Antichamber

 "Antichamber"は、Steamにて販売しているインディゲーム。"Potal"派生のパズルゲームで、インディゲームらしいシンプルなグラフィックが特徴。


 テキストは英語のみで日本語訳はなし。ただ、パズルそのものは非言語パズルなので、テキストが読めなくても問題ない。

 このゲームではところどころの壁に、人生訓的なイラストとテキストが飾ってある。これらは読めた方がより味は深まるものの、必須ではない。また、英文そのものはどれも短いので、わからない単語を調べるだけで、意味はすぐわかると思う。


 また、コントローラーは非対応となっている。



 "Portal"タイプの主観視点パズルゲーで、謎の空間をうろうろしてパズルを解いていく。

 雰囲気は映画の"Cube"に似ている(遺憾ながら続編クソ映画の"Cube2"の方に似ている。なお、グロい即死トラップなどはない)。

 グラフィックはシンプルだが、白黒原色を使用した色使いで独特な雰囲気を醸し出している。


 多くの"Portal"タイプのパズルゲームと本作が最も異なる点は、このゲームの空間がだまし絵的にねじ曲がっていること。ただし、無秩序に無茶苦茶なわけではなく、一定の法則はあって、プレイし続けているとだんだんわかってくるようになっている。


 また、"Portal"みたいにステージクリア型ではなく、空間のねじ曲がった奇妙な迷路の中をうろうろしながら徐々に行けるところを増やしていく、アドベンチャーゲームの要素が強い形式になっている。迷路を探索してパズルを見つけ、それを解くことで行けるところが増える。


 このタイプの利点は、あるパズルで行き詰まっても、別のパズルに挑戦できること。同じパズルで延々行き詰まるらずに済む。

 一方で、序盤で見つけられるものの、その時点では絶対解けないパズルもあるので、見切りを付けることが大事になる。

 たとえば"WTF"パズルは、見つけた時点ではどうやっても解けない。解けるようになったら自ずとわかるので、それまでは放置すべきである。


 このゲームの空間はねじ曲がっている上に迷路になっているものの、一応マップがあって、ファストトラベルも可能になっている。そのため、やりたいパズルのところに戻ることは簡単。

 ただ、マップや雰囲気からして、絶対そこにパズルがあるはずなのに、なぜか見つからない、ということはたまにある。あるべきパズルを探すのも、このゲームのパズルの一貫となっている。



 ストーリーは特にない。人生訓のテキストは思わせぶりだし、エンディングもわりと謎だが、深く考えない方がいいだろう。



 パズルの難易度は、結構高い。わかってしまえば簡単で、難しい操作を要求されることはほとんどないものの、ほぼノーヒントなので、わからないと本当にハマる。

 特に、テキストによるヒントは全くない。人生訓がヒントっぽく見えることもあるが、基本的にはそういう性質のものではないと考えた方がいいだろう。


 このゲームのヒントの出し方はなかなか巧みで、一見トラップにしか見えないような仕掛けが、実はパズルを解くヒントになっていたりする。プレイヤーがそこに気づけるかどうかが問題。



 ゲームボリュームは、だいたい8時間程度。私がパズル、全人生訓を収集するのにかかった時間は13時間。

 解き方をすべてわかっていれば1時間かからないでクリア可能だが、初見でそれは無理。

 解き方がわかってしまうと、次やるときは簡単過ぎるので、繰り返しプレイできるゲームではない。しかし、1周限りのゲームだと考えても、充分満足できる内容ではある。



 総評は、シンプルだけど独特の味わいがあり、インディゲームにありがちな酷い難易度バランスということもなく、かなりよくできたゲーム。

 ストーリーや世界観などの部分で奥行きを出せていないが、それは少人数で製作しているインディゲームなので仕方がないだろう。

 一方で、このゲームの本質的な部分である、パズルとアドベンチャーの完成度はメーカー製と遜色ない。労力の突っ込みどころをよくわかっている。


 アドベンチャーゲームとしては、スリルのあるところはちゃんとスリルがあるし、新しい場所へ行ける喜びもきちんとある。

 パズルゲームとしては歯ごたえがあり、ヒントの出し方も絶妙で、解いた時には達成感がある。

 ただ、このパズルの体感難易度には個人差があるだろうとは思う。嵌まる人は嵌まる。カジュアルなパズルゲームではない点には注意。そこそこ難しい。


 特に優れているのが、ゲーム内の法則がきちんと統一されていること。インディゲームは独り善がりになりがちで、ゲーム内でのルールがころころ変わることがあるが、このゲームはだまし絵的にねじれたレベルデザインになっていながら、理不尽なことがない。これはすごい。


 難点なのは、銃の使い方に慣れが必要なこと。基本的な使い方にはチュートリアルがあるものの、発展的な使い方は自分で修得しなければならない。

 少し間違った理解でもクリアは可能なのだが、そうすると、ものすごく操作性が悪いように感じることがある。私は特にLv3の銃の正しい操作方法を理解するのにしばらくかかった。


 "Portal"タイプの骨太なパズルゲームがプレイしたいなら、本作はおすすめである。

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