ワイルドアームズ アドヴァンスドサード
『ワイルドアームズ』シリーズの3作目で、初のPS2ソフト。
『ワイルドアームズ』シリーズは西部劇風のテイストで統一されているイメージがあるが、実はそうでもない。むしろ特撮もののノリの方が強いシリーズだったりする。
初代は、口笛が印象的なオープニングと、主人公のロディが「渡り鳥」と呼ばれる浮浪の賞金稼ぎをやっていただけで、基本的には剣と魔法と特撮モノの世界観だった。
『セカンドイグニッション』になると特撮テイストがだだ漏れになり、ますます西部劇からは遠ざかる。
『アドヴァンスドサード』こそは、正真正銘の西部劇テイスト盛りだくさん、荒野の渡り鳥どもの生き様を描いたRPGなのである。……そしてもちろん特撮ノリもある。
『ワイルドアームズ』シリーズは、隠しもしない特撮ノリと、キャラクターのアクが強いRPGとなっている。
ライバルキャラや悪役キャラの個性の強さが目立つが、主人公側にもだいたい1人、2人はかなり変な人がいる。
初代だと、誰からも嫌われていないのに、勝手に嫌われていると思い込んでいる王女セシリア。
『セカンド』では、頑なに英雄になりたがらない無責任主人公アシュレーなど。
彼らは物語の試練を経ることで、人間的に成長する……かと思いきや、より強烈な個性をダメな方向にこじせらせてしまい、王女様は国を放ったらかして旅に出てしまうし、アシュレーは「みんなが英雄なんだ!」という形で責任放棄癖を完結してしまう。いいのかよそれで。
では、『サード』ではどんな奴が主人公なのかというと、「マックスウェル」の姓を持つ、シリーズ屈指のイカレた女主人公だったりする。
このシリーズで「マックスウェル」の姓を持つ女は、ぶっとんでいておかしいという伝統がある。
その「マックスウェルの悪魔っ娘」の中でも、ぶっちぎりでおかしいのが、本作の主人公、ヴァージニア・マックスウェルである。
ヴァージニアは駆け出しの渡り鳥で、腕も経験も未熟だが、渡り鳥という職業にお花畑な妄想を抱いており、正義の味方と信じている。
というわけで、ことあるごとに正義の燃えたぎる恥ずかしいセリフを言い放ち、非現実的な行動を取り、そのせいで騙されたり、仲間を危機にさらしたりする。
失敗や挫折を経ることで、彼女は渡り鳥の現実を直視して成長する――かと思いきや、「それでも私は、自分の正義とよろしくやっていく!」と言い放つ、よりダメな方向へと進化する。
しかも、その頃にはヴァージニアはもはや未熟な駆け出しではなく、実力と経験を備えてしまっており、暴走熱血正義娘を止められるものは、もはや誰もいなくなってしまう。
渡り鳥の現実を見せつけて正気に返らせようと立ちはだかるライバルも、ヴァージニアの青さに付け込んで利用しようとする悪役も、みんな誰も付いていけなくなるのである。
『サード』ではライバルや悪役達の個性も強く、見どころ満載であるが、ヴァージニアのぶっ飛んだ言動の前ではそれも霞む。外見は地味なくせに、かなりおかしい主人公である。最後まで煮え切らないことを貫き通した『セカンド』のアシュレーとは真逆に振り切れている。
従来の『ワイルドアームズ』シリーズは、その西部劇風な雰囲気とは裏腹に、メインの武器は剣と魔法だった。銃はサブ的に登場する感じ。
しかし、ついに『サード』では銃がメインウェポンになる。主人公達はそれぞれに愛銃を手にしており、その銃を改造することで強化していくことができる。
魔法はキャラクター本人が覚えるのではなく、ミーディアムという、ガーディアンの力を有するアイテムを装備することで、そのミーディアムが持つ魔法や特性が備わるようになる、という仕組みになっている。
また、特殊なアイテムを使用することで、ミーディアムに能力を追加したりすることも可能。
つまり、ミーディアムを変更することで、どのキャラでも任意に魔法が使えるようになるわけだが、キャラによって魔法が得意だったり不得意だったりなどの相性があるため、どのミーディアムを誰に装備させた方が有利になるかは、ある程度は決まっている。
異常耐性は、ミーディアムにもともと付いている場合もあるが、たいがいは元からは付いておらず、敵からのドロップなどで、ミーディアムに異常耐性を付加できる消費アイテムがあるので、それを使用することになる。
異常耐性があるかないかはこのゲームにおいて死活問題。ちゃんと対策しておかないと、何もできない状態にされて全滅するケースもよくある。
というわけでこのゲームでは、レベル上げ、というよりは、異常耐性対策アイテムを集めるためにザコ敵と延々戦う作業を強いられることがしばしばある。
今作のプレイヤーキャラは全員がかなりクセが強く、使い勝手を覚えるのに時間がかかる。
ヴァージニアは二丁拳銃の使い手で、素早く手数が多いが、火力は低め。
ジェットは最も素早く、攻撃力がそこそこのサブマシンガンを使用する。ただし魔法が苦手。
ギャロウズはガタイのデカさに似合わず魔法が得意なタイプ。一方で切り詰めたショットガンは火力も命中も低く、素早さも低め。
クライヴは素早さが低いが、高火力なスナイパーライフルを使用する。
ゲーム難度に関しては、謎解きに関しては低めに。
一方、キャラ育成や戦闘で考える要素は増えたように思う。
このシリーズはパズルゲームとしてそこそこ難しめのゲームだったことを考えると、『サード』のダンジョンの仕掛けなどは簡単になったように感じる。それでもちょっと行き詰まるところはあったが。
一方、育成と戦闘で考えることはやや多くなった。
特に、キャラの行動順の制御がなかなか重要で、そのためにミーディアムを調整したりといった小技が必要に。
というのは、回復や補助魔法を使うキャラの行動順や、行動順はだいたい最後になるが、命中も火力も高いクライヴでどの敵を狙うかなどを考えることは、このゲームにおいては生死を分けることになりがちだからである。
もちろん、レベルを上げまくって問答無用で敵を圧倒するなら、まあまあ適当でも良くなるわけだが。
ただ、本編のダンジョンのパズルの難度は低下した一方で、オマケ要素のパズルには、一部結構難しいのがあった。
本作の各地にはミレニアムパズルというのがあって、クリアするとアイテムが貰えたりする。
その多くはそこまで難しくないが、いくつか結構難しいのがあった。
あと、オマケ要素であるABYSSは途中セーブできず、101階まであるので、攻略難度そのものよりも、ノーセーブで一気に攻略しなければならないこと自体がいろいろ大変。
ここはもうちょっとなんとかして欲しかったところである。
次々と悪役が交代しては主題歌のバージョンも変わる長編アニメ的なノリで、明らかに前作の主人公っぽい格好の悪役、ジェイナスや、明らかに初代のジェーン・マックスウェルっぽいマヤ・シュレディンガーなど、シリーズをプレイし続けてきたプレイヤーに対するサービス的な要素も盛りだくさんの、今プレイしても楽しいRPGである。
ただ、主人公を始めとするキャラクターがいちいちみんな個性強いので、プレイしていると結構疲れるゲームでもある。
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