ライバルたち
――共存軍司令部1F・食堂――
一日の訓練が終わった。レッドはイメクや他の新兵たちと食堂で夕食を食べていた。男子新兵5人でテーブルを囲む。
「いやあメカド大尉は厳しいなあ。綱登りできないだけで腕立て伏せ50回だし」
新兵一のお調子者であるギイトが腕を抑えながら言う。
「仕方ないよ、戦争になったらちょっと体力がないだけでも命とりだし」
イメクがメカドをフォローするように言った。
「まあわかってるんだけどさ。俺みたいな都会っ子にはやっぱ兵士は難しかったかなあ」
「ギイトと僕はダゴヤ生まれなんだよね。他のみんなは?」
イメクはテーブルの新兵と打ち解けようと質問をふる。
「俺っちとアークはナカラ生まれのナカラ育ちさ、なあ?」
「う、うん」
ナカラという田舎町から来たフダカとアークは羨ましそうに言う。フダカは坊主頭でどこか抜けているように見える。アークは小柄で声も小さく、今日もメカドに叱られていた。レッドは視線が自分に向けられていることに気づく。
「あっ、俺か。俺はオズカシ村だ」
「オズカシ?! オズカシってあのジルド山の麓か?」
ギイトが驚いて声を上げた。
「ああ」
「俺っちも知ってる! すげえところから来てるんだなあ。そりゃ強いわけだ」
フダカは納得したようだ。それぞれが回答を終えると、イメクが呟いた。
「部隊のメンバー。どうなるんだろう」
「確か6人だよな」
とレッド。
「とりあえずこの5人は確定しているとして、あと一人は女の子がいいなあ」
そう言うフダカにアークがツッコミをいれる。
「人数的に女子になると思うよ、フダカ」
「あっ、そうか」
「女の子なら俺はバードちゃんがいいな、かわいいし」
ギイトは遥か先のテーブルで食事しているバードを見て言った。長い黒髪にリボンが似合う少女だ。
「ああ見えてもバードちゃん、すごいパイロットなんだってね。航空学校を首席で卒業してるらしいよ」
「へえーすげえんだ」
「確かにすごくてかわいいけど、僕はホージロちゃん派だな。背が低いのに大人っぽいところとか最高だよ。今日休んじゃってたけど」
イメクは爽やかな顔して変態なんだなとレッドは思った。
「あいつは……」
レッドが言いかけたとき、食堂の入り口にホージロが入ってきた。
「あっ、噂をすれば現れたね」
レッドは急いで夕食を片付けると、食事をお盆に盛っているホージロのもとに駆け寄っていった。
「あの二人、すごく仲良いけど付き合ってるのかな」
残念そうな顔のイメクにギイトが言った。
「どうやらそうみたいだぜ。あきらめろイメク、お前には俺たちがいる」
☆☆☆
走ってくるレッドにホージロは苦い顔をした。
「ここ食堂よ」
「ああ、ごめん」
「なに?」
「今日、訓練来なかっただろ」
「受けてたわ。シラスナ大佐の特別メニューをね」
ホージロは得意気に言った。
「特別メニュー?」
「うん。大佐が私を認めてくれたの。訓練が終われば南方戦線へ連れてってくれるって約束もしてくれた」
レッドはホージロの実力をまだ知らない。だが彼女の強さには一目を置いていた。
「良かったじゃないか。おめでとう。僕はてっきりサボったのかと」
「そんなわけないわよ。仮に大佐から声がかからなくても普通の訓練には行ったわ。そっちはどうだった?」
「基礎訓練って感じ。まあ運動にはなったよ」
「お互い頑張りましょ。早くレッドと一緒に戦いたいし」
「ああ。負けないぜ」
レッドとホージロは心からお互いの健闘を祈った。魔法使いの国からずっと一緒だった二人だからこそ、時に厳しく接し合えるのかもしれない。こうしてそれぞれの軍隊生活は幕を開けた。
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