Goat Simulator
パソコンのメモデータを漁っていたら、2016年に"Goat Simulator"について書き、公開せずに放置していたレビューが見つかった。
結構詳細にいろいろ書いているし、各DLCについても言及している。なぜ公開しなかったかは、今となっては不明。
"3"もSteamで出たことだし、せっかくなので公開しておこうと思う。
------
そもそもこのゲームのレビューをする必要があるのか疑問だったので、今まで書かなかったのですが、DLCも充実してきたので、一応。
このゲームは「最新の次世代ヤギシミュレーター」で、不死身のヤギを操って街を探険したり、人や物に頭突きをかましたり、いろんなものを舌で掴んで振り回したりします。
何かを破壊したり、アクロバティックなことをしたりするとスコアが加算されますが、特に意味はありません。
公式の説明通り、バクなのか仕様なのかわからない変な挙動がよく起きますが、壁にめり込んで動けなくなったりしても、いつでもリスポーン、リスタートが可能となっています。
一応日本語訳されていますが、ものすごく怪しい日本語で、かつ、ゲームの仕様が2バイト文字にイマイチ適応していないため、文章が途切れて読めないことが多いです。結局、英語の方がまだ意味がわかることもしばしば。ただ、このゲームは英語のテキストからして変なことも多いです。
基本的な遊び方としては、何かを破壊してスコアを得るか、もしくは街を探検するか、です。その他にも多数のクエストが用意されていたり、街の各所にトロフィーが隠されていたりします。自転車に乗ったりとかもできます。ものすごく操作が難しいですが。
クエストやトロフィー集めはほぼノーヒントなので、本気でクリアしようとすると結構大変です。
その他、トランポリンでジャンプしたり、高いところに上ったり、送風ファンに巻き込まれてみたりなど、できることは多いです。
また、3Dゲーにありがちな表示や物理演算の不具合をわざと残しており、ヤギの首が大変なことになったり、オブジェクトがものすごい勢いで吹っ飛んでいったりなど、いろいろと変なことが起きがちです。
操作性は、基本的には問題無いのですが、乗り物の操作性だけは昔の洋ゲーを彷彿とさせる劣悪さです。
また、オブジェクトが多いとフレームレートが安定せず、そのせいか結構3D酔いしやすいです。私はたいがいの3Dゲームでは酔わないのですが、このゲームはまじめにプレイすると30分くらいが限界です。このゲームをまじめにプレイすること自体がどうかしていると思いますが。
このゲームの最大の特徴は、最初からオールクリア状態+裏技的な機能が全開、という点でしょう。
一応このゲームは、特定の条件を満たすことで新たなキャラになったり、特殊能力を得たりするのですが、別にそんなことをしなくても、最初からスタート時に全特殊能力が選択可能になっています。その上、プレイヤーキャラは不死身で、いつでも好きなときにリスポーン可能という、本来ならデバッグモードのような仕様に最初からなっています。
これは、ビデオゲームの常識からすれば珍しい仕様ですが、実は、他のメディアでは当たり前にある機能でもあります。本やCDやDVDは、買った直後から全開放されていますよね。いきなりエンディングを観ることも可能です。ビデオゲームだって本来そうあるべきで、そうしないのは開発者のエゴに過ぎないのです。"Goat Simulator"は図らずも、ビデオゲームが本来あるべき姿を体現した仕様になっていると言えます。
だいたいビデオゲームというやつは、シビアな条件をクリアすると無敵モードとかめちゃくちゃ強い武器がアンロックしたりしますけど、そういうのはヘタクソか初心者にこそ必要で、アンロックできるほどやり込んだ人にはもはや不要なんですよね。
"Fallout 4"のレビューを書いた際、高いのにPC版を買った理由はコンソールが使えるからだ、という話を書きましたけど、ああいう機能はゲームには標準で必要なものだと私は思います。課金ゲーは結局、デバッグモードの機能を使用するのに金を取っているわけですけど、あんなのは本当に馬鹿げていると思いますね。
このゲームの最大の特徴は「自由」ということでしょう。先にも言ったように、普通のゲームでは、使えるキャラクターや特殊能力などはロックされていて、プレイすることで徐々にアンロックされるものです。また、行きたい場所に行くには、経験値を溜めて強くなったり、難しい操作を習得したりする必要があります。
しかし、このゲームでは、もちろん正当なやり方でキャラをアンロックしたりする方法もあるのですけど、そもそも最初から全開放されています。結果、このゲームは、このゲームをプレイするということ自体から「自由」になっているのです。
もちろん、実績を解除したりしようとすると、ちゃんとプレイしなければならないし、それを本気で目指すとかなり大変なのですけど、このゲームの面白いところというか奇妙なところは、全実績解除を目指さなければ、などといった、モチベーションというか強迫観念というかを与えない雰囲気がある点です。プレイして煮詰まってくると、どうでもいいや、どうせヤギゲーだし、という気分になってくる。
普通のゲームであれば、プレーヤーのモチベーションを維持できないゲームデザインはダメなのですけど、このゲームは逆にそこがいいところになっているわけです。
実際、私はこのゲームは2時間くらいしか遊んでないのですが(DLC除く)、ではつまらないのかというとそうではなく、わりと充実しているような気がするんですよね。
普通、ビデオゲームというのは長く遊べる方がいいとされますけど、このゲームは短時間で好きな要素だけつまみ食いできるところに良さがあるんじゃないかと思います。探険したければ探険し、爆破したければ好きなだけ爆破する。人をぶっとばしたければぶっとばしまくり、クルマに轢かれたければ轢かれまくる。好きなだけ特殊能力を重ねまくり、ゲームがクラッシュするまでオブジェクトを表示させまくる。で、満足したら終了する。
好きなことを好きなだけやって、さっと終わって充実できるので、実はかなりコストパフォーマンスが高いゲームなんじゃないかと思えます。
■DLC "MMO Simulator"
無料で追加されたDLCの"MMO Simulator"。名前の通りMMOをシミュレートするゲームで、見た目はMMOっぽいですが実際はソロゲーです(シミュレートなので)。また、無意味にクラスを選んだりできます。
操作やプレイ感は基本的には"Goat Simulator"と同じですが、村人と話してクエストを受注できるようになったこと、舌で掴んだ物をアイテムボックスに保管できるようになったこと、また、ミニマップとチャット画面が表示されることが主な変更点です。チャット画面は実際にチャットできるわけではなく、ランダムにそれっぽい会話が自動で表示されるだけです。リアルマネートレードや他ゲーの批判、ギルド勧誘など。
あと、一応経験値とLvがあります。意味ないですけど。
ヤギゲーのくせに結構本格的なつくりとなっており、クエストはかなりそれっぽいです。敵との戦闘やトラップ満載のダンジョンなどもあります。しかし、ヤギは不死身なので、いきなりラストダンジョンに乗り込んでラスボスを倒すことも可能です。
MMOは無駄に時間のかかるゲームだということを考えると、短時間でクリアできるこのゲームは、存在自体が皮肉だと言えるかもしれません。
なお、隠しワープゾーンがあるのですけど、その場所にどうやって行くのかがよくわからないんですよね。バグって地面をすり抜けて変なことになったときに、たまに行くことがあるのですが、正式な行き方がわからない。
■DLC "GoatZ"
ゾンビヤギとなって、ゾンビが徘徊する街でサバイバルするという、わけのわからない有料DLC。マップは新規のもの。
もともとは不死身のヤギだったくせに、ゾンビ化すると空腹ゲージとライフゲージが追加されてしまい、しかもこのゲージがめちゃくちゃ減るのが早いため、すぐ死んでしまうという謎仕様。
また、クラフト機能が追加され、街に転がっているガラクタを組み合わせることで、武器や食料を作ることができます。このクラフト機能はヤギゲーのくせにものすごく本格的なのですが、砂糖と何を組み合わせても食料になるなど、かなり変な仕様なのもこのゲームならでは(砂糖+パイプ椅子で、食えるパイプ椅子が完成する)。
サバイバルモードの難易度は激辛で、3日生き延びるだけでもかなりキツイです。特に、食料がなかなか見つからないんですよね。ゾンビを倒すと脳みそを落とすのですけど(なぜ人間ではなくゾンビの脳みそを食うのだろうか)、必ず出てくるわけでもなく、出てきても間違って頭突きしてどこかに飛んでいって食べられないことも多いんですよね。なので、何度かプレイして、どこに食料があるかを覚えておかないといけません。
また、ゲームの仕様がシビアなのに対して、物理演算等は相変わらずなので、壁にはまって動けなくなって餓死などという理不尽なことも起こりがちです。なので、あまり本気になってプレイしすぎない方がいいかと思います。
もっとも、このゲームらしく、ライフ、空腹ゲージが減らないヤギ(「楽しみもない」という説明付き)を選ぶこともでき、いつも通り不死身のヤギとなって暴れ回ることもできます。プレーヤーに遊び方を強制しないのはいいことですね。他のゲームもそうすりゃいいのにと思う。
■DLC "PAYDAY"
なぜか"PAYDAY"とコラボした有料DLC。ヤギ、イルカ、フラミンゴ、ラクダの4匹を駆使して、仮面を被り、街でイタズラします。
イタズラについては、このゲーム共通の問題として、マップ機能が不親切なことと、そもそも何をやればクリアなのかわかららないことがしばしばあって、本気でオールクリアを目指すと、結構イライラすることもあります。わからないときは根詰めないで、諦めるか、攻略動画でも探した方がいいかと思います。このゲームでストレスを溜めるのは馬鹿げている。
とりあえずミニマップの表示と、メニュー画面からいつでも全体マップが見られる機能は欲しかったですね。あと、できれば目標がどこにあるのか、だいたいでいいから示してくれる機能があればなお良かった。なお、この辺の問題は"Waste of Space"ではある程度改善されていました。できれば"PAYDAY"もアップデートして改善して欲しいところですが、激安の価格から考えたらあまり無理は言えないところ。
あと、回転扉を通過するのが異常に難しいです。普通のゲームだったらこの点は思い切り批判するところですけど、ヤギゲーなのでしょうがない。
このDLCはイタズラミッションよりも、増えたキャラが面白いことの方が重要なのではないかと思います。つばを吐いて人を倒せるラクダ、空を飛べるフラミンゴ、車いすに乗ったイルカ(この車いすは座高を調節できるのですが、上下限が設定されていないため、ビルよりも高く座高を伸ばしたり、地面にめり込むまで下げたりできます。単なる手抜きとも言えますが、結構笑える)と、このゲームの可能性を広げる面々ばかり。
特にフラミンゴの追加は大きいですね。今までヤギが空を飛ぶためには、爆発に巻き込まれるか、スキルを重ね合わせて変なことになるのを利用するかしかなかったので、普通に飛べるキャラは嬉しいです。
■DLC "Waste of Space"
宇宙ステーションを中心とした、宇宙を舞台にした有料DLC。
マップの広さは過去最大、ミニマップやミッションの確認などのメニュー画面も整備され、今までで一番気合いが入ったつくりになっています。
ミッションを受注できたり、ミニマップがあったりなどの点から、仕様としては"MMO"に近い感じだと考えていいと思います。
人に頭突きをかましたり、木箱を破壊したりすると金がもらえ、金を稼ぐことで植民宇宙ステーションの施設が増えています。
ある程度金を稼ぐと宇宙飛行機に乗れるようになり、宇宙海賊と戦ったり、逆に海賊行為を働いて宇宙警備隊と戦ったりできます。
今までのこのゲームの適当さから比べると、このDLCの内容はかなりしっかりしていると言えます。「やれること」の質も良くなっていますし、クエストも比較的どこで何をすればいいのかがわかりやすくなっています。クオリティの部分に結構しっかり手間を掛けている。ただ、あくまでこのゲームを基準にしてのことで、例によってやれることの底は浅く、結局は適当なゲームではあります。そこがこのゲームの良さでもあるわけですが。
最初は行ける場所に制限があり、金を貯めることでアンロックされるという、ゲームとしては当たり前の機能が追加されましたが、これはある意味では「退化」と言える仕様ではあります。ゲーマーに革命的な「自由」をもたらしたヤギゲーだったのに、結局ロックをかける方向に向かうのかよと。
ただ、このゲームのフィールドは無駄に広く、どこに何があるかよくわからないので、徐々に行ける場所が増えるようになる方が遊びやすいのも事実です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます