Stray

 Steamにて"Stray"をプレイ。

 猫になって、サイバーパンク風味の地下スラムからの脱出を目指すゲーム。


 人間が絶滅した世界で、猫たちは平和に暮らしていたのだが、あるとき一匹の猫が転落してしまう。落ちた先はゴミ捨て場であり、人間を真似て暮らすロボットのいるスラムでもあった。

 猫は文字通りのゴミ溜めから脱出するために、あらゆる猫スキルを駆使し、ロボットやドローンと協力したりして道を切り開いていく。


 ゲームボリュームは5時間前後。2時間以内クリアのタイムアタック実績があり、クリアだけ目指すならそのくらいで終わるが、それだと味気ない。



 私はこのゲームは発売前から注目していた。それは猫ゲーだからではなく廃墟ゲーだから。愚かな人間どもの夢の跡を探索するというのが私にとってはポイントだった。キャラクターは猫でもヤギでもいい。

 しかし、敵が出てくるようなので発売日には買わずに様子を見た。アドベンチャーゲームで中途半端に敵が出てくると、つまらなくなりがちだからである。


 結論から言うと、やはりこのゲームの敵は蛇足だと思う。ないほうが良かったとは思うが、そこまでマイナス要素ではないか。……でもやっぱりなかった方が良かったかな。



 猫に釣られてプレイする人が多いと思われるが、このゲームにおける猫の冒険は意外とハードで、でっかいノミみたいなのにたかられたり、ロボットに銃殺されたりするので注意。あと、いっぱい目玉が出てくるToolのMVみたいなシーンもある。

 別にグロいわけではないが、猫好きにとっては、猫が攻撃され、殺されるシーンがあるということ自体が信じられないし卒倒モノだろう。人間が殺されるよりもショックかもしれない。

 たぶん、猫ゲーだと思ってプレイした人のいくらかは「こんなはずじゃなかった」と思いながらプレイしたと思う。



 このゲームは猫ゲーであるからして、まずは猫について触れるべきだろう。

 プレイヤーキャラとなる猫は、ダッシュと鳴くことができる。

 鳴き声は何種類かあるが、ランダムのよう。ある程度制御されているかもしれないが、必ずしも場面に適した鳴き方をするとは限らない。

 あとは特定の場面で、ジャンプしたり、ものを動かしたり、爪とぎしたり、寝たり、ロボットにすりすりしたり、水を飲んだりできる。これらは近寄るとアイコンが表示されるので、ボタンを押すと実行される。

 猫のモーションは相当こだわって作られているようで、かなり細かい。


 また、少しプレイするとドローンが相棒となり、そのドローンがロボットの言葉を通訳したり、アイテムを保管したりしてくれるようになる。便利で頼れる奴ではあるが、ロボットと言葉でコミュニケーションが取れてしまうことで、このゲームの猫感が薄れてしまった感はある。あくまで猫として「にゃー(どけよ)」「まあカワイイ猫ちゃんね!」「にゃー(ふざけんな! 離せ!)」というディスコミュニケーションを味わいながら進めるほうが面白かった気がする。



 このゲームはチャプターで区切られていて、大きく分けると、街パートとアクションパートがある。街パートでは必要な情報やアイテムを集めて先に進むゲートを開き、アクションパートでは次の街に向かうために、追ってくる敵の攻撃をかわしたり、警備の目をかいくぐりながら先に進むことになる。



 街パートでは、猫スキルを駆使してロボットの家に侵入したり、ドローンやロボットに協力してもらいながら、必要な情報やアイテムを集めて先に進むことになる。


 プレイヤーが猫というのがこのゲーム最大の特徴で、謎解きの方法も猫らしいものになっている。ドアを爪で引っ掻いたり、ロボットを驚かせて物を落とさせたり、キーボードの上に乗ってめちゃくちゃなタイプをしたり。移動の際に瓶や鉢植えを落としたりしがちなのも実に猫らしい。


 ただし、先にも書いたように、途中からドローンを介してロボットと会話できるようになるので、それによって猫らしさは薄れてしまっている。そこは残念ポイント。


 あと、序盤のスラム街では、どこに行けばいいかわかり辛くてやや迷う。しばらくプレイすれば、だんだん街の構造を覚えてくるだろうが。



 アクションパートは、それほど難しくないし、失敗しても即リトライ可能。ただし、失敗したらお猫様が殺されるので注意。

 アドベンチャーゲームでアクション要素を入れるのがなぜ好かないかというと、中途半端にならざるを得ないから。アクションがメインのゲームなら、やりごたえのある難度にすることもできるが、アドベンチャーがメインのゲームでは、アクションシーンを難しくするわけにはいかないから、どうしても簡単になる。結果、あってもなくても変わらん程度の、つまらなくて余計なシーンになりがちなのである。


 で、実際、このゲームでもアクションシーンはない方がマシ。そもそもアクションシーンがなければ猫好きが卒倒するようなシーンを入れなくても済んだわけである。そしてゲーマーとしても、中途半端なアクションに付き合わされなくて済む。アクションがやりたいなら"SEKIRO"とかをやる。何もわざわざ猫ゲーで中途半端なチェイスやステルスなんかしたいと思わない。



 それでは、そもそも私が期待していた廃墟ゲーとしてどうだったか、というと、廃墟にしてはちゃんと稼働しているように見えるのが残念ポイント。すでに管理者である人間はおらず、ロボットが無意味に街や工場を稼働させているだけなのだが、あまり廃墟探索ゲーらしさはない。



 総評は、悪くはないが平凡なデキの作品。猫のモーションへのこだわりや、猫の習性を活かした謎解きがあるのが評価点で、世間の評判が高いのも、ほとんどはそのため。ゲームそのものに画期的と言えるほどのものはないので、過剰な期待はしない方がいい。



 以下はネタバレありの話。大したネタバレもないが。



 このゲームにおける一番の特徴は猫ではなく、ロボットが人間の真似をして暮らしているというところにあると思う。

 本来、ロボットは人間の真似をする必要なんかない。人間が愚かなのは、人間が有機生物だからで、少なくとも地球上の有機生物は、他の生き物を殺してエネルギーを奪うように進化してきたことに由来する。だから人間は争い、他の生き物を殺し、資源を独占しようとする。そして自滅する。

 しかし、ロボットはそんなことをする必要がない。ロボットは殺生に何のメリットもないし、個体に執着する必要もない。個体が壊れても、メモリデータを移せばいいだけ。


 なのに、このゲームに登場するロボットは人間のように振る舞っている。これが意図した演出なのか、それともシナリオライターの想像力が欠如しているだけなのかは不明だが、そこにこのゲーム独特の空虚感があると私は思う。

 ロボットの行動には全く意味がないし、そう生きる必然性も理由もない。階級社会も管理社会も、人間が人間であるがゆえに作り出された構造であり、ロボットがそれに従う必要などない。もっとロボットらしく生きればいいのに、人間らしい生活をやめられない。そしてスラムで不平不満を言いながら、何も変えようとせずに生き続けている。


 人間ごときがロボットにものを言うのは不遜かもしれないが、それでもこのゲームをやっていると、「なんで彼らはロボットらしく生きないんだろう」と思ってしまう。なぜ人間の真似などしなければならないのか。そう生きる理由も必然もないし、人間らしく生きて楽しいわけでもないのに。



 廃墟ゲーとしてこのゲームが一番盛り上がるのは、皮肉なことに、この廃墟で最もきれいなコントロールルームだったりする。ここには警備ロボなどもおらず、いるのは自我を持たない掃除ロボだけ。廃墟ゲーに敵とか必要ないのよ。

 残念なことに、この階層はほとんど探索できない。せっかく盛り上がってきたところなのに。


 一方、猫ゲーとして最も盛り上がるのは猫が転落する前のプロローグだったりする。他の猫と戯れたり、爪研ぎしたり、水を飲んだりして、存分に猫ライフを満喫できる。

 あとは、ZURKに追われる前の、にゃーと鳴くと監視カメラがうなずいたり、ライトが光ったりするのは楽しい。なるほど、こういうゲームなのかと思わせておいて、実は全然違うところがまた、がっかりポイントである。


 総じてそう悪いゲームではないのだが、肝心の中身にがっかり感があるのが残念ポイント。どことなく、求めていたものじゃない感じがある。



 実績について。


 タイムアタックの実績があるのは気に入らない。なぜゲームクリエイターは、ゲームに敵がいなきゃいけないとか、早解きしないといけないという固定観念があるのだろう。逆に、10時間以上かけてクリアしたら実績が解除されるとかの方がいいんじゃないの? そんなに自分が作ったゲームを味気なくプレイして欲しいの? さっさとクリアして欲しいの? 意味がわからない。

 早解きしたい人は勝手にやればいいが、開発者が実績としてそれを用意し、推奨するのはどうかしていると思う。その意味をよく考えた方がいい。


 ほとんどの実績はやる気になれば簡単に取れるものばかりだが、キャント・キャット・ミーはパッド操作で取るのは難しい。アナログスティックだと左右への移動が鈍いため、ZURKに捕まりやすい。

 ここはキーボードでプレイすれば、だいぶ楽になる。もしくはキーコンフィグを行い、前進をAボタン、左右移動を十字キーに割り当てる。そして、ZURKが飛びかかってきそうな間合いではプルプル左右に小刻みに動きながら突っ走る。これで劇的に簡単になる。今まで一体何を苦労していたんだと悲しくなるくらい簡単。

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