Little Nightmares (6800字)

 Steamにて期間限定で無料配布していたので"Little Nightmares"をプレイ。

 無料でプレイしたゲームと考えるなら当然評価は甘くなるが、ここではそのことは考慮しない。2000円程度のゲームとして評価する。DLCは導入していない。


 本作は"LIMBO"や"INSIDE"に近いゲームだとよく言われる。実際、似てると言えば似ている。若干ホラーな雰囲気で、主人公が子供。よくわからん施設から逃げる横スクロールのパズルアクションゲーム。

 ただし、"LIMBO"や"INSIDE"はパズル寄りだが、"Little Nightmares"はアクション寄りの要素が強い。タイミング良く素早く正確な操作を要求する箇所が結構ある。

 あと、初見殺しまくりゲーだと言える。追っかけられながら、何をすればいいのかを瞬時に判断して、それを的確に操作できれば初見でクリアできないこともないが、普通はまあ、何をしていいかわからないか、わかったけど咄嗟には対処できなくて何度か死ぬ。何度か特攻を繰り返しているうちに攻略法がわかるタイプのゲーム。

 また、"LIMBO"や"INSIDE"は二次元の横スクロールゲームだが、"Little Nightmares"には奥行きの概念がある。それが操作性に悪影響を与えている。このゲームではしばしばパイプの上を伝ったりするシーンがあるのだが、奥行きの距離感が掴みづらいため、足を踏み外して転落死することがある。視点で殺すゲームはクソゲーである。せめて落ちそうになったら「おっとっと」状態になるくらいの措置は欲しかった。



 このゲームは一言で言うと『トムとジェリー』である。プレーヤーは小人の少女を操作し、異形の人間的な何かから逃げるのが目的なのだが、少女はわざわざ目立つ真っ黄色のレインコートを着ており、しばしば異形をおちょくるような逃走ルートを取る。ステルスして誰にも気付かれることなく逃げようという気がいまいち感じられない。そしてそれは、チャプターが進むごとに顕著になっていく。異形どもは醜悪な連中ではあるものの、からかわれている感があって、少々同情したくなってくる。



 難度は高くないが、一部、不必要にシビアな操作を要求されたり、制限時間が厳しかったり、何をしていいかわかりづらい箇所がある。そうしたシーンは難しいことで面白くなっているわけではなく、ただストレスになるだけなのでいただけない。

 攻略手順についてはあまり凝った仕掛けはなく、同じことの繰り返し感がある。解法がわかっても「そうか!」といった感動はなく、むしろ「なんだよそんなことか……わかりにくいんだよ」と不満の方が先に来てしまう。

 そこそこ面白かったのは、肉挽き器に肉を投入してソーセージを作り、それを縄代わりにしてジャンプする仕掛けか。ああいうギミックが多彩だったら面白かったと思うのだが。



 操作性は、視点で殺される以外の問題としては、デフォルトのコントローラーのボタン配置はやりづらい印象。ダッシュがXボタン(Xboxコントローラー)のため、走りながら何かするのがやりづらい。LかRのどれかのボタンに変更した方がやりやすくなるだろうと思う。

 ハシゴを登っている間中、つかみボタンを押し続けていないといけないのもやりづらい。こんなよくわからんところでこだわりや個性を出さなくていい。操作は直感的で単純かつ快適な方がいい。

 物を投げるアクションも、初回だとよくわからない。実は、ボタンを押しっぱなしにしていると、一定時間が経ったら勝手にいい感じで投げるのだが、こういう仕様のゲームは他にないので、最初はやっていてよくわからない。私は2周目でようやく理解した。1周目はダッシュしながら投げないとダメなのか? とか、いろいろ無駄な工夫をしていた。こんなよくわからんところでこだわりや個性を出さなくていい。



 途中中断すると、死んだときのリスポーン地点よりもかなり前に戻されるのは気になった。そもそも、ロードしたときにどこからやり直しになるのかが全然わからない。

 その気になれば1時間未満でクリア出来る短いゲームだから、戻されたところで大した手間ではないが、初見だと「せっかく厳しいところを抜けたのに、一旦休憩して戻ったらまたやり直しになっていた」といった悲劇がしばしば起きる。ロードした際にどこからやり直しになるのかは明示して欲しかった。



 ゲームボリュームは、初見で3~5時間程度。クリア後のお楽しみ要素はほぼなし。少々物足りないが、価格から考えると妥当なところか。



 雰囲気や設定、ステージ構成についてはよくできている。独特の揺れから、途中からこのゲームの舞台が船内だとわかり、不気味な乗員たちが尽きることのない欲望に突き動かされていることもわかってくる。

 この手の短いパズルアクションゲームの多くは、敵は「敵」でしかなく、意味深に見せかけているだけの、どうでもいい単なる障害物になりがちだが、このゲームでは特に説明がなくても、プレーヤーを捕まえようとしてくる追跡者の事情が見えるようになっている。

 そしてそのことが、ストーリーともきちんと関連してくる。少女は度々、突然の空腹に襲われるのだが、そのことが渇望によって動かさせる「敵」と徐々に重なって見えるようになっている。ストーリーが進むにつれて、空腹を満たすための獲物が大きくなっていく少女が行き着く先は、当然、今まで食おうとしていた奴を逆に食うことになるわけである。この展開はネズミを食った時点でだいたい読めたが、こうした爽快感のある(今までさんざん一方的に襲ってきた奴らに仕返しするわけだから、復讐劇としての爽快感がある)ダークな終わり方をする話は珍しいから、なかなか面白かった。


 なお、少女を悩ませる空腹が単なる空腹でないことは、あれだけ食い物が転がっている船内をうろついていながら、それらには一切手を付けないくせに、生きたネズミには食いついていることからわかる。ノームに差し出されたソーセージを食わなかったのも同じ理由。ただ食えばいいってもんじゃないのね。

 テーブルで延々何か食ってる奴が、それでも少女を捕まえて食おうとするのも同じ理由だろう。普通なら、あれだけ食い物があるなら、わざわざ逃げる奴を捕まえてまで食おうとはしない。動物園のライオンが狩りをしないのと同じ理屈である。



 評価は、パズルアクションゲームとして見るならいまいち。ストーリーや雰囲気を楽しむものとしてはなかなかいいゲーム。しかし、雰囲気ゲーとしては無駄に難度が高めな気がする(ゲームとして難しいという意味ではなく、雰囲気を楽しむのに邪魔になっているという意味)。やはり、もう少しアクションやパズルは良質にして欲しかったか。

 私の好みからは若干外れており、おそらく買ってまではプレイしなかったゲームだと思う。


 続編やDLCを買う気はない。どうもこのゲームの開発者は、無意味にアクションの難度を上げそうな気がするからである。この手のゲームでアクションの難度は上げて欲しくない。

 もし難度を下げているようなら買うが、評判を調べてみた感じだと、やはり難度を上げているようである。



 ざっと各チャプターについて。


「監獄」


 初見だと、真っ暗な中でヒル(?)に囲まれるシーンが無駄に鬱陶しい。2周目以降だと余裕でかわせるが、初見での印象はよくなかった。

 この時点だと、ここがどこなのかわかっておらず、単に「確かに"INSIDE"っぽいな」と思うだけ。実際、"INSIDE"によく似た仕掛けが続くチャプターである。


 しばらく進めると、施設全体が独特の揺れ方をするシーンがあり、この舞台が船であることがわかる。主人公は船に巣くうネズミというわけである。


 首を吊っていると思われる足の長いのが何者なのかは不明。あんなに足が長かったら、あの船内では不自由した気がする。どうでもいいが。


 なお、各食事シーンには主人公のそっくりさんが画面のどこかにいるのだが、相当ブライトネスを明るく設定しておかないと見えない。私は初見では暗すぎて全く見えなかった。見えないんだから気付くも何もない。2周目に、もっと各ステージのディティールをよく知りたいと思って、ブライトネスをかなり明るめにしてプレイしてようやくわかった。

 あのそっくりさんが見えるほど明るくしていたら、本来は明るくしすぎである。適正なブライトネスだと見えないとか、そういう隠し要素はやめて欲しい。やるなら『ワイルドアームズ3』くらい堂々とやってほしいもんである。『ワイルドアームズ3』には重要なシーンの各所に謎の少女がいるのだが、あれだけ堂々と出ていても人は結構気付かない。



「隠れ家」


 小人を捕まえて巻き巻きしている手の長い奴のテリトリー。ここからは、異形の何者かの追跡を逃れながら探索を行うようになり、忙しくなる。前チャプターのようにじっくりとした探索がし辛くなり、"INSIDE"っぽさはなくなっていく。

 このゲームに登場する敵の中で、実はこいつが一番厄介だと思う。リーチが長いし、探索も念入りでしつこい。見た目も一番不気味。なぜ前半からクライマックスなのか。

 こいつは目が見えないが、板の上を歩くと軋む音で探知してくる。そのことがわかっていれば対処しやすいが、初見だとその仕組みがわかりづらい。目が見えないことはわかっても、忍び足なのになぜ気付かれるかがわかりづらいのである。ところどころ、床に紙や絨毯が敷かれていることに、初見では案外気付かない。


 チャプター最後の戦闘(?)もキツい。攻撃パターンを見切って、わざわざ敵に接近して、壊れかかったかごを引っ張らなければならない。操作に慣れていない段階で、これをやらされるのは辛いものがある。

 私は最初、しばらく耐久していれば、ドアに挟まったかごが壊れるのかと思って5分ほど逃げ回っていた。しかし、手長がなぜかかごをガードするモーションをするのに気付いて「ああそうか。引っ張って壊さなきゃならんのね」とわかった。わかったのはいいが、安全なタイミングを掴むのに、さらにしばらくかかってしまった。


 こういうところからも、『リトルナイトメア』はパズルゲームとは言い難いように感じる。やっていることがちょっとした"DARK SOULS"なのである。しかし、"DARK SOULS"ほどプレーヤーには自由度はない。魔術で倒すのも剣で倒すのも自由、といったことはなく、倒し方は決まっている。そこがつまらなく感じるところである。アクション重視のゲームなら、倒し方をプレーヤーに決めさせて欲しい。パズルなら無駄にシビアな操作を要求しないで欲しい。


 手長(正式名称は「管理人」だとか)は足がめちゃくちゃ短いが、首を吊っていた足長とは何か関係があるのだろうか。考察できる材料はないから何とも言えないが。


 そして、チャプター最後では生きたネズミを食う。後々の展開がいろいろ読めてしまうところである。

 この船内の連中が、小人を食っているらしいことはここまでで容易に推測できる。その一方で、少女も突然の飢えに苛まれて生きたネズミを食ってるんだから、結局は船内の連中も少女も同じ穴の狢だということが暗示されるわけである。ということは、少女と船内の連中の立場が逆転する展開だってあり得る。



「台所」


 2人のシェフが仕事をしているエリア。先ほど手長が巻き巻きしていた小人さんはハムやソーセージになるようである。しかし、シェフが料理している肉は小人じゃないから、別の何かも肉として食っているらしい。

 シェフは手の長さは普通だし、手長より聴覚もよくない。人並みな姿や能力なので、かなり楽に感じるエリアである。ただ、何をしていいかわかりづらくて無駄にうろうろしてしまうことも多いエリアでもある。死にゃしないけど、なんか同じところをぐるぐるしてるだけになってしまったり。

 このチャプターには先にも書いたように、肉挽き器に肉を入れてソーセージを作るシーンがあるが、あの肉の正体がなんなのかは気になるところである。


 せっかくネズミで飢えを満たした直後に、こんなに食料の豊富なエリアに来るなんてついてないよな、とも思ったが、実はそんなことはなかったことは後々わかる。



「ゲストエリア」


 乗船してきた客が延々何か食っているエリア。まるで古代ローマ貴族の乱痴気騒ぎである。古代ローマの貴族は、わざわざ食った物を吐いてまで食いまくっていたそうな。きっとこんな感じだったのだろう。

 最初に出てきた手長が異様だったせいで、比較的まともな姿をしているシェフやゲストはインパクトがない。しかし、このゲストには見た目よりは素早く動く上、少女は隠れる気がない。そのために難度は高いっちゃ高いエリアである。でも納得はいかない。


 だんだん少女の態度がジェリーよろしく大胆になってくる。自分を食おうとしている連中のテーブルの上をわざわざ走り抜ける。遊びすぎである。

 おかげで初見だと、どうすりゃいいのかわかりづらい。まさかわざわざ自分から敵に発見されにいかないとクリア出来ないなんて、なかなか思いつかない。


 テーブルの上で捕まらずに抜けるシーンは、完全にパターン記憶型のアクションゲームになっている。敵のリーチを見極めて、安全地帯(でも敵の目の前)で悠々と待機するとか、一回フェイントをかけて、硬直時間中に抜けるとか。私はこのゲームにそういう攻略法は求めていなかった。敵を舐めすぎ、緊張感なさ過ぎである。ここまでくるとホラーではない。完全に『トムとジェリー』である。


 このエリアはパターン記憶やアクション操作に偏っており、パズルほぼ皆無。しかも、ステルス要素も捨て、堂々と捕食者の前で挑発行為を行う。こうなってしまうと「なんか違う」と思ってしまう。コメディカートゥーンならともかく、このゲームはホラーなんじゃないの? "Dead by Daylight"とかでもそうだが、キラーをサバイバーがおちょくるようになったら、もうそれはホラーではない。興醒めしてしまう。あんまり好きでないエリアである。

 ただでさえ、ゲストは手長に比べたら見た目に威圧感がないのに、さらにおちょくるようになってしまったら、ねえ。


 ゲストエリアを攻略すると、さんざん食い物があるエリアを通り抜け、かつ、ノームがソーセージを差し出しているのに、それを無視してノームを食っちゃうシーンへと続く。結局この少女も、この船の住人と同じ呪いだかなんだかの影響下にあることがわかるシーン。

 生きたネズミを食った時点で、この「食事」がエスカレートするんだろうなとは想像できたので、驚きはしなかった。

 ちなみに、私があのシーンを見たときの感想は「ああ、やっぱりそうなるよね」だった。話の流れ的にノームを食っちゃうことはもうわかっていたから、ほとんど諦め気味に、ソーセージを選ぶ方法はあるのかな? と、少し試してみたくらいだった。無理だったが。

 しかし、あれがハグにカウントされるというのが皮肉の効いているところである。


 ただ、ソーセージの肉の正体いかんでは、ノームを食おうがソーセージを食おうが、結局は同じということもありえる。いずれにせよ、少女は新鮮な肉の方が好みらしい。



「レディの部屋」


 このチャプターは難しいところは何もない。食後のデザートチャプターである。ただ、レディ戦でどう戦えばいいのかがわかりづらくはあった。

 あれだけ割れた鏡が大量にあれば、レディに鏡を見せればいいことはすぐわかるが、明かりの点いているところにダッシュしなければならないことは、何度か死ぬまでわからなかった。戦闘に入ると特定の箇所に明かりが点くというギミックに気付かなかったためである。しょうもないところでわかりづらいのはやめて欲しい。


 レディは、少女が空腹になったときに流れる歌らしきものを唄っている。船の人達や少女が欲望に苛まれるのは、おそらくレディの力によるものなのだろう。もしくは船自体に力があり、レディも被害者の一人なのかもしれないが。


 レディの部屋に少女の絵が飾ってあるのは意味深である。物語の原理からすると、レディはもともと少女と同じ立場にいたのではないかと推測できる。つまり、あれは過去のレディの姿、ということ。それが何らかの経緯で食われる側から食う側になったのか。


 それはどうだか知らないが、ともかく少女はレディを半殺しにした挙げ句に食うことになる。襲ってきたのはあっちだから、自業自得ではある。

 レディの力を奪った少女が、ゲストの皆さんを指一本動かすことなく皆殺しにしながら船外へ出るエンディングはなかなか良かった。


 最後は島の塔らしきところで下船したようだが、魔女の住処と言えば塔と決まっているから、たぶんそういうことなんだろうと思っておく。

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