スウィート・デヴィル
阿紋
Ⅰ
街を歩いていた。
「そのうち会えるよ」
達樹が意味ありげに僕にそう言って、
ニヤリと笑う。
「誰なんだ、そいつは」
「会えばわかるさ」
何やら物欲しげに街頭に立つ。
娼婦のように。
今どきこの街にも、そんな奴らはいなくなった。
いたとすれば、そいつは男。
間違いなく男。
僕はそんな男の隣を通り過ぎる。
「でかいんだよ」
独り言のように僕がつぶやく。
次の瞬間、小柄な女が僕の前を横切った。
僕の存在なとまるで気づいていない。
ずっと正面だけを見ていた。
それからしばらくして、
僕はレストランにいた。
何か食べようと思って入ったのだけれど、
まともな食事のメニューが一つもない。
つまるところ、酒のつまみしかないのだ。
仕方なく、一番小さいグラスの黒ビールを注文し、
フランクフルトとゆでたジャガイモを食べている。
これなら、ファミレスに行けばよかった。
居酒屋だって、もう少しまともな食い物がある。
「米が食いたいな」
「あたしも」
僕は自分の向かいの女の子を見る。
いつからいた。
「気が合うわね」
女の子がにっこり笑う。
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