Ⅳ
久しぶりに彼女と会う。
「最近あまり会ってくれないのね」
彼女はぼんやりとした目で僕を見る。
「あたしやっぱり騙されてるらしいの」
「そうなんだ」
「結婚詐欺知って、相手に借金させてもお金を取るんだって」
「借金したの」
「してないよ」
「借金は家訓があるからって言ったの」
「それより、お金あるなら貸してって」
「笑顔で」
「笑顔で」
「そしたら、連絡取れなくなって」
「あたし、あなたがあんまり好きじゃないって言ったからかな」
「あたしが好きなのは、あなただから」
唐突に言われる。
「お前が騙されてるんじゃないか」
「それより、彼女仕返しとかされないかな」
「憂さ晴らしに」
「相手がバカならするかもね」
達樹が意味ありげに笑う。
「お金に困ってるの」
「あなたは」
「そんなに困ってるわけじゃないけれど」
「あたしって、家訓で借金できないじゃない」
「借金したいの」
「もし、あたしが借金して人が助かるなら」
「騙されてたんじゃなかったの」
「別に、好きでもないんでしょ」
「そうだよ。好きじゃない」
「なら、いいじゃん」
「でも、仕返しされるかもって。友だちが」
「そいつはバカなの」
「バカじゃないよ」
「それなら大丈夫。友だちがそう言ってた」
「そうなんだ」
「信じるの」
「信じる。信じたい」
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