「間違いないな」

達樹は自信ありげに僕に言う。

「そいつは、女装趣味の奴だよ」

「いまどき、男だって街には立たないさ」

「そうなのか」

「でも、キレイだったよ」

「女装趣味の奴が、キレイじゃないっていうのは偏見だよ」

「もちろん、そういう気分に浸りたいんだよ」

「だからそれっぽく立っている」

「まあ、それはいいんだが」

「会えないもんだな、本命には」

「でもさ…」

達樹が僕の言葉を遮る。

「それは違うぞ」

「それは普通の恋愛だ」

「えっ」

「勘違いして、チャンスを逃がすなよ」

「チャンス」

「チャンスじゃないか。また会うんだろう」

「そうだけど、どうするんだよ。スウィート・デヴィルは」

「そんなものはいないよ」

「それでいいじゃないか。そう思え」

すっかり満足そうな顔をしている、達樹。

「それでいいのか」

「騙されてボロボロになるよりいいだろう」

「俺のように」

「まるで他人事だな」

「他人事だよ」

「背が小さいって言ったよな」

「僕の前を横切ったんだよ、小さい女が」

「もうやめとけ」

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