The Painscreek Killings

 "SCENE INVESTIGATORS"を開発したEQ Studiosの過去作、"The Painscreek Killings"をプレイ。


 本作では、プレイヤーはジャーナリストとして、無人の廃墟と化した町を探索し、未解決の殺人事件を調査する。


 日本語訳に対応。訳にはほぼ不具合はない。


 コントローラーでも操作できるが、操作性は劣悪なので、キーマウでプレイするのを勧める。

 デフォルトのキー割当てだと激烈にプレイしにくいので、使いやすいようにコンフィグ推奨。よく使うキーが左手で押せない割当てになっているので、左手だけ押しやすいように割り当てるとやりやすくなるだろう。


 あと、スプリントは切り替え式がいい。本作で歩く意味は全くなく、常にスプリントすることになるので。ホールド式にすると、プレイ中ずっとボタン押しっぱになって疲れる。



 行動範囲は結構広く、最初はどこから手を付けていいかわからなくなること請け合い。

 その上本作では誘導は一切ないので、何をするにも自分で行動する必要がある。ゲーム側から「教会へ行け」などといった指示は出ない。


 見つけた重要資料は後からでも閲覧可能だが、パスワードなどのヒントに関しては記録されないものが多いため、プレイヤーが自分で紙か何かにメモするか、ゲーム中にあるカメラ撮影機能を使って、写真撮影しておく必要がある。



 このゲームは推理ゲームなのだが、"SCENE INVESTIGATORS"と違って、殺人事件の真相に関しては、特に頭を使う必要はない。ひたすら証拠を集めていけば、自ずと犯人、殺害方法、動機はわかるようになっている。

 じゃあどこで頭を使うのかというと、「どこに鍵やパスワードのヒントがあるのか」と「見つけた鍵、パスワードはどこで使うのか」。


 このゲームでは、たいがいのドアや引き出しには鍵がかかっている。鍵を見つけないと開けられないわけだが、それを探すのがこのゲームにおける「推理」のメインとなる。

 ただ、手当たり次第クリックしまくって探すような総当たりではなく、残されたメモなどの情報を手がかりに探すことになる。

 たとえば、「教会の鍵は植木鉢の中に返しておくように」などというメモを見つければ、おそらく教会の付近にある鉢植えの中に鍵が隠されていて、それは教会の入り口を開けるものなんだろうなと推測できる、という感じ。脱出ゲームをやっている感覚に近い。



 殺人事件の推理に関しては、住民がやたらとご丁寧に日記帳を残していて、それを読むことで状況がわかるようになっている。

 それも、曖昧な記述からプレイヤーが推理する、という形ではなく、「何年何月何日、私はアイツを殺っちゃいました」などとあからさまに書いているので、推理する必要もない。

 なぜこの町の住人は、読まれたら警察に捕まるようなことを日記に書き、それを引っ越しの際に置いていったのだろう。



 このゲームの最大の障害は、謎解きや物探しではない。すんごく嫌なホラー感が漂っていること。

 実際にホラー展開になる箇所はほとんどないのだが、その「ほとんどない」というのが曲者。


 どこに行っても必ずポルターガイスト現象が起きたり、ゾンビが襲ってきたりするなら、プレイヤーはそれを予測できる。「どうせここでもしょうもないホラー展開があるんだろ」と身構えながらプレイできるから、かえってそんなに怖くない。


 逆に、ほとんどホラー展開がないゲームは、どこでどう警戒すればいいかわからないから、常に気を張り詰めていなければならない。で、いくらそうやって警戒していても虚を突かれる。


『バイオハザード』シリーズで初代が一番怖いと言われるゆえんはそれ。初代『バイオハザード』は、敵のいない部屋も多いし、頻繁に奇襲攻撃を受けるわけではない。だからこそ、ゾンビ犬の奇襲を一回受けただけで、プレイヤーの心は折れるのである。


 このゲームには、そのゾンビ犬級のトラウマイベントがいくつかある。そのせいで、本作の95%くらい何も起こらないのに、ずっと、いつ来るとも知れないホラー展開に気を張り詰め続けなければならないのである。

 ホラー好きならたまらんかもしれないが、私はこのゲームがホラーだと思ってプレイしたわけじなかったから、非常に迷惑だった。木が風に揺れる音がするだけでビビリながらプレイする羽目に。


 ホラーが嫌いだけどこのゲームをプレイしたいという人のために、後でこのゲームのホラー展開のタイミングについて補足しておく。

 そこでだけ身構えていればOKなので、だいぶ楽にプレイできるようになるはずである。



 なお、ゲームを終了させる(真相が判明するか、現場を離れるとゲーム終了となる)と、犯人が誰か、凶器は何かと、新聞に載せる写真を選ぶ画面が出てくるのだが、おそらく日本語訳特有の不具合で、写真を選ぶ画面で決定ボタンが表示されない。

 画面右下に透明なボタンがあるので、この辺かなーというところをクリックしてみよう。……最後の最後で変な推理要素を入れるのはやめていただきたい。



 総評は、殺人事件の推理ゲームとしてはイマイチ。証拠が揃えるだけで解決しちゃうので、事件で頭を使うところはない。推理ゲームとしては"SCENE INVESTIGATORS"の方がずっと本格的。

 ただ、鍵探しやパスワード探し、鍵やパスワードを使うところ探しについては頭を使うし、結構手書きでメモを取っていかないといけないので、ただのオリエンテーリングゲームというわけでもない。


 いらんホラー要素があるのは私は非常に気に入らないが、初代『バイオハザード』が好きな人には合うかもしれない。


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■攻略のヒント



 アメリカでは、日付は「月/日/年」の順に書くのが一般的。


 ダーツのパスワードは、ダーツボードが撮影された写真を元に解くのが正解。実際のダーツボードをいくら見ても絶対に解けない。

 6番に穴が開いているように見えるが、これはヒントでもなんでもない。


■攻略のヒント 終わり

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■ホラーが苦手な人向けの身構えポイント解説


 ホラーが苦手な人が警戒すべきポイントは3箇所だけ。他は気を抜いていてもOK。



 1.病院のトレーニングルームで「ヘンリー・ジョンソン医師」のキーカードをゲットすると、突然病院のブレーカーが落ちる。

 めっちゃでかい音がしてビビらせてくるので、このときだけ音量を下げるとかしておこう。

 その後は突然でかい音がしたり、電気が消えたりするクソイベはないので、それ以上はビビらなくていい。


 しかし、なんでこんなタイミングでブレーカーが落ちるのかね。おかげで、せっかく拾ったキーカードが使えなくなってしまう。



 2.ブラックパイン通り7番の焼けた家から出た後、川の向かいの森の中に人影が立っている。何もしてこないので、見かけても気にしないように。

 私は気付かなかったが、もしかすると、他にもこの人影が見えるイベントがあるかもしれない。しかし、この人影は危害は加えてこないから、見えてもビビらなくていい。



 3.犯人の自白記録を見つけると、犯人がやってきて追っかけられる。なんで推理ゲームで突然キラーとチェイスせにゃならんのかと思う。やめて欲しい。

 残念ながら、板を当てたり扉を閉めたりして時間稼ぎはできないが、キラーの移動速度は速くないので、袋小路に追い詰められたりしない限りは追いつかれたりしない。スプラッター映画のキラーのように理不尽ワープもしてこない。


 すでにこの町を隅々まで探索して、この事件について詳しく知っているなら、どう逃げればいいかはわかるはず。

 あと、黒髪女の幽霊が誘導してくれるので、それを参考に逃げるべし。黒髪女の正体がわかっているなら、どこに誘導したがっているかはだいたいわかるだろう。


 わかんない人向けに答えを言ってしまうと、目指すのは病院の屋上である。


■ホラーが苦手な人向けの身構えポイント解説 終わり

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■ネタバレあり感想


 事件の詳細については後に書く。


 プレイして思ったのは、パスワードに誕生日を使ったらダメだ、ということ。

 パスワードがわからないとき、「とりあえず関係者の誕生日入れたろ」と思って試したら合っちゃった、ということが結構あった。


 あと、秘密の隠し場所に公園の切り株とか選んだらダメということ。

 本来、切り株の中の隠し箱は、かなり後半に、複雑な手順を経ないと見つけられない仕掛けになっているが、私は最序盤に見つけ、しかもパスワードも速攻で見つけて開けてしまった。

 そのせいで、私は結構最初から彼を容疑者の一人として疑っていた。



 このゲームで一番手こずったのは、ダーツのパスワード。まさか写真を見つけないと解けないとは思わなかった。あのあからさまに思わせぶりな6のシングルに空いた穴は一体何だったんだ。


 私は下手にダーツを知っていたから、501点から116点引いて385点なのかな、とか、実は301点スタートなのかとか、どこかにスコア表がないかな、とか、だいぶ余計なことをした。



 病院で脅かされた時は、本当にこのゲームをやめたろうかと思った。推理ゲームにホラー要素はいらない。落ち着いて捜査できなくなる。

 ホラーとミステリーは相性が良さそうで良くない。推理には論理と理性が必要になるが、恐怖はそれを妨げる。ゾンビや幽霊や殺人鬼がいつ襲ってくるかわからないようなところで、床を舐めるようにして証拠を探し、推理するなんてことはできないのである。


 たぶんあれはだいぶ不評だったのだろうと思う。それで"SCENE INVESTIGATORS"にはホラー要素が全く無かったのだろう。もっとも、あのゲームはあのゲームで、ドロドロとした人間関係がホラーではあったが。



■事件について


 本事件のあらましについては、証拠を集めれば丸わかりだが、一応整理しておく。



●主要な登場人物

 チャールズ・ロバーツ:市長。関係者が全員あらかた殺し合っていなくなった頃にようやく真相を知る間抜け。


 ビビアン・ロバーツ:市長の妻。チャールズの不倫相手のソフィアを殺害。クソうるさい姑のマデリーンを毒殺。ソフィアに片思いしていたマシューに殺される。


 マデリーン・ロバーツ:チャールズの母親。世継ぎの男子を早く産めとせっつくクソ姑。不倫相手とデキちゃった息子を世継ぎにするとか言い出したせいでビビアンに毒殺される。


 トリシャ・ロバーツ:市長の娘。スコットと恋仲だが母親に反対されておこ。スコットの死で精神を病んで飛び降り自殺する。


 スコット・ブルックス:屋敷の使用人。チャールズとソフィアの子供。マシューの養子。ビビアン殺しの犯人と疑われてバーナードに刺殺される。


 バーナード・ホプキンズ:執事。スコットをビビアン殺しの犯人と勘違いして殺し、そのナイフを家の床に隠す間抜け。


 アンドリュー・リード:庭師。ビビアンの腹心。ソフィア殺しに加担し、ソフィアの幻影にうなされるようになる。アル中。マシューに刺殺されて焼死と偽装される。


 ソフィア・ミラー:かつての屋敷のメイド。チャールズの不倫相手。ビビアンに殺されて失踪と偽装される。


 ヘンリー・ジョンソン:医師。ソフィアとマデリーンの殺害に加担。横領とかもやっているクソ医師。マシューに殺されて湖に沈められる。


 カルヴァン神父:かつての町の神父。ソフィアの子供を身分を隠して孤児院に入れる。


 マシュー・ブルックス:カルヴァンから引き継いで町の神父に。スコットの義理の父。ソフィアに片思いしていた。

 ソフィアを殺したビビアン、アンドリュー、ヘンリーを殺し、事件を嗅ぎ回っていた探偵も殺し、さらにプレイヤーにまで襲いかかってくるサイコ神父。



●あらまし


 市長のチャールズ・ロバーツはマザコン野郎だったようで、母親のマデリーン・ロバーツに「さっさと妻に世継ぎの男子を産ませろ」とせっつかれていた。

 しかし、妻のビビアン・ロバーツは、娘のトリシャを産んだ際に子供が産めなくなる。


 そんな折にチャールズは、新しく屋敷で働くことになったメイドのソフィア・ミラーと不倫して、妊娠させる。かわいいメイドさんとイチャつきたい気持ちはわかるが、妻が不妊で精神を病んでいる時にソレは人としてどうなのかね。


 デキちゃった子供が男子だったので、マデリーンは「こいつを世継ぎにしちゃおうぜ」とか言い出し、チャールズも同意。あかんやろ。


 当然、ビビアンは黙っておらず、医師のヘンリー、腹心の庭師アンドリューと共に、ソフィアを屋敷の裏の井戸に呼び出してヤキを入れてぶっ殺す。

 不倫の子を世継ぎにしようぜという話がメチャクチャなのはわかるが、体育館裏に呼び出してリンチ殺害するって、どこの不良中学生だよ。ヤキを入れるだけで殺す気はなかったらしいが、どうだかね。だいたいイジメで殺すやつって、殺す気はなかったって言うしね。


 殺す気はなかった割には用意周到に、ビビアンはソフィアの息子をカルヴァン神父に預け、孤児ということにして孤児院に入れることにした。

 そして、表向きには、ソフィア親子は失踪した、ということにした。


 さらにビビアンは、ムカつく姑のマデリーンを毒殺。ヘンリーにマデリーンの持病の薬を濃度を3倍にして処方してもらい、それをビビアンはマデリーンに飲ませた。これは「殺す気はなかった」とは言えんわな。



 一方、身元不明の孤児になったソフィアの息子だが、いろいろあって、カルヴァン神父の後を継ぐ形で町の神父になったマシューの養子、スコットとして、町に戻ってくる。

 スコットは自分の出自を知らなかったが、呪われているかのように、使用人として屋敷で働くことになり、チャールズからは気に入られ(チャールズはこの時点ではスコットが自分の息子だと気づいていない)、トリシャと恋に落ちる。

 その状況が気に入らないのは、スコットの正体を知っているビビアン。ビビアンはなんとか2人の仲を裂こうとするが、そうすればするほど、二人は燃え上がるのであった。


 しかし、屋敷で働くうちに、スコットは自分の出自に気づく。そして調査の果てに、自分の母親を殺したのがビビアンだと知ることになる。



 そんな折に、ビビアンが屋敷のゲート付近で殺害される。母親殺しの調査をするために、いろいろ怪しい行動をしていたスコットは容疑者として警察に逮捕される。


 そのうちスコットは釈放されるが、スコットが犯人だと思い込んでいた執事のバーナードに刺殺される。当時バーナードは精神病を患っていたが、お薬を飲んでいなかったようである。どこかの警察署の刑事みたいな話だね。……このメーカーのシナリオライター、精神病が好きね。


 ビビアンやスコットが立て続けに死んだことで、トリシャは精神を病んで病院の屋上から飛び降り自殺。


 あと、話は前後するが、この間にヘンリー医師は湖底に沈んだ車の中で発見され、庭師のアンドリューは家で焼死している。ソフィア殺しに加担した人々はみんな死んだ。



 で、ひと通りみんな死んだ頃になって、ようやくチャールズは事の真相を知り、失意の内に町を去ったようである。

 そして町は衰退し、斧を持った殺人鬼と幽霊だけが生息する無人の町と化したのであった。



 ビビアン、アンドリュー、ヘンリーを殺したのはマシュー。動機はもちろんソフィアの仇討ち。

 マシューはソフィアに片思いしており、婚約指輪まで用意してプロポーズしていた。ただ、プロポーズした時にはチャールズとデキちゃっていたわけだが。


 仇討ちしたところまではまあ、同情しないでもないが、その事件を嗅ぎ回っていた探偵まで殺し、さらにはプレイヤーにまで斧を振りかざして襲いかかってくるんだから、とんだクソ神父である。地獄に落ちるといいね。病院の屋上からは落ちたが。



 この事件が未解決なのは、事件の解決が困難だからではなく、田舎の有力者絡みの事件だから、もみ消されたというのが実情なのだろうと思う。警察がその気になれば容易に解決可能な事件だったように思える。




 このゲームのストーリーが複雑なのは、殺人が6件も絡んでいるから。誰が誰を殺したのかがごっちゃにならないように整理しなければならない。そこをミスると、スコットや、執事のバーナードが犯人とミスリードしてしまう。


 しかし、マシューが犯人というのがわかるのは、隠し部屋に後生大事にビビアンの血がたっぷり付いた斧や自白テープを保管してあったからに他ならない。

 それ以外だと、動機があり、アリバイにウソがあることまではわかるが、だからといって犯人と断定する証拠はない。消去法で最も怪しいのはマシュー、くらいまでしか言えない。


 バーナードは怪しいが、ビビアン殺しの犯人だと思い込んでスコットを殺しているから、その点が矛盾する。自分でビビアンを殺したなら、スコットを犯人と勘違いするはずがない。彼は彼で法の裁きを受けるべきだが、それはビビアン殺しの犯人としてではない。


 バーナードの消息は不明だが、たぶんクソイカレ神父が殺ったのだろう。

 もし"SCENE INVESTIGATORS"みたいに、「クソ神父が殺したのは何人?」と質問されたら、私は「5人」と答える。ソフィア殺しの関係者3人とバーナード、探偵。もしプレイヤーが殺されたらさらにキルスコアが伸びることになる。

 歴史上、キリスト教徒がこれまで神の名の下に何人殺したかを思えば、神に仕える者にふさわしい野蛮さと言える。

 しかし、犯行を隠すのは良くないね。天誅を下すなら堂々とやるべきだろう。

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