The Talos Principle 2

 哲学パズルゲー"The Talos Principle"の続編。


 ストーリー的には完全な続き物となっているが、プレイヤーは生まれたてのロボットという設定で、何も知らない体になっているので、前作をプレイしていなくても問題ない。


 ただ、序盤で前作の壮絶なネタバレの説明が入るため、前作をプレイするつもりがあるなら先にクリアしておくことを勧める。いきなり一番美味しいところをネタバレされるので。



 パズルの難度は前作より若干マイルドになっている。前作をクリアした人ならほとんど躓かずにクリアできるだろう。


 パズルは前作とほぼ同じ。ポータルガンの出でこない"Portal"っぽいもので、ブロックを積み上げたり、ビームをコネクターで中継して所定のレセプターに届けたりとかして解いていく。


 本作のパズルは、わかれば簡単な手順で解けるようになっており、シビアで複雑な操作は必要ないことが特徴。その点は前作から継承され、洗練されている。前作よりもアクロバティックな解法を要求されるパズルは減った。必要なのは論理と発想だけ。



 一方で、フィールドはやたらと広くなり、探索は厄介になっている。

 前作もまあまあフィールドは広かったが、パズルそのものは密集していて、散策したいのでない限りはそんなに歩き回る必要はなかった。

 しかし、今作はパズル自体も広大なフィールドに散らばっており、実績に絡む収集品も増えた。おかげで結構歩き回らされる。

 ただ、プレイヤーの走る速度は二足歩行とは思えないほど速いので、移動は快適。



 前作の星探しは、本編のパズルを再利用して別解を作るものが多かったが、今作は、星は星専用のパズルがある場合が多くなった。パズルを再利用するものもいくつかあるが、その数は前作からすればだいぶ減っている。

 星は各エリアに2つずつあり、銅像の謎掛けを解けば手に入る仕組みに。何をどうすればいいのかは、最初はわからないと思うが、プレイしていたらそのうちわかるようになる。



 本作の特徴のひとつである哲学要素については今作も健在。

 前作は、哲学要素はあくまでおまけで、パソコンを起動すると、謎の相手から哲学議論をふっかけられるという趣向だった。パソコンを無視してもよかった。


 しかし今作では、パズルを解く度に、強制的に哲学議論をふっかけられるようになったため、哲学は不可避となっている。

 また、今作ではロボットの仲間や街があったりして、他のロボットと哲学的な議論を交わす機会があるようになっている。

 これらの選択肢のいくつかは、後のストーリー展開に影響を与える。


 今作は、パズルで頭を使った直後に、必ず哲学議論でまた頭を使うことになるので、プレイしていると結構疲れる。前作は連続で何時間もプレイできたが、今作はあまり連続でプレイできない。1時間ごとに休憩が欲しくなる。



 プレイボリュームは、前作よりある。

 ただ、前作の方が全体にパズルの難度が高めで、ひとつひとつのパズルに時間がかかっていたのに対し、今作は、数は多いけど、わりとテンポよく解ける。私の場合、前作は1~2日考えたものもあったのに対し、今作は一番時間がかかったのでも2時間程度。20分以上かかった問題は3問くらいだった。


 参考までに、私の初回クリアは40時間。これは、全てのパズルを解き、全ての収集品を集めた上での時間。



 総評は、前作のほうがストーリーの仕掛けや、パズルの難度などは凝っていて独創的だったと思うが、その「独創的」なゲームの続編としては妥当なデキだと思う。前作が好きなら買って損はないだろう。


 続編というのは、前作という土台があるから、どうしたって安定的な内容になる。続編に画期的なものを求めるのは、そもそも間違っている。画期的なゲームがプレイしたいなら、何のしがらみもない、無名の新作をプレイすべきである。



------


 以下はネタバレあり


------


■攻略情報


 パズルの攻略情報については必要ないと思うが、実績に絡む会話選択の条件について、わかっている限りで情報提供しておこうと思う。


「表と裏」、「汝自身を知れ」、「新たな道徳体系」の実績解除については、ゲーム序盤に666番の怪しいお誘いに乗って、プライベートメッセージで個人情報を提供することに同意し、いくつか質問に応えて、お友達を紹介してもらう必要がある。


 私は1周目に666に個人情報を提供することを断ったが、そうすると、ソムノドローム関係のイベントそのものが発生しなくなるため、「表と裏」はもちろん、「汝自身を知れ」と「新たな道徳体系」も解除できなくなる。つまり、666の誘いを断った時点で、ランドが市長になるフラグは折れるわけである。


「表と裏」の解除条件を満たすと、2回目の遠征出発前に会議イベントが発生し、また、2つ目のソムノドロームを発見した時にイベントが起き、ソムノドロームに接続するか否かが選択できるようになる。


「汝自身を知れ」を解除するには、このときにソムノドロームに接続する選択肢を選べばいい。

「新たな道徳体系」を解除するには、ランドが市長になる必要があるが、この条件は、ソムノドロームに接続した上で、その情報を学者にのみ提供すると発表すればいいようである。


 その他の選択肢は、そこまで重要ではない模様。多少ランドと異なる意見を発しても大丈夫。私がプレイした感じでは、どうあれ最終的にソムノドロームの情報を学者に提供しさえすれば、ランドが市長になりそうではある。

 ただ、あんまりランドの主張と異なることばかり選んでいると失敗する可能性もありうるから、666のお友達紹介のときには学者を紹介するように頼み、ランド絡みのイベントでも、学者を立てるような選択肢を選ぶようにするほうが確実ではある。



「新たな始まり」はバイロンが市長に、「バランス」は現市長が続投すれば解除。

 これらを狙って取るのは比較的簡単で、バイロンを市長にしたければ会話選択肢で革新派的な主張をし続ければよく、市長を続投させたければ、保守的な選択を選び続ければいい。

 ただ、「新たな道徳体系」を取るためにランドを市長にする必要があることを含めると、全実績解除には最低3周かかることになる。これはなかなかエグい。



 通常、セーブはオートセーブのみで、ある場面のデータをコピーしたりはできない。

 ただ、セーブデータを直接いじることでコピーは可能。


 セーブデータは通常、以下のアドレスにある。


 C:\Users\ユーザー名\AppData\Local\Talos2\Saved\SaveGames\


  savedata_0.savが1番で、以下、 savedata_1.sav、 savedata_2.savとなっている。1つしセーブデータを作っていない場合、_0.savしかないはず。


 で、たとえばsavedata_0.savをコピーして、それをsavedata_1.savにリネームすれば、セーブデータを複製できる。


 これを利用すれば、きっちり3周するよりは多少楽ができるはずである。

 ただ、バイロンと現市長のバランスをうまく取るのは難しい。


 まず1週目は、バイロンか現市長のパターンを見て、2周目は、1周目で落選したほうが市長になるように会話選択肢を選びつつ、666のイベントでランドとお友達になり、肝心なところではランドに肩入れする選択をしながら、ソムノドロームのイベントの直前でセーブデータを複製。で、そこから、ランドのパターンと、1周目に見逃したパターンを両方見る、というのが簡単ではないかと思う。



------



 今作は、行き詰まったパズルはかなり少なかった。


 パズルで一番時間がかかったのは、西2のゴールデンゲートパズル「空洞」。

 わかればめちゃくちゃ簡単だが、ずっと間違った解法を想定していて、コネクタとコンバーターを両方ともゲートから出そうとしていた。しかし、どうやっても片方しか取り出せず。

 今作では、1つのパズルに20分以上かかると実績が取れるが、この実績が取れたのが「空洞」だった。つまり、これ以外のパズルには20分以上かかっていなかったわけである。

 前作は1日考えたやつもあったから、難度の差は歴然だろう。



 他に行き詰まったのは、全部パンドラの星だった。

 一番行き詰まったのは西2のパンドラ。これが本作で解くのに一番時間がかかった。それでも2時間くらいと、前作に比べれば圧倒的に短い。


 これは結局、正規の解法は分からなかった。

 おそらく正規の解法は、パズル3からなんとかしてドリルを盗み出し、パズル6の近くにある壁に穴を開けてアクティベーターを取り出し、そのアクティベーターでパンドラの像をアンロックする、という手順だと思う。


 しかし私はどうしてもドリルが盗み出せなかった。たぶん、他所で手に入れたブロックをパズル3に持ち込んで、それを使ってドリルを取り出すという手順だと思うのだが、どうしてもブロックを持ってパズル3に侵入できなかった。飛び降りる位置が良くないのか、そもそもそういう解法じゃないのか。


 代わりに、どこだったか忘れたが、別のパズルからアクティベーターを盗み出して、それでパンドラの像をアンロックした。



 もうひとつは、南3のパンドラ。塔にコネクタがあるのはすぐにわかったが、そこからパンドラの箱まで中継するためのコネクタをどこから盗み出せるかがなかなか分からなくて苦戦した。

 このエリアは、中央の塔に青レセプターがあるのだが、あれは何か意味があるのだろうか? あそこにビームを送ると何が起きるのか、さっぱりわからない。



 南1のパンドラも、やや時間がかかった。ドリルで穴を開けて緑ビームを露出させ、コネクタで中継するところまではすぐにわかったが、その近くの山のてっぺんに据付コネクタがあるのに長いこと気付かず、すんごい遠いパズルから、木々の隙間から見える豆粒みたいなコネクタをなんとか無理やり繋げようとしていた。

 据付コネクタの存在に気づけば後は楽勝だったが、おかげで南1はうんざりするほど歩き回ったもんである。



 今作の哲学談義は、おおざっぱには2種類ある。


 ひとつは、パンドラ、スフィンクスによる、ギリシャ神話を基にしたもの。


 たとえば、ダイダロスはイカロスに蝋で作った翼を与えて、幽閉されていた塔から脱出させようとしたが、イカロスは「あんまり高く跳ぶと太陽の熱でろうが溶けて死ぬよ」という忠告を聞かずに、調子こいて高く飛びすぎて蝋が溶けて墜落して死んだ。これは一体誰が悪いのか、という出題があって、忠告を聞かなかったイカロス、無謀な若者に翼を与えたダイダロス、など、いくつか選択肢があるが、たぶんどれを選んでも、パンドラやスフィンクスはいちゃもんを付けてくる。


 これは前作のミルトンとのやり取りに近い。自分の立場を明確にせず、こちらにばかり選択を迫ってくるアンフェアな論敵である。

 安全圏から人を非難するのは能なしでもできることだから、彼らの言うことは無視すればいい。勝手に言わせとけ。


 後でわかることだが、パンドラやスフィンクスは、前作の主人公であるアテネが、娘を失ったショックで精神疾患を患った末に生まれた、人類(ここでいう人類はAIロボのことを指す)に対して懐疑的、悲観的な人格である。

 アテネが人類の文明を再興するのにどれだけ苦労したかは計り知れないし、その功績は認めるべきだが、だからといって人にアンフェアな議論をふっかけることが許されることにはならないと私は思う。それとこれとは別問題。


 だいたい、アテネは自分が神格化されることを嫌ったから、街を離れたということだった。であれば、神のように振る舞って、人に上から目線で説教を垂れるのは筋が通らない。神にはなりたくないけど、神のように人に偉そうに説教を垂れるのはいいの? そんなのおかしいだろう。



 もうひとつは、仲間のロボットとの議論。これは「街の行く末をどうすべきか」という、もっと具体的で深刻な問題がテーマとなる。あとは人生相談を受けることもある。


 こちらは、議論の相手が保守派、革新派、判断保留のどれかに属しており、相手の主張に同意すればそれで話は終わりだし、異論を唱えれば議論に発展する。

 また、このときの会話選択肢のいくつかは、後々のストーリー展開に影響するようである。誰が市長になるかとか、誰が味方に付き、誰が敵に回るかとか。


 ただ、エンディングの分岐そのものは、ゲーム最後の選択肢によって決まるようである。ずっと革新派のフリをしていたくせに、最後の最後で裏切って保守に回ることも可能なよう。その選択肢を選ばなかったので、実際選んだらどうなるかまではわからないが。



 AIロボの街では、旧人類の過ちを繰り返さないために、これ以上文明を発展させないほうがいい、という主張が大勢を占めている。

 だから、人口は1000人までに制限して、街もこれ以上発展させないことを是としている。


 しかし、現実には、街を稼働させるための資源やエネルギーが慢性的に不足しており、計画停電を行ったり、設備の保守整備に追われている。

 現状維持すら怪しいのに、これ以上何もしないことが人類のためだという思想が流行している。


 この現状をどう考えるか、というのがプレイヤーに与えられた課題。



 ……しかしこれ、仮に保守的な考えを支持するにしても、少なくとも現状維持すら怪しい今のままでOKという意見には賛成できるわけがないと思うのだが。


 だいたいAIロボは電力で稼働しており、電力が尽きたら動けなくなるんだから、電力の確保は、有機的人間で言うところの食料の確保と同じくらい重要である。有機的人間だったら電力のない生活も可能だが、AIロボには無理。

 なのに、その電力が不足していてもOKということには、どう考えたってならないだろう。


 というわけで、この議論はそもそも、保守派の主張に無理がある。AIロボの街の現状は、保守すら不可能なのである。


 エネルギー問題を解決しない限り、これ以上街を発展させるべきではない、という意見ならわかる。なにしろ今でも需要をまかない切れていないんだから、さらに人口を増やしたら街は崩壊するだろう。


 しかし、エネルギー問題も現状のまま解決しなくていい、となると、いくらなんでも賛成できない。発電所がひとつ壊れて使えなくなっただけで、この文明は滅亡するかもしれない。その危うい現状を放置してもOK、ということには、どう考えたってならない。



 このゲームが哲学的問題を提示したいのであれば、この設定は良くなかった気がする。


 このゲームが提示しているのは、明日発電所が壊れて滅亡してしまうかもしれないリスクを抱えた現状維持を望むか、それとも危険な新技術に手を出すか、という二択である。


 現状維持にも、新技術にも、どちらにも同様に明日文明が滅亡するリスクがあるなら、可能性のある方に賭けたほうがマシという選択肢を選びやすい。



 このゲームが本来提示すべきだったのは、とりあえず、この先何十億年くらいかは文明を維持できるけど、そのうち地球と一緒に仲良く滅亡する未来(40~50億年くらいすると太陽は水素を使い切って巨大化し、地球は灼熱地獄になるか、あるいは溶けてなくなる予定。また、天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突する予定もそれくらいで、そのとき地球が弾き飛ばされて、他の星と衝突したり、ブラックホールに飲み込まれたり、何もない宇宙空間にふっ飛ばされたりするかもしれない)が決定している現状維持を望むか、それとも、明日文明が滅亡するリスクもあるが、宇宙に進出できる可能性のある新技術に手を出すか、という二択を迫ることだったのではなかろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る