が顔も洗わずに艦長席に座る。
「みんな落ち着け! 総員、直ちに戦闘配置につくのだ」
「コザラ提督、敵艦が主砲を準備しています」
「おのれ共存軍め。全艦、至急全エネルギーを後方に注力するのだ。砲撃に備えよ」
☆☆☆
「主砲発射!」
アロスの合図とともに、各艦の中央に装備された巨大な主砲からレーザーが放たれた。多くのレーザーがシールドに難く阻まれ、皇帝軍の宇宙艦に致命傷を与えることはできなかったが、2艦ほどシールドの準備が遅れ、艦を貫いて破壊させた。
「小型艦1機と中型艦1機を撃破しました」
ススの報告にデッキは歓声に沸いた。しかしアロスは冷静に
「よくやった。だが油断するな。戦闘機が出てくるぞ」
と額に汗を浮かべた。
☆☆☆
「前方に敵戦闘機確認。さあみんな、仕事だよ」
放送で聞こえてくるラークスの声にレッドはトリガーを握りしめる。
「よし、こい!」
レッドがトリガーを引くと副砲からレーダーが放たれていく。主砲よりは威力が弱いが艦の周りを飛び回る厄介な戦闘機には十分有効だ。レッドはしっかりと狙いを定めると戦闘機目掛けてレーダーを連射した。
「やった!」
レーダーの直撃を受けた戦闘機は粉々に破壊され、宇宙の塵となる。
コザラ提督は主砲を共存軍の艦隊側へ向けるため、艦隊を反転させるように指示を送った。しかしその考えはアロスにはお見通しだった。戦艦が反転するために横を向くとき、横側のシールドは薄くなる。そこの集中砲火を浴びせることができれば相手を沈めることができる。そしてアロスの読み通り艦隊は反転を始めた。アロスは溌剌と指示を送る。
「右後方にいる中型艦に集中砲火をあびせろ」
「了解しました!」
共存軍の艦隊は主砲を中型艦へ向けた。シールド薄くなっていた側面を狙われた中型艦は呆気なく爆発し大破した。
中型艦2機を仕留めたことで戦局は圧倒的に共存軍に有利になった。残るは小型機6機とコザラ提督の乗る大型の隊長艦のみだ。アロスの的確な指示でここまで1機も共存軍は沈んでいない。イメクをはじめとした新兵たちは彼の凄さを身をもって体感した。
コザラ提督は苛立ちはじめた。急襲をくらったとはいえ、ここまで追い詰められれば流石に勝機はない。しかしどんな時も冷静で、今までいくつも修羅場をくぐってきたコザラ提督には次の考えが見えていた。
「おのれアロス司令官、やってくれたな。だがお前は本当の戦争を知らない。私がお前にそれを教えてやる……」
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