PCゲーム:その他

エースコンバット7

『エースコンバット6』以来、12年振りに登場したシリーズナンバリングタイトル。


 私は初代から"6"までと"ZERO"をプレイしたことがあるが、"6"のことだけはほとんど覚えていない。『アーマード・コア』と『エースコンバット』の新作が出るからXbox360を買ったはずなのに、あれだけ待ち望んでプレイしたはずの"6"の記憶がほとんどないのである。


"7"は久々のナンバリングタイトルであり、Steamでもプレイできるということで注目していたが、評判が良くなかったので買い控えていた。今年のSteamのサマーセールで充分安くなっていたので、これなら失敗しても傷は浅いだろうということで購入を決断。



"7"は、全体的に見れば、良くも悪くも"4"以降の『エースコンバット』らしい内容と言える。やることが旧作からあまり変わっておらず、マンネリとも言えるが、12年振りだからそこはいいとしよう。


 ただし、このゲームには重大な問題がある。序盤から中盤にかけてのミッションが無駄に難しい上につまらないことである。


 プレーヤーは4つ目のミッションで、護衛対象機を誤射した疑いで軍法会議にかけられ有罪となり、囚人として懲罰部隊で飛ぶことになる。

 囚人を戦闘機に乗せるという設定からして意味不明だが(どうぞ脱走、反乱してくださいと言わんばかりである)、この懲罰部隊での一連のミッションは、劣悪な環境を演出したいのか、やたらとストレスフルで不親切なミッションばかりとなっている。

 全体に悪天候下でのミッションが多く、計器飛行に慣れていないプレーヤーにはかなりキツいシチュエーションが多い。着氷や気流の乱れで機体の姿勢が不安定になる中、視程が何メートルもない状況で飛ばなければならない。

 そのうえ、味方は仕事せずに雑談ばかりしているし、上官はムカつくことしか言わない。


 制限時間内に一定以上のスコアを獲得するミッションがあるのだが、この制限時間がかなりシビアに設定されており、どのターゲットを狙えば効率的にスコアを獲得できるか、知っていなければクリアが難しい。完全な初見殺しとなっている。


 砂嵐の中でターゲットを全て撃破するミッションでは、至近距離に近づくまでは、ランダムで数秒しかターゲットの位置がレーダー表示されない。砂嵐の影響の少ない低高度を飛んでもレーダーの性能が回復することはなく、目視できているのにレーダーに表示されなかったりするなど、システム的にもお粗末なミッションとなっている。

 また、作戦空域内には僚機が多数いてAWACSも飛んでいるのだが、トラックを破壊してくれるでもなく、大まかな位置を報せてくれるでもなく、無駄話をしているだけ。プレーヤーだけが仕事をしているという有様である。


 懲罰部隊最後のミッションでは、ムカつくことしか言わない司令官の搭乗した輸送機を護衛する。真性のクズ野郎なので撃墜してやりたくなること必至だが、こいつを護衛するのは結構骨が折れるのがまた腹が立つ。近づかないとレーダーに映らない上に超長距離からひたすら地対空ミサイルを放ってくる謎SAMが司令官機を執拗に狙ってくる。

 このミッションの天候は良好で、このSAMがなぜかなり接近しないとレーダーに映らないのか、なぜAWACSが発射されたミサイルの煙などから位置を割り出してこちらに報せてくれないのか、なぜこのミッションのSAMだけ射程無限なのか、謎が多すぎるミッションとなっている。

 そこまで難しいわけではないが、撃ち落としたくなる護衛対象、仕事をしない味方、チートSAMといったクソ要素満載で、プレーヤーのやる気をゴリゴリと削いでくる。


 おそらく、懲罰部隊の一連のミッションでプレイするのをやめた人は結構いたのではないかと思われる。

 つまらない上に無駄に難度が高く、やりがいもないミッションが序盤から中盤にかけて連続するために、プレーヤーのやる気はぐんぐんと失われていくのである。

 ゲームバランスとしても、高難度のミッションを序盤から中盤にかけて持ってくるのは明らかにおかしいし、ストーリー的にも、懲罰部隊編は丸々削っても何の影響もない。そもそも懲罰部隊という設定自体がおかしい。懲罰部隊編は丸々削ってしまえばよかったのにと思う。



 懲罰部隊編が終わると、いつもの『エースコンバット』らしくなり、味方の支援もしっかりしてくる。ひどい悪天候下で飛ぶミッションや、時間制限が妙に厳しいミッションはなくなり、難度もほどほどになる。


 中盤以降のミッションは、良くも悪くもシリーズ伝統のシチュエーションのものが多い。渓谷を飛んだりなんだり。もちろん最終ミッションではトンネルの中を飛ぶ。


 そして、全ミッションをクリアして振り返って思うのである。懲罰部隊編は要らなかったんじゃないかと。



 このシリーズに共通する問題として、ロックできるターゲットが複数ある場合、ロックして欲しいターゲットをなかなか選んでくれないという問題があるが、今作はやたらめったらターゲットがある中、ピンポイントで特定のターゲットを狙わなければならないミッションが結構多いため、この欠陥がより強調される結果となっている。

 ターゲット切り替えボタン長押しで重要ターゲットを優先的にロックするとか、何かシステムの改良を考えるべきだと思う。いったい何十年この欠陥を放置し続けるつもりなのか。いい加減なんとかして欲しい。



 シナリオに関しては言及する価値もない。序盤の、プレーヤーが味方誤射した云々の件についても、何かの伏線なのかと思いきや投げっぱなしだし、懲罰部隊は存在自体がおかしいのはさんざん前述したとおり。


 その後の展開についても、いまいち説得力がない。通信衛星が破壊された結果、オーシア、エルジア両軍とも、味方と連絡が取れなくなるのだが、すると両軍とも、各部隊が好き勝手に群雄割拠し始める。確かに現代の戦争は衛星頼みだが、司令部と連絡が取れなくなっただけで野良化するような軍隊だったら、最初から使い物にならないと思う。


 さらに、エルジアではA.I.が自動的に戦闘機を生産して飛ばし、迎撃するシステムを採用しているのだが、これが人間の制御を受け付けず、破壊する以外に停止する手段がないのだという。アホ過ぎる。

 そして、A.I.を止めるという大義名分のもと、今まで好き勝手に群雄割拠していた両軍のパイロットが一致団結してA.I.を倒して大団円。酷いシナリオである。


 このシリーズのシナリオに緻密な設定は必ずしも必要ではなく、要はミッションを盛り上げてくれさえすればいいのだが、本作のシナリオはその最低要件を満たせていない。無駄に複雑なくせに矛盾だらけで伏線は投げっぱなし。プレーヤーのライバルとなるエースはミハイだけで、彼との絡みもほとんどない。

 これだったら"2"のように、淡々とミッションの内容だけ通達される方がマシだったと思う。



 シナリオはともかく、各ミッションがフライトシューティングとして面白いか、というと、過去作の方が面白い。

 純粋なシューティングとしてならPS版のシリーズ3作がよく出来ている。

 あとは"ZERO"は、エースとのドッグファイトがテーマとなっているだけあって、熱い空中戦を繰り広げられる。今作のミハイや無人機のように、変な機動で弾をかわすだけが取り柄の敵ではなく、個々にいろいろな戦法を取ってきて面白い。



 久々のナンバリングタイトル、かつ、PCで遊べる初の『エースコンバット』ということもあって、過剰な期待はしていなかったものの、せめて何度でも遊べるようなミッションを期待していたのだが、期待外れだった。これならPS2のシリーズを買い直してプレイした方がいい。

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