SCENE INVESTIGATORS

 結局、"SCENE INVESTIGATORS"を定価で買った。



 プレイヤーは調査官になるための試験を受けている、という設定で、VR上に作られた事件現場から証拠を集め、設問に答えていく。


 実際の犯罪捜査だと、重要なのは犯人を挙げることだが、本作ではそれは必ずしも重要ではない。

 そもそもプレイヤーは遺体の身元はおろか、性別や死因、損壊の有無など、基本的なことすら全く教えてもらえないまま捜査することになる(遺体はすでに撤去され、倒れていた場所を示すテープが貼ってあるだけなので、自力で検死することも不可能)。普通の捜査ではまずありえないシチュエーション。

 普通の殺人事件モノの推理ゲームなら、登場人物の誰が殺されたかはほぼ明らかだが(たまに死んだふりをしている人がいたりもするが)、本作では、登場人物の誰が生きていて、誰が死んでいるのかすら教えてもらえない。それも状況から推理しなければならない。


 というわけで、本作をプレイする場合、犯罪捜査、というよりは、犯罪現場を利用した推理ゲームをやっている気分でプレイしたほうがしっくり来るだろう。犯罪捜査だと思ってプレイすると、本来なら知っていて当然の情報がもらえなくてイライラする。



 本作の通常モードでは、誘導は一切なく、自力で全部解かねばならない。

 また、答案の結果については、何問正解したかしか教えてもらえない。何問目が不正解だったかまでは教えてもらえない。


 ただ、本作にはアシストモードというのもあって、こちらだと、見つけるべき証拠の数と、何問目が間違っていたかまで教えてもらえるようになる。

 このアシストモードはほとんど役に立たないので、なしでプレイしてもいいと思う。せいぜい、証拠の見落としがないか確認できるくらいだが、このゲームでは、見落としやすい証拠は1つ、2つくらいしかなく、たいがいはちゃんと調べれば全部見つけられるはずである。


 ただし、証拠だけでは真相にはたどり着けないようになっている。

 本作ではわざと、重要な証拠のいくつかが欠落した状態になっているため、最終的にはどうしても、足りない部分を想像力で補うしかない。

 そして、いくら想像しても、だいたい2択か3択くらいまでしか絞り込めない。理詰めで1択まで持ち込むのは、本作では不可能。


 それが気に入らないという人もいると思うが、本作では何回やり直してもOKという設定なので、3択くらいまで持ち込めれば、3回答えればどれかが正解するわけなので、一応問題なくクリアは可能となっている。


 全問正解すると、どういう事件だったかの概要を教えてもらえる。

 これはもともとはなくて、最近のアップデートで追加されたらしい。

 本来、このゲームは、足りない部分はプレイヤーがそれぞれ解釈すればいい、というコンセプトで作られている。しかし、それだともやもやするという声が多かったようで、一応、公式の解釈が提示されるようになったようである。


 何回答えてもいいなら総当りすればいいじゃんと思うだろうし、実際そうなのだが、それ対策用に、設問のうちひとつくらいは、単純な総当たりでは正解できないやつが混ざっていたりする。



 事件は全部で5つ。

 1つ目はチュートリアルで、事件現場ではなく、純粋に証拠だけから犯人を推理する、小規模なものになっている。

 チュートリアルをクリアすると、3つの事件が解禁される。これらはどれからやってもいい。

 3つとも全問正解すると、最後の事件が解禁される。



 最後の事件以外に関しては、考えて、いくつかの可能性を(とりあえず答えてみて不正解という結果が出ることで)除外すれば、答えに辿り着けるようになっている。

 一発クリアできるかどうかは運だし、それにこだわる必要はない。このゲームは理詰めだけで一択には持ち込めないので、どうしても何回か試行する必要がある。


 最後の事件は、すんごくしょうもないが、とても重要なヒントがひとつ欠けているせいで、やたらと難しくなっている。

 あまりにアンフェアすぎると思うから、これは後でヒントとして提示しておく。



 理詰めで完全に解ける推理パズルを求めているなら、本作はプレイしないほうがいいだろう。

 何択かまで絞り込んで、最後は少し総当たりすることになってもOKという人なら、ちょっとした頭の体操として本作はそこそこ楽しめると思う。


 ただ、本作で扱う事件は人間関係がドロドロしていてエグいので、その点は注意が必要。私は事件の関係者にそこまで感情移入しないので平気だったが、入れ込んでしまうと憂鬱になりそうな事件ばかりである。




 以下はネタバレそこそこありで、本作の事件についての感想。


 自力で解きたい人は見ないほうがいい。


 ただ、最初に、「ヒューズ邸の確執」で行き詰まっている人向けにヒントを提示しておくので、どうしても解けずに困っている人は、そこは見てもいい。

 このヒントは、本来ならゲーム側で用意すべき情報なので、見てもズルにはならないと思う。



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「ヒューズ邸の確執」のヒント

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 最初から手持ちにある「警察官のメモ」で言及されている身元不明遺体は、屋敷の外で発見された。



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 本作の事件について

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●チュートリアル


 銀行強盗の容疑で捕まった1人が、取り調べで仲間をゲロったのだが、調べを進めると、こいつらはひったくり事件にも関与しているのではないか、という疑いが浮上してきた、という話。


 プレイヤーが答えるのは、「銀行強盗事件の運転手担当は誰か」「ひったくり事件に関与したのは誰か」。


 容疑者は3人しかいないので、脳みそを何も使わずとも、総当りすれば、とりあえず全問正解はできる。

 ただし、ひったくり事件に関与した人物は複数の可能性もあるため、答えは3通りではなく7通りになる。


 これから銀行強盗しようとしている奴が、その直前にひったくり事件を起こすのは、なかなかお馬鹿だなと思う。それで銀行強盗計画に支障が出たらどうすんのさ。実際、支障が出たらしく捕まっている。

 私が銀行強盗のリーダーだったら、こんなスットコな連中は雇わない。



 このケースでは主に、容疑者の犯罪歴と、ケータイの会話履歴から答えを割り出す。


 各情報から、主犯と臨時雇いはすぐわかり、消去法で運転手もわかる。3人しかいないので。

 ひったくり犯も、1人は簡単。臨時雇いのやつ。運転手が絡んでいるかは若干怪しく、そのために最終的には、運転手が関わっているか関わっていないかの2択になるだろう。結局、ひったくり犯は2人組だったことになっている。


 運転手が犯行に関わったとする理由は、バンの中から盗んだ金が出てきたため。

 あと、地図を見てもわかりにくいが、銀行強盗の犯行スケジュールと、ひったくり現場と銀行の位置関係から、ひったくり犯が徒歩でひったくりに行ったとすれば、銀行強盗に間に合わなかっただろう、という推測から、バンを使った、という結論に到れるようである。


 大仕事を控えて、直前ギリギリにしょうもない仕事をやるというアホらしさもアレだが、こいつらは時間がないのに、宝くじを引ったくった後、わざわざ換金もしていたりする。

 その換金する時間を省いたら、ちゃんと銀行強盗できたんじゃないの? というか、なんでそんなギリギリなことをするのよ。アホすぎないか?


 いやまあ、犯罪者なんてだいたいアホだが、それにしてもお粗末な話。



●失踪


 難易度が一番簡単になっているが、本当に簡単と言えるかはなんとも言えない。

 3部作となっており、一見関係なさそうな2つの事件が、最終的には関係する。3つ目の事件は答え自体は簡単で、3部作のオチとしての役割を担っている。なかなかドラマチックなラストである。



 1つめは子供の失踪事件だが、プレイヤーは誰がどうなったかすら知らない状態で現場に放り込まれることになる。「失踪」というタイトルだから誰か失踪したんだろ、と推測することしかできない。


 この家には男と女、男女の子供2人が住んでいるが、証拠から、男女はまだ婚約状態で結婚していないこと、子供2人は女の連れ子だということがわかる。


 経済状態が苦しいのに、男は酒とギャンブルに溺れるクソ野郎。女が「仕事に行っている間、子どもの面倒を見てね」と言っているのに、ギャンブルに行って育児放棄している。



 この事件では、証拠を丁寧に洗っていけば、ほとんどの設問には簡単に答えられる。ただし、最後の「子供を迎えに行ったのは誰か?」という設問に関しては、少しひねりが入っている。

 消去法で、迎えに行った人の名前はわかるが、その人が誰なのかはわからない。ある程度想像はできるが、一択には確定できない。


 私は最初、最もありそうな"No One"(誰も迎えに行かなかった)と答えたが、違った。"No One"じゃ英語としてダメなんかね? と思って"Nobody"とか"None"とかいろいろ試したが、結局、迎えに行った人はいた、というオチである。


 子供を迎えに行った人の正体は、たぶん児童相談所みたいなものの職員なんだろうと思う。アメリカでその辺がどういう仕組みになっているかわからないが。

 あとは、別れた夫の彼女という可能性も考えられなくはない。母親が別れた夫と親権を争っているとも取れる描写もあるので。

 もっとも、正体はわからずとも名前を当てればいいだけなので、それ自体は難しいわけではない。


 ただ、どちらにしても、この時点では「失踪」とは言えない。保護されただけ。

 その後、子どもたちは施設に行ったか、妻の元夫の家に住むことになったかし、そこでの暮らしに嫌気が差したかなんかで、子供が失踪することになる、という筋書きのようである。




 2つめは、少女をクスリ漬けにして売春させているクソ野郎のおうち。このゲームの中でもぶっちぎりでヤバい話である。

 一見、1つめの事件と何も関係なさそうだが、関連はおいおいわかる。


 ここでは「クソ野郎が何回暴力をふるったか」「エマの金を盗んだのは誰か」「マーサはいつ入院したか」「タトゥーを入れる予約をしているのは誰か」「公園で少女に話しかけてきた不審人物は誰か」「クソ野郎から逃げた少女は逃げ切れたか」を答える。


 この設問の多くは、証拠からほぼ一択で導ける。


 ただ、暴力をふるった回数は、私が想定したより1回少なかった。

 まず、ステファニーを殴ったことは様々な証拠から確実。事件当日にローズを殴ったこともほぼ確実。

 不確定なのは、マーサが入院したのが殴られたせいなのか、ということと、エマが客に金を盗られた際、ローズがその分を補填しているのだが、その際に殴られた可能性がある、ということ。

 ステファニーはノルマ500ドルのところ、450ドルしか稼がなかったから殴られていた。

 一方、金を盗まれたエマの肩代わりをした日、ローズは50ドルしか稼いでないことになっている。となると、殴られた可能性は高い。

 というわけで4回なのかと思ったら、正解は3回だった。マーサか、エマの肩代わりをしたローズ、どっちかは殴られていないらしい。よくわからん。



 ローズはクソ野郎との間に子供がいるが、かといって妻という立場でもなく、やはりほかの少女と同様、客を取っている。

 子供が17歳を迎えるということで、クソ野郎は子供にも客を取らせようとした。

 それが嫌で、ローズは子供と逃げる計画を立てた。金庫の番号を探して金を盗んで逃亡する計画。


 一方、ローズの子供は公園で、不審なじいさんと出会う。じいさんは子供の様子から何か察したらしく、こっそり連絡先を教えておいた。


 事件当日、ローズは逃亡計画を実行しようとするが、クソ野郎に見つかって殴られる。その様子を見た子供が、携帯でじいさんに連絡。

 一方、クソ野郎はひと通りローズを殴った後、外出したらしい。


 その隙にじいさんが現れる。じいさんは襲ってきた番犬を殺し、ローズを手当して、金庫の金を女たちに分配して逃がした。

 ただ、その際にアジトのカギを落としたようである。



 3つめは、ここまで正解した人なら、簡単に状況はわかる。2つめの事件の続き。


 じいさんはカギを無くしたので、自分の部屋に窓から入った。

 一方、2つめの家のクソ野郎は、落ちていたカギからじいさんのアジトを見つけて侵入する。


 家で鉢合わせしたじいさんとクソ野郎は、なんやかやあり、結局、じいさんが中で撃たれて死亡した。



 この問題自体は超簡単で、一発正解も十分あり得る。ここは正解することよりも、2つの事件の因果を鑑賞することに重点が置かれているのだろう。



 ところで、2つめの事件現場にあるローズのスマホケースの中には、1つめの家にあった家族写真が入っている。

 ということは、ローズが1つめの家に住んでいた、失踪した娘ということなのだろう。


 そして、じいさんが1つめの家のギャンブルクソ野郎なのもわかる。

 1つ目の事件では、あのあと、子供の親権は彼女の元夫に移り、彼女は自殺したようである。

 その後、娘は失踪。たぶん、元夫の家が気に入らなかったとか、そんなことだろう。


 以後、トーマスは、失踪した連れ子を探すのに生涯を費やした。

 その過程で、他の失踪した子供を何人か救うのに貢献したらしく、感謝のメッセージが携帯に残されていたりしている。


 で、2つめの事件の時、わりと偶然ではあったが、ようやく本命の自分の娘(と言っていいのかわからないが)と再会することになったわけである。



●アパート4階


 アパートの4階にある3室、401、402、403、それぞれの部屋で殺人が起きるという殺人アパートの話。実際にこんなアパートがあったら物件価値ダダ下がりだろう。



 401では、窓から不法侵入者が侵入し、その結果、遺体がひとつ転がることになった、というシチュエーション。

 この事件の設問は、遺体を実際に見るか、あるいは検視報告を読めれば超簡単のはずだった。というのは、殺された人物が誰かにひねりが効いているから。


 不法侵入者が誰かは簡単にわかるし、侵入時に誰がいたかも簡単に割り出せる。

 この問題は、このゲームでは珍しく、理詰めで一択に絞り込める問題である。


 ただ、「侵入者が侵入したとき、現場に誰がいたか?」という設問では、侵入者本人もちゃんと記入しないと正解にならない点に注意。私はこれで間違えた。


 転がっている死体は誰かは、死体の性別が分かれば簡単なのだが、教えてくれない。

 とはいえ、弾痕と銃弾、空薬莢から、誰が死んだかはすぐわかる。



 402は、デモ版の事件とほぼ同じ。答えもほぼ同じ。

 ただ、少しシチュエーションが変わっており、証拠が減っている。そのせいでかえって答えにたどり着きにくくなっている。ただでさえ少ない証拠を減らしてどうするのよ。


 デモ版以上に、パーティーに来なかった左利きの人の人物像が不明になっており、誰だかさっぱりわからない。


 デモ版をプレイしたとき、私は、不倫相手は妻の友人か、少なくとも面識はあると思っていた。だから誕生パーティーに呼ばれたんだろうと。

 しかし、この事件をクリアした後に語られる真相によると、不倫相手は妻と面識はなかったようである。

 ということは、夫が、妻の誕生パーティーに、妊娠させた不倫相手を招待した、ということらしい。これは人智を超えた所業である。何考えてるんだかさっぱりわからん。それで修羅場にならないとでも思ったのかね。


 あと、犯人が右利きなのに左にグラスを置いていた理由は、自分が来なかったと偽装するためではなく、自分のワイングラスに毒を盛って、被害者のグラスとすり替えたためだったようである。

 どっちにしてもお粗末な事件ではある。殺すのはいいとして、誰が殺ったかすぐバレるに決まっている。



 403では、高校生の卒業パーティー中に殺人事件が起きた。

 この事件では、どのハンドルネームが誰なのかを割り出すのが推理のメインになる。そこがわかれば答えは比較的簡単。


 あと、珍しくこの事件では各容疑者に対する供述書を閲覧できる。これがあるのとないのとでは大違い。今までの事件では、誰がなんと言っているのかすらわからなかったのでね。

 で、供述書の内容から、誰が死んだかも簡単に割り出せる。死人は喋らないし、供述の中で誰が死んだかに全く言及しないなんてことはまずないので。


 ……というか、誰が死んだかすらわからないという、このゲームの他の事件の方が問題だと思うのだが。


 ただ、加害者については2択までしか絞れないように思う。理詰めで1択まで持ち込めるのかね、これ。1人を確実に潔白だとする証拠はないと思う。


 加害者がジャックかアンドリューかまでは、比較的簡単に絞り込めると思われる。

 被害者はクリスティからレイプ被害を受けたと訴えられている。おそらくこの被害届は虚偽で、クリスティは被害者の気を引くためか、自分に振り向いてくれないことへの当てつけとしてやったことだと思われる。

 というのは、事件当日、クリスティは被害者の自宅でサシで話し合っているから。普通、レイプ魔のお家で二人っきりで話し合おうとは思わないだろう。


 アンドリューはクリスティにホレているので、もし被害者がレイプ犯だと思い込めば、殺害の動機になる。


 ジャックは、証拠と供述調書の内容から、クリスティの兄であることがわかる。そして、クリスティの兄たちは妹に対して過保護だという証言がある。というわけで、アンドリューと同様、動機がある。



 で、どっちが殺したのか、という話だが、これはどっちでも成り立ち得る。アンドリューもジャックも、被害者がクリスティにレイプ犯として訴えられていることを知っていた証拠がない。


 ジャックは、早いうちにパーティー抜けて、同じアパートにある自室に帰ったと供述している。そのことを裏付ける証拠は特になし。

 ただ、仮に本当に帰ったとしても、ジャックは被害者のアパートの鍵を被害者の妹から盗んでいた可能性があり、みんなが酔いつぶれた深夜にアパートに侵入して、被害者を殺害することができた。


 アンドリューは現場にいたのだから、当然殺害は可能。泥酔していたから無理というのはあまり証拠としては役に立たない。泥酔したフリをしていたかもしれないし、被害者は至近距離から銃で撃たれているから、多少酔っていても射殺は可能だっただろう。その後、凶器を処分して、それからまた酔いつぶれたフリをしないといけないが、その辺の困難さはジャックも同様。


 結局はジャックが犯人だったらしいが、まあ、二択問題である。

 被害者の妹が鍵を失くしたけどいつの間にかあった、という供述をしており、その証拠を無駄にしたくないなら消極的理由でジャックが犯人になるが、それが事件と全く関係ない可能性だってあるので、これだけでジャックが犯人で確定、一択に絞れるよね、とは言えない。


 仮に、このゲームのルールとして、証拠は全て真相に繋がる、というものがあるなら、一択に絞れる。しかし実際には、真相と関係ない情報も紛れているので、このルールは適用できない。



●銃乱射事件


 警察署内で警察官が銃を乱射するという、アカン事件を捜査する。


 この事件は酷い。どれだけ酷いかは、登場人物を挙げるだけでわかる。



 ハリー:犯人を射殺したことがトラウマとなって署内で酒浸りの刑事。子供の誕生日プレゼントに真剣を郵送しようとして何度も「こんなもん扱えるわけねえだろ」と返送されている。


 ダレン:解離性同一症を患っている刑事。お薬が切れると脳内に「アイツ」が現れる。


 ミカエル:麻薬取引をやっている汚職刑事。証拠品の白い粉にまで手を出す。クズ。デブ。


 リチャード:ボス。一応まともそうだが、部下の面子からして人を見る目がなさすぎだし、部下を管理できていない。妻は金貸しで、薬代で金欠のダレンに紹介したが、結局貸さなかったようである。そのせいで薬が切れたダレンが銃を乱射することになる。



 これで何も起きない方がおかしいというもの。


 誰が銃を乱射したかは簡単にわかるからか、設問にすらなっていない。設問は、乱射事件と関係ない内容のものが大半を占める。


 設問の内、「署内の入口に立てかけてある箱の中身は何か」と「汚職警官は誰か」は、先程の登場人物紹介ですでにネタばらしした。


「ハリー・ベイカーは精神疾患を患っていなかったか?」は、答えとしては「患っていなかった」らしい。どう見てもPTSDだと思うのだが。


「凶器は警察の標準装備だったか?」は、現場に残された空薬莢や弾薬、弾痕を確認すれば簡単。めっちゃくちゃいろいろ引っ掛けようとしているが、変な情報に惑わされず、物証を見ればいい。物証があるっていいよね。


「殺害された人数」は、ちゃんと他殺の数を数えれば簡単。他の理由で死んだ人をカウントしちゃダメ。


 あとは、どのホトケさんが誰かを当てればいい。

 これは結構大変だが、膨大な資料を読み解き、情報を整理すれば、答えは一択まで絞れる。



 この事件では証拠が大量にあり、かつ、乱射事件そのものの証拠に混ざって、各刑事が担当していた事件の証拠や、関係ないプライベートの情報も出てくるので、どれが何か整理するのが大変。ただし、情報の整理さえできれば、答えは比較的絞り込みやすい。


 3つの事件の中では最高難度となっているが、ゴミ情報が多くて整理が大変なだけで、難度そのものはそんなに高くない気がする。時間がかかる、というだけ。


 このゲームは情報が少なすぎて困ることの方が多い。情報過剰なほうがかえってやりやすい気がする。



●ヒューズ邸の確執


 で、3つ全部クリアしたら出てくるオマケ問題。不動産会社のCEO、ヒューズ氏の死を偲ぶ会がお開きになった数時間後に殺人事件が起きるという話。


 これは、重要な情報がひとつ欠けているせいで、ものすごく混乱する。



 登場人物は以下の通り。


 ゴードン:ヒューズ不動産グループのCEO。理由不明だが亡くなった人。


 エリス:長男。元大学ラグビー選手。無職。ギャンブル狂。彼女に「いい稼ぎ口が見つかった」とかハガキに書いて出そうとしている。


 ロジャー:次男。料理店の副料理長。息子と娘がいる。ゴードンとグレンとよく狩りに行っていたらしい。


 グレン:三男。国家弁護士。離婚している。娘がいる。


 ローマン:四男。不動産会社の社長。偲ぶ会のスピーチで親父の会社を買収すると宣言した。


 ジョナサン:ゴードンのビジネスパートナー。ゴードンの死によってヒューズ不動産の社長に就任。


 フェリックス:執事。



 執事の証言によると、執事は夕方5時頃に買い物に出掛けている。それはレシートなどから実証されているらしい。

 執事によると、そのとき、屋敷には4人の息子はいたとされている。一方で、ゲストはみんな帰ったことを確認した。


 5時30分ごろに、赤いセダンが屋敷から出るのが、近所の人に目撃されている。そのセダンは帰ってきていない。


 で、誰かからの通報を受けて警察が駆けつけたのは6時43分。



 2階の遺体からは携帯電話が見つかっており、5時20分頃に誰かに「重要な話がある」と電話をかけている。



 1階ホールには充電中の携帯がある。それには、「あいつムカつくから3人でシメようぜ」というメッセージを誰かに送った形跡がある。

 この携帯の持ち主は、文面からして長男のエリスでほぼ確定。四兄弟で最も脳筋で馬鹿な奴で、馬鹿さがにじみ出ている。

 そして、メッセージの相手は次男で確定。息子がどうこうと言っているから。三男には息子はいないし、3人でシメたくなるような相手は四男しかいない。


 しかし、5時45分頃に「あのファッXン野郎はどこだ!」というメッセージを残している。どうやらシメようとした人物が見つからなかったらしい。



 この推理では、最初から手持ちのアイテムがいくつかある。「2階の遺体のポケットから見つかった携帯」、「現場に駆けつけた警察官のメモ」、「執事への聞き取り」、「偲ぶ会のスピーチ音声」


 この中の「警察官のメモ」には、身元不明の遺体の状態に関する記述がある。

 それによると、額のど真ん中に弾痕があり、引きずった跡があって血塗れ、薬指と小指が折れたか曲がっている、腕に引っかき傷あり、とある。


 しかし、屋敷の2階で見つかった遺体の周辺には、血痕がない。

 一方で、玄関にはおびただしい血痕と、引きずった跡がある。


 もし、「警察官のメモ」で言及されているのが2階の遺体なら、この遺体は血が止まるなりしてから1階から2階に運ばれたことになる。しかし、そうだとすると、運んだ理由が不明である。玄関が血塗れなのに、2階に遺体を移動させたところで隠せるわけでもないし。

 しかし、それを言うなら、玄関から外に遺体を運び出したにしても意味不明だが。



 実は、「警察官のメモ」には重要な情報が欠けている。それは、遺体の発見場所。

 メモで言及されている身元不明遺体とは、屋敷の外で発見されたもののこと。2階の遺体については一切触れていない。

 つまり、遺体は2体あり、ひとつは屋敷の外で発見され、もうひとつは2階にある遺体だったりする。


 この重要な情報が欠けているせいで、ものすごく推理がやりづらい。

 たぶん、この事件で行き詰まった人は、このヒントさえあれば簡単に答えが割り出せると思う。


 プロの警察が、遺体の発見場所について言及しないという点が非常に気に食わないし、アンフェアだし、クソみたいな問題だなと思った。



「警察官のメモ」で言及されている遺体が屋敷の外にあるとわかれば、この事件はめちゃくちゃ簡単。


 外にある遺体は、玄関ホールで9mm弾の銃によって射殺され、その後、意味不明だが、引きずられて外に運ばれた。それで隠せるわけでもないんだが、そのせいでこっちは大混乱である。もっとも、真の混乱の原因は、まともに報告もできない低能警察官のせいだが。さっきの銃乱射事件の署の奴が来たのかもしれない。


 一方、2階の遺体は撲殺されたと見て間違いない。2階には血痕がないし、廊下の壁にはいくつか打撲痕がある。あと、お誂え向きに、ちょうど人を撲殺しやすそうなゴルフクラブがあったりする。


 私はずっと、2階の遺体が銃殺されたと思っていたから苦悩した。なんで1階で銃殺された遺体が2階に移動したのか。なんで2階の壁に打撲痕があるのか、と。

 遺体は額のど真ん中を撃たれているから、絶対即死している。撃たれた後に自力で2階に移動してから息絶えたということはありえない。じゃあ、誰が、何のために移動させたの? と。


 報告を寄越した警察が馬鹿で間抜けだという可能性に気づくべきだった。警察官を信頼しすぎたことが敗因である。そうだよ。このゲームの警察なんて、麻薬取引したり、お薬が切れて銃を乱射するような連中だったのである。忘れてた。



 2階の遺体を撲殺したのが長男のエリスなのは確定。彼の部屋にはゴルフクラブがあるし、こいつだけスポーツマンだし、馬鹿だし。あと、遺体のそばにこいつのカギが落ちている。

 カギの持ち主がこいつなのは、偲ぶ会のスピーチの際、エリスが歩いた時にカギ束がジャラジャラ鳴っていることから推測される。


 1階の遺体を射殺したのが、次男のロジャーか三男のグレンなのも確定。そこそこの距離から拳銃で額のど真ん中を撃ち抜けるのは、銃の扱いに慣れたこの2人しかいない。


 5時30分、すなわち、犯行直前に赤いセダンで屋敷を去ったのは、ローマン以外にありえない。

 エリスの携帯によると、5時45分頃、シメようとしていたローマンが見つからなくてイラついているから。



 ここまで来れば、話は簡単。


 偲ぶ会のスピーチで、ローマンが親父の会社を買収するとかイキッたのに腹を立て、エリスは他の弟たちを焚き付け、一緒にシメて立場をわからせようぜと画策。


 しかし、グレンはローマンをこっそり逃がすことにした。

 エリスはそのことに気づき、裏切ったグレンを撲殺。

 グレンと仲の良かったロジャーはキレてエリスを射殺。


 で、なんでか知らないが、ロジャーはわざわざエリスの死体を外まで引きずった後、逃走したようである。

 なんで引きずったのかは意味不明。隠すどころか余計に遺体がバレるところに移動させている。


 この奇妙で無意味な行動と、脳みその足りない警察官の報告メモのせいで、プレイヤーは無意味に何時間も苦しむことになるのであった。

 遺体が普通にホールに転がっていれば、あるいは、警察官がきちんと遺体の発見場所を報告してさえいれば、この問題は本編の事件より簡単である。


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 アンケート

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 このゲームでは、各章で全問正解すると、最後にオマケ質問がある。これは正解はなく、アンケートみたいなもの。

 アンケート結果も公表してくれたら面白かったのだが、それはない。


●失踪事件の質問

 これは誰の物語だと思いますか? という質問。


 私はトーマスと答えた。あとは、失踪した娘の物語と捉えることもできると思う。たぶんその二択。



●殺人アパートの質問

 何号室の犯人が、最も赦されるべきだと思いますか? という質問。


 401は、元夫が不法侵入して銃を突きつけたか、発砲したので返り討ちにした事件。


 402は、不倫相手の妻を毒殺した事件。


 403は、自分の妹をレイプした(と勘違いした)男を銃殺した事件。


 私は401にしておいた。



●銃乱射事件

 最も悲惨な死を遂げたのは誰だと思いますか? という質問。


 ミカエルは論外。ダレンに度々ちょっかいをかけて怒らせ続けたことが、この事件が起きた要因のひとつとなっている。アカン奴にケンカを売ったらアカンのである。

 また、警察官のくせに麻薬取引をし、証拠品の麻薬を盗んでハリーに迷惑をかけたこともこの件の遠因となっている。

 汚職していた理由は家族のためだったようだが、そんなのは言い訳にならない。


 リチャードはボスとしての責任がある。ダレンの精神疾患を見抜けなかったし、ミカエルが汚職していることも見落とした。仲の悪いダレンとミカエルを組ませ続けたことも問題。また、彼の妻が金を貸さなかったからダレンのお薬が切れてこの問題が起きている。


 ダレンは銃を乱射した当人だが、そもそも精神疾患を抱えている奴を警察官にして銃を持たせたらアカンだろ、という警察機構のシステムの問題とも言える。


 ハリーは署内で飲んだくれるのはどうかと思うし、剣を郵送しようとしている常識の無さもどうかと思うが、とりあえず悪いことはしていない。


 フィリップ・クレメンスは麻薬の運び屋か売人。下っ端。売り物に手を付けたせいで足が付いて、こんな酷い署内で取り調べを受けることになったようである。

 殺されるほど酷いことをしたわけではないが、しょうもないことで捕まって、こんな警察署にいたことが運の尽きである。


 カール・トリスタンは10年前の子供失踪事件(たぶん。間違っているかもしれない)の犯人として有罪判決を受けた人物らしい。最近、証拠が出てきて、実は無罪なんじゃないかということで、再調査されていたよう。

 ただ、彼のことを「今のところ、カールは無罪だ」と言っているのは汚職警官のミカエルだったりする。あと、このミカエルは「カールはタフな奴だ」と評しているが、実際は、リチャードが間近で撃たれるのを見て心臓発作を起こして死んじゃったようなので、ミカエルの言うことが本当に信じられるのかは疑わしい。

 先に言ってしまったが、彼はダレンに射殺されたわけではなく、イカレた警官が銃を乱射する様を見て心臓発作を起こし、死亡した模様。



 私はハリーにしておいた。カールが本当に不当判決を受けたなら、この人が一番の被害者ということになりそうだが、それは未確定だし、彼は殺されたのではなく、心臓発作で死んだわけなので、それを「最も悲惨」とするべきかは微妙。


 人によっては、ダレンを選ぶかもしれない。銃を乱射した本人ではあるが、彼がやっちまったのは上司や社会システムの責任によるところも大きい。

 あと、これは精神疾患による犯罪なので、罪に問えない可能性が高い。彼は自殺しちゃったので実際に裁判は受けられないが。



●ヒューズ邸の確執

 ゴードンの最もお気に入りの息子は誰? という質問。


 しらんがな、と思ったが、私はローマンにしておいた。

 ゴードンは情に厚いところもあったようだが、ビジネスマンとして成功した男で、遺産相続の際も、仕事で高い役職に就いている者、結婚して男子をもうけている者を高く評価していた。実利主義で冷酷なところもあったと思われる。


 となると、自分の会社を乗っ取れるほど成功し、かつ、この事件でも無傷で生き延びたローマンを、彼は最も高く評価すると思う。


 いくら情に厚くても、肝心なところでヘマをする人間を、ゴードンは評価するとは思えない。経緯がどうあれ、最後に笑う者が強いのだという考えなんじゃないかなあと思う。


 ただ、葬儀中に「故人の会社を乗っ取りまーす」とか言い出すアホさは、ビジネスマンとしてちょっとどうかと思うが。



 次点はグレンか。仕事は国家弁護士と立派だし、ローマンを逃がした点は評価されるだろう。ただ、それで自分が殺されたのはマイナス。自分も逃げて難を逃れたなら、グレンのほうが高く評価されただろう。

 離婚していたことが、ゴードンにとってはマイナス評価となる。彼は結婚を重視していたので。



 ロジャーはグレンの仇討ちでエリスを殺す度胸を見せはしたが、その後、遺体を隠そうとして、かえって目立つところに移動させてしまうというアホなことをしているのがダメすぎる。しかも、超目立つホールの血痕の始末もしていない。

 こういう先見の明のない人間を、ゴードンは評価しないと思う。どうせ殺すなら堂々と捕まれば良かった。


 以上。


 ……エリス? 誰?

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