The Stanley Parable: Ultra Deluxe

 このゲームに関しては、ネタバレなしでは何も語れないが、とりあえずネタバレなしの範囲で、オリジナル版との違いについて言及しておく。



 まずは、オリジナル版未プレイの人向けの話。


 ゲームの内容は、パズルのない"Portal"みたいなもんだと思えばいい。GLaDOSのおしゃべりが好きな人なら楽しめるだろう。

 プレイする気があるなら、レビューとかは一切見ないほうがいい。


 "Ultra Deluxe"には、オリジナル版の内容の9割は入っている。1割くらい差し替えられたり削除されたものがあるが、何かに配慮したとか、そういう類のものではない。


 そのため、今から買うなら"Ultra Deluxe"だけで充分。強いてオリジナル版を買う必要はない。

 "Ultra Deluxe"は公式で日本語字幕に対応しているし、操作性も良くなっている。


 ただ、オリジナル版のデモはプレイしておいたほうがいいかもしれない。デモ版には日本語字幕がないので、必要ならMODを導入するなどする必要がある。



 次に、オリジナル版を持っている人が、"Ultra Deluxe"を買うべきか否かについて。


 "Ultra Deluxe"は、基本的にはオリジナル版そのまんま。グラフィックや操作性が若干良くなり、公式に日本語字幕にも対応しているが、劇的にオリジナル版と違いがあるわけではない。少しエンディングが追加されているくらい。


 ただ、追加コンテンツは意外と多い。ボリュームは元の倍くらいにはなっている。過剰な期待はしないほうがいいとは思うが、単なるグラフィックアップデート版ではない。

 追加コンテンツの大半は、本編というよりはデモ版の続編みたいなものになっている。変な話だが。

 なので、デモ版のノリが嫌いだった人にとってはイマイチな内容かもしれない。



 というわけで、以下はネタバレありの話。




 私が確認した限り、本編におけるオリジナルと"Ultra Deluxe"の違いは以下の通り。バケツやフィギュア集めなどの要素は省いての話。


 まず、オリジナルから削除、変更された点について。


 "Ultra Deluxe"ではコンソールが使えないので、コンソールを用いたシリアスエンドが削除されている。


 また、ゲームエンド(赤ちゃんゲームを放棄した場合に分岐するやつ)で出てくるゲームが変更されている。オリジナルは"Portal"と"Minecraft"だったが、"Firewatch"と"Rocket League"に差し替えられている。理由は知らない。


 オリジナルのホワイトボードエンディングでは、ホワイトボードにコンソールコマンドが書かれており、それを入力するとクリック音が犬の吠え声になったが、"Ultra Deluxe"ではコンソールが使えないので、代わりにdog modeのチェックボタンが追加された。チェックを入れることでクリック音が犬の吠え声になる。



 次に、オリジナルから追加されたエンディング。


 エレベーターエンディング。"Ultra Deluxe"では、上司のオフィスからマインドコントロール施設へと降りるエレベーターのボタンに「上ボタン」が追加されている(オリジナルは下ボタンしかなかった)。それにより、エレベーターで下に降りた直後に上を押して、オフィスに戻れるようになっている。これを繰り返すことで新たに分岐するようになった。


 マインドコントロール施設の最下層到達エンディング。

 オリジナル版では、マインドコントロール施設の、モニター画面が大量にある場所で、椅子とデスクを利用して落下することができた。しかしこれは開発者が予期していなかった挙動で、落ちても何も起きなかった。

 "Ultra Deluxe"では、落ちたらエンディングになるように変更されている。


 カセットテープエンディング。

 これは"2"になってからでないと出てこないので、本編に追加されたエンディングとは言い難いかもしれないが、倉庫のフィギュアを取るところで、引き返してダクトに入ることで、新規追加のエンディングに行くようになっている。




 先にも書いたが、"Ultra Deluxe"の追加コンテンツの大半は、デモ版の続編みたいなものになっている。

 オリジナルのデモ版は、「"The Stanley Parable"はこんなに面白いゲームですよ!」というのをアピールするための展示会みたいな作りになっていた。


 "Ultra Deluxe"の追加コンテンツもだいたい同様で、ある程度プレイすると、「追加コンテンツ」と書かれたドアが出現する。

 そこに入ると、"The Stanley Parable"がいかに成功を収めたかを宣伝するツアーに参加した後に、素晴らしい追加コンテンツを体験できる。


 その素晴らしさに呆れたナレーターが、「何が"Ultra Deluxe"だ! みんなが求めているのは"2"だろ!」とか言い出して、"2"がいかに素晴らしいかをアピールする展示会に行けるようになる。

 で、その後、タイトルが"The Stanley Parable 2"になり、実際、展示会に登場したコンテンツがいくつか本編に追加される。具体的にはバケツとコレクターアイテムのフィギュア。


 その状態でさらにある程度プレイすると、エピローグが追加され、"Ultra Deluxe"や"2"は大失敗であり、もう"The Stanley Parable"の続編は作らないという開発者のコメントが掲載された記事が閲覧できる。


 しかしその後、「もう開発者なんてアテにするな! 僕らで続編を作り続ければいいんだ!」と、第ニのナレーターが言い出して、その後、プレイヤーの選択次第で、起動するたびに"The Stanley Parable 3"、"4"、"5"と数字が増していくようになる。

 また、起動時にはいくつか表示される文字を組み合わせてサブタイトルも作れる。

 たとえば私だとこんな感じ。


 "The Stanley Parable 3 ビヨンド427" 

 "The Stanley Parable 4 ロード・オブ・ザ・鉛筆"

 "The Stanley Parable 5 ニコイチレーザー"

 "The Stanley Parable 6 ポケットいっぱいの電極"

 "The Stanley Parable 7 ザ・ファイナル穴あけパンチ"

 "The Stanley Parable 8 取引スイミングプール"


 "The Stanley Parable 8"は、ボタンを押すと「エイト」と言うボタンだけがある部屋のみの構成になる。これはデモ版のネタ。好きなだけボタンを押すといい。

 再びエイトボタンを押しまくりたくなったら、重役トイレの写真から行ける。


 "The Stanley Parable 9 もっと事務仕事"

 "The Stanley Parable 10 サタデーナイト脱出"


 どこまで続編が作れるかはわからないが、20までは確認した。無駄に毎回タイトル画面やBGMが異なる。



 追加コンテンツは本編のように、ナレーションに従うか従わないか、という選択はほとんどない。どちらかというと、成功を収めたコンテンツが調子に乗って続編を作って没落していく様子を描いた内容、といった感じ。

 そのため、本編の拡張版を期待したプレイヤーにとってはがっかりな内容だったと思う。

 一方、デモ版や"The Beginner's Guide"が好きだった人なら、これはこれで楽しめたと思う。Steamレビューの部屋やエピローグの雰囲気は、ちょっと"The Beginner's Guide"に似ている。



 本編の追加要素として一番大きかったのは、時刻合わせかもしれない。"Ultra Deluxe"では、ゲームを始める際に毎回「現在の時刻を入力してください」と出る。

 ここで、ちゃんと時刻を合わせるか合わせないかは人によるだろう。実はこの時刻合わせ自体には全く意味がないのだが、プレイヤーがちゃんと時刻を合わせたかどうか、0:00のままさっさとスタートしていたかどうかが重要。それによって起動時に表示される内容が若干変化する。


 私は最初にこれを見たとき、「実績の不正入手対策なのかな?」と思いつつ、ちゃんと時刻を入力した。

 本作には「火曜日にずっとゲームをし続ける」とか「10年間プレイしない」という実績があるが、パソコンの時刻をいじることで簡単に解除できる。それを防止するために追加されたのかな、と思っていた。実際は何の意味もなかったのだが。


 いずれにしても、この仕掛けは"Ultra Deluxe"でも白眉だったと思う。前作をプレイした人でも、起動時の設定画面にすでに仕掛けがあるとはそうそう見抜けなかっただろう。前作をプレイしたからこそ、かえって油断するところである。その盲点をうまく突いてきた。この追加要素だけでも、"Ultra Deluxe"を買った価値はあったと思う。


 あとは、自分で続編を作れるのは馬鹿馬鹿しくて結構面白い。起動するたびにどんどん続編ができていく。

 内容は何も変わらないが、オープニングデモででかでかと"The Stanley Parable 20 レジェンド・オブ・氷"とかタイトルが表示されるだけで結構笑える。氷なんかどこにも出てこないのに。


 あと、コレクターフィギュアがx/6と表示されるのに、6個以上あって7/6とか8/6とか増えていくネタも笑えた。いくつ取っても何の意味もないが、取れば取るほど嬉しいのがコレクターアイテムというもんである。6個の限界を超えて取れると無意味に興奮する。さすが、このゲームの開発者はわかってるね。


 というわけで、私はまあまあ楽しめた。



 本作については、こんなもんでいいだろう。考察とかは不要なはず。バケツが"Portal"のコンパニオンキューブのオマージュだとか、そういう解説要る? そもそもこのゲームはそんなに真面目に考えるゲームじゃないと思う。


 ……そうそう。オリジナルにもあったかはわからないが、少し小ネタが増えているようなので、その話はしておくべきか。


 混乱エンドの直後に倉庫に行くと、倉庫のドアのところにストーリーラインが見える。


 マインドコントロール施設をオンにするエンドは、2回連続でやるとナレーションのセリフが変わる。


 また、これは"2"からの要素だが、バケツを持って脱出ポッドエンドに行くと、次の周にはバケツがなくなるが、その次の週には「もう無くすなよ」という張り紙と共にバケツが復活する。


 このように、前回の周回が次の周回に影響を与える要素はいくつか増えているようである。……もしくは、オリジナル版をプレイした時に私が見落としただけかもしれないが。

 というわけで、細かいところをちょくちょく観察すると、いろいろ小ネタが見つかるかもしれない。

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