FC版ドラゴンクエストII (4800字)

 wiiの『ドラゴンクエストI・II・III』にて、FC版『ドラゴンクエストII』をプレイ。


 こちらもプレイした限りでは、内容はオリジナルと全く同じ。wii版ではどこでもセーブができるが、水の羽衣を作ってもらうには復活の呪文から再開する必要がある。書き写してもいいが、今ならスマホで復活の呪文を撮影するのが安全。



『ドラゴンクエストII』は、前作と比較すれば大幅にパワーアップしたゲームである。キャラクターがちゃんと向きを変えるし、3人パーティーとなった。船に乗れるようになり、広大な世界を旅できるようになった。

 無意味なことを喋る人物は減ったし、攻略のヒントにはならないセリフも、前作のように寒い内輪ネタや、プレーヤーを不快にさせるだけのセリフはなくなり、舞台背景を感じさせるようなセリフを喋るようになっている。

 当時のプレーヤーが熱中したのは当然だろう。船で広大な海を冒険するだけでワクワクが止まらなかったはずである。

 とはいえ、今となってはどれも当たり前の要素だから、現代においてプレイする私にさしたる感動があるわけではないが、このゲームが原型になっていろんなRPGが作られたんだなという片鱗が見られることには史学的な興味を惹かれる。



 もちろん、完璧なゲームではなく、問題点もある。


 まずは、フィールド、ダンジョンの構造が無意味に意地悪。

 風の塔に行くには海岸線沿いをうんざりするほど迂回しなければならないし、大灯台の1階も嫌味な程ぐるぐると周回させられる。ダメなゲームのお手本のような構造だが、このゲームが売れてしまったせいか、真似しているクソゲーはうんざりするほど多い。


 次に、船を手に入れた後、金の鍵がないと完全に手詰まりになる一方、手に入ると一気に最強防具が手に入って終盤になってしまう展開。

 とにかくこのゲームは、船が手に入った後、金の鍵を取れるかどうかに全てが懸かっていると言っていい。それくらい重要なアイテムなのに、ヒントはデルコンダルで毒の沼地の先にある牢に入っている兵士からしか得られない。おかげで、ラダトームに行って竜王の城で竜王の子孫に会った後、プレーヤーは迷子になってしまう。本来なら、ラダトームか竜王の城で情報が聞けるようにすべきだと思われる。

 実際に金の鍵がある場所はザハンだが、これがまた、知らなければそうそう見つけられない世界の果ての孤島だったりする。なんでこんな超重要アイテムが絶海の孤島に埋まっているんだか。

 金の鍵が手に入ると、ロトの盾、ロトの兜、ガイアの鎧がタダで手に入る。いかづちの杖も比較的容易に手に入る。そしてペルポイに入れるようになり、牢屋の鍵が買え、水門の鍵が手に入る。その他、重要なダンジョンにも入れるようになる。

 一方、金の鍵がないと、どのクエストも行き詰まる。この落差は大きい。


 そして、ロンダルキアの洞窟。永久ループと落し穴で何度も何度も何度も何度も同じところをぐるぐるさせられ、キラーマシーンやドラゴンというエグい敵が出まくる。

 構造を知っていれば楽勝だが、自力でクリアした人は地獄を見ただろう。

 しかし実は、洞窟を抜けた後が本当の地獄だったりする。雪山ではザラキとメガンテを使う馬鹿野郎が出てくる。ほこらの手前でブリザードのザラキで全滅させられた日には、ご家庭でどんな恐ろしいことが起きても不思議ではない。


 ほこらに辿り着き、復活の呪文を聞けばひと安心。ハーゴンの神殿は構造が単純だし(締め切りが迫っていて手抜きしたんじゃないのかと疑いたくなるほど一本道)、死んでもほこらからやり直せるし、この頃には金は重要ではないので気軽に全滅できる。もはやクリアは目前。

 ……と思いきや、プレーヤーには最後のクソ要素が襲いかかる。それがラスボスのシドー。ラスボスのくせにベホマを使う。他には強力な炎を吐き、2連続で仕掛けてくる通常攻撃では確率で眠らせてくる。本作の「眠り」には「気絶」という意味合いもあるので、攻撃が強烈過ぎて気絶するということなのだろう。どっちにしても勘弁して欲しい。なお、サマルと王女は眠る以前にオーバーキルして永眠することの方が多い。

 シドーには会心の一撃は出ず、攻撃魔法も効かず、マホトーンも効かないので、とにかくローレシアの王子の攻撃で、ベホマを使われる前に倒さなければならない。ベホマを使われたら仕切り直し。

 ローレが死んだらおしまい。残りの二人は自殺するしかない。パルプンテを覚えているなら話は別で、全員蘇生やシドーが逃げ出す効果を期待して唱えることになる。

 限界までレベルアップしていればさすがに楽勝だが、通常、シドー戦ではローレでLv30前後のはずで、このLvだと、稲妻の剣を装備して、ルカナンでシドーの守備力を限界まで下げても50ダメージあるかないか。シドーのHPは250だそうなので、5~6ターンの間、ローレが攻撃し続け、かつ、シドーがベホマを唱えないことを祈るしかない。ほぼ運ゲーである。

 運が良ければ低レベルでも倒せるが、たいがいは長期戦になるので、全員に力の盾を持たせて、ノーコストで自己回復できる状態にはしておきたい。


 サマルトリアの王子とムーンブルクの王女の装備が貧弱なのも問題。

 サマルは最強の武器が鉄の槍(もしくははやぶさの剣)という不遇ぶり。ただでさえ力が低いのに、ろくな武器が持てないので戦力にならない。防具も貧弱。兜はレアアイテムの不思議な帽子しかないし、水の羽衣は王女が装備するだろうから、そうすると最終防具は実質的には魔法の鎧か身かわしの服になる(ミンクのコートの方が防御力は高いが、攻撃呪文のダメージ軽減や回避率上昇効果のある防具の方がいい)。まともに攻撃を食らうとすぐ死んでしまう。

 王女は、加入してしばらくは布の服しか防具がない。盾は装備できず、兜は不思議な帽子のみ。やはり攻撃を食らうとだいたい死ぬが、水の羽衣が装備できるようになると炎ダメージを軽減できるようになって、多少はマシになる。

 この2人があまりにも脆すぎる上、攻撃される確率は等分("II"は前列も後列も攻撃される確率は同じ)。つまり敵の攻撃の3分の2は致命の一撃となり得るというハードな仕様である。



 ただ、問題点の多くは多少の苦労で克服可能なもので、地獄のような経験値稼ぎやマッピング作業が必要なわけでもない。「名作」にしては問題点が多い、という程度で、クソゲーやマゾゲー基準からすればかなりヌルい方である。ロンダルキアの地獄ぶりを聞きつけたマゾゲーマーが「どんなにすごいんだろう」とワクワクしながらプレイしたら拍子抜けするはず。

 少なくとも"I"よりは経験値作業を要さなくなったので、遊びやすく改良されていることは間違いない。



 SFC版では、サマルトリアの王子がロトの剣や光の剣を装備可能になり、物理攻撃でもそこそこ戦えるようになっている。


 全体にラリホーやマヌーサ、マホトーンが効きやすくなっており、キラーマシーンにはマヌーサ、ドラゴンにはラリホーをかけることで、ロンダルキアの洞窟もそれほど苦戦せず突破可能になっている。ただし、ダンジョンの構造はそのままなので、クソループとクソ落し穴は健在である。


 また、ロンダルキアのほこらで回復だけでなく蘇生もしてくれるようになったため、ほこらに着いた時点で勝利確定となる。ギガンテスに殴り殺されようがブリザードのザラキで全滅しようが即復活できるので、雪山で気軽に経験値稼ぎできる。ここに着いた時点で金は必要なくなっているだろうから、全滅で所持金が半分になるのも痛くない。もし気になるなら、SFC版には預かり所があるから預ければいい。


 さらに、シドーがベホマを唱えなくなっただけでなく、攻撃に眠り付与がなくなり、スクルトやルカナンを唱えるようになり弱体化。かつ、ベギラマやイオナズンが効くようになり3人で攻撃可能になった。しかも、戦闘中にザオリクが使えるようになったので、誰かが死んでも問題なし。……さすがに弱体化しすぎ。


 ドラクエ史上屈指の運ゲーラスボスだったシドーを弱くしすぎたのは問題だが、全体的にはいい改良だと思う。雪山以降の難度は激減したが、それ以前はそこまで簡単にはなっておらず、やり応えもそんなに落ちていない。


 ただし、遊びにくく改悪された部分もある。一部のダンジョンで階段が見づらくなっているのである。"I"の竜王の城でもあった現象。こんなのテストプレイすればすぐ気付く問題だと思うのだが。めちゃくちゃ画面を明るくしてテストしたのだろうか。目が痛くなるほど明るくしても、見えづらいことに変わりはない。



 以下は雑多な話。



 ロトの末裔が巨悪ななにかを倒すという意味では続編らしいシナリオだが、倒す相手は宗教団体という、世相を反映した内容になっているのは面白い。当時は世紀末が近づくにつれ、世界が滅びるとかなんとかというオカルトや、変な宗教が流行していた。オウム真理教が誕生するのは1988年で、"II"発売の1987年のすぐ後である。

 もともとは竜王を倒すから『ドラゴンクエスト』だったわけだが、"II"はもはや何がドラゴンクエストなのかわからなくなってしまった。


 滅びてしまったムーンブルクはともかく、ローレシアとサマルトリアは、なぜ大事な世継ぎである王子を1人で旅に出させるのだろう。お供くらい付けないのかね。

 しかも、ロトのしるしやロトの盾といった、旅の役に立ちそうなアイテムを城内で保管しておきながら、旅立ちの際に渡しもしないのである。渡さない理由はないので、きっと存在自体を忘れていたのだろう。

 サマルトリアの王子は暢気者とよく言われるが、ロトの末裔はみんなその気があるのかもしれない。



 "II"の特徴のひとつとして、懐かしのアレフガルドを再訪できるというファン感涙の趣向があるが、帰還してみるとラダトーム以外の街はなくなっており、他にあるのは竜王の城だけという、なかなか衝撃的な姿を見ることになる。しかも、ラダトーム王はハーゴンにビビって逃亡中。あの荒廃ぶりはすさまじい。しるしがなければロトの末裔だとわからない愚か者の棲むほこらなどのスポットも残ってはいるが(一方、ラダトームの人達は、なぜか主人公達を一目見ただけでロトの末裔だとわかる。それはそれで謎である。たった3人でハーゴン教団と戦うなんて無謀なことを考える奴はロトの末裔くらいだということなのか)。

 ゲーム的に見れば、あの小さな島に街やら洞窟やらを詰め込む容量がなかったのだろうが、それにしても、前作をプレイした人にとっては寂しい限りである。


 その荒廃したアレフガルドに、竜王の子孫がいるのも面白い。今なら竜族がアレフガルドを征服することも可能そうに見えるが、竜王の城も荒廃していることから、そんな力はないか、その気がないのか。

 ロトの末裔に決戦を挑むでもなく、ハーゴンがでかい面してるのがムカつくから倒してと依頼してくる。


 "I"では鋼をも切り裂き、竜王の強靱な鱗すらも貫いたロトの剣だが、"II"ではなぜか大幅に弱体化し、既製品のドラゴンキラーにも劣る武器となっている。長年手入れされてなくて劣化したのだろうか。一応、永久不滅の金属、オリハルコンでできているはずなのだが。竜王の血は魔界のマグマと同じ成分だったのか?

 もしくは、竜王の城にあったロトの剣はレプリカで、稲妻の剣が本物のロトの剣だったのかもしれない。他のロトグッズが然るべき場所で保管されていたのに、ロトの鎧だけロンダルキアの洞窟にあるのも不自然なので、あそこは"I"の主人公ゆかりの地だったということも考えられる。ローラ姫のストーキングにうんざりした勇者は、逃亡の果てにロンダルキアの洞窟に棲み着いたとか。あのトラップの数々は、ローラ姫の追っ手を撒くための仕掛けだったのかもしれない。

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