PC:ライザのアトリエシリーズ

ライザのアトリエ (6200字)

 Steamにて『ライザのアトリエ』をプレイ。


 プレイ環境はi7-3700、GeForce GTX 1060 6GB、メモリ16GB、SSD使用。1980x1020解像度、影だけミドル、他全てチェックあり設定で、ほぼ60fpsが出ている。昼のクーケン港だけ少しfpsが落ちる。

 FXAAをオフにするとかなり軽くなるが、キャラクターの線のジャギーがけっこう気になる。それよりは影の品質を落とした方が良さそう。


 プレイした時点で、ある程度アップデートが重ねられていたこともあり、私が遭遇した不具合はひとつだけ。ゲーム中にチュートリアルボタンを押すと、ウェブページのヘルプに飛ぶのだが、そこからゲーム画面に戻る際にカーソルが効かなくなることがある。粘っていたらそのうち動くようになるので、セーブしてないなら諦めて強制終了しない方がいい。



 アトリエシリーズは、初期のマリーとエリーのみプレイしたことがある。マリー、エリーの頃のアトリエシリーズはSLGとしての要素が強く、傭兵を雇って採取に出掛けたり、依頼をこなして金を稼いだり、妖精さんをコキ使いながら、制限年内に高度な錬金術を駆使した制作物を作ることが目的だった。

 その後、アトリエシリーズがどう変遷していったかは知らないが、少なくとも『ライザのアトリエ』はほぼRPGのようになっている。パーティメンバーは固定、ストーリーは一本道。制限日数なし。



 本作の錬金術は『スカイリム』でいうところの錬金術と鍛冶と付呪を共通のシステムにして、より複雑にした感じになっている。草や鉱物を採取してしてきて調合して……というプレイ感覚も『スカイリム』に近い。


 採取は、採取道具によって採取できる素材が変わる。木にオノを使えば木材が取れて、棒を使うと木の実が落ちてくる。

 見慣れた場所の見慣れた草でも、採取道具が増えれば新たな素材が取れることがある。これが楽しい。フィールド自体はオープンワールドのゲームと比べれば狭いが、プレイが進むごとに新たな発見があるようにすることで、密度を上げている。

『スカイリム』や"Red Dead Redemption 2"で草を引っこ抜くだけで楽しかった人ならまず楽しめる。


 調合は、とりあえずは基本となる素材を混ぜるだけでブツは完成するが、素材の品質や、混ぜ物を増やしたりすることで、完成後の性能に大きな違いが出るようになっている。ヘルプ等で説明されていないイレギュラーな調合の仕方もいくつかあって、それを探し出すのも楽しい。面倒くさい人のためにオート調合システムもあるが、調合の面倒くささを楽しむのがこのゲームの本筋である。そこで楽しめないなら普通のRPGをプレイした方がいい気がする。

 武器や防具の制作では、こだわり出すと何十という素材をひとつひとつそれ専用に調合して組み合わせていくことになり、かなり壮大な計画になる。このゲームの戦闘は楽なので、実用上はそこまでする必要はないが、こだわろうと思えば無駄にこだわれるシステムはいい。


 レシピの多くは、初歩的なレシピから発展させることで発見できるようになっている。

 主要な素材のレシピの開発で躓くと、多くの制作物が作れない状態になって死活問題になる。ただ、ボトルネックになっている制作物をどうやって作ればいいかを推測するのも錬金術の楽しみというもの。



 戦闘システムはリアルタイムのコマンド式。FF7とかで採用されているアレだが、テンポが速くて最初は戸惑う。プレーヤーは一人だけ操作できて、他のキャラは勝手に戦う。

 いろいろ複雑なシステムが付加されているが、基本的には適当にぶん殴っておけば勝てる。キャラクターが弱い序盤だけ気をつければ、後はそんなに大変ではない。


 錬金術で作った薬や爆薬は、装備しておくことで、ポイントを消費して使用するシステムになっている。薬や爆薬そのものは消費されない。ポイントは帰還することで回復する。

 ポイントの制限が厳しいので多用はできないが、苦労して作った超高性能爆薬が使い捨てにならないのは嬉しい。



 仕事の依頼人は自分で探す必要がある(初期アトリエシリーズでは、依頼人の方からアトリエにやってきた)。依頼人を探すのは、序盤はどこにいるのか解りづらくて大変だが、ストーリーが進むと、ファストトラベル画面でどこで依頼が受注できるかわかるようになって楽になる。

 宝探しは、ファストトラベル画面では確認できないが、アトリエにある地図で位置を確認できる。……このシステムに気付かないと大変。



 このゲームを買う際に懸念だったのは、登場人物の性格が胸くそ悪いという評価が多かったこと。代々小さな島から出ないで暮らしている連中の閉鎖的で陰湿な感じが描かれているとかなんとか。

 あんまり鬱なシナリオは嫌だなあと思っていたのだが、実際には大したことなかった。前半に親子げんか、子供同士のけんか、嫌味な村の指導者といった、子供時代によくあるうざい話がところどころ入るものの、島全体が陰鬱としているわけではない。

 そもそも、このゲームの本筋は採取と調合で、ストーリーはオマケみたいなもんである。採取と調合が楽しければ、ストーリーが多少気に入らなくても問題にならない。

 ストーリーについての詳しい話は後に書く。



 総評は、『スカイリム』で錬金術や鍛冶が楽しい人や、"RDR2"で草を引っこ抜くのに喜びを感じられる人なら間違いなく楽しめるゲーム。逆に、ああいうのが面倒な人はやめておいた方がいい。



 というわけで、ネタバレありでのストーリーについて。



●ネタバレありの話



 ストーリーの前半では、ライザたちは新米ということもあって、親から「遊んでないで家の手伝いをしろ」などと言われたり、ボオスから嫌味を言われたりと、一部の人の視線が冷ややかである。ああした反応は、プレーヤーとしては辛いかもしれないが、あの時点ではライザたちには実績も何もないのだから、ああいう見方をされるのは当然だろう。

 一方で、サブイベントでは普通に村人たちはライザに依頼をしてくるし、依頼を達成すると素直に喜んでくれるから、私はメインストーリーでの冷ややかさはあまり気にならなかった。


 その後、竜を退治することで多少評価されるようになるが、その評価は功績に見合っているとは言えず、また、助けたボオスには妬まれて、陰口を広められる。

 ここがこのゲームのストーリーの底の部分といえる。漁師に不漁をなんとかして欲しいと頼まれ、餌を作ったけど効果がなくて使えない奴呼ばわりされた挙げ句に、不漁の原因をライザ達に押しつけてくるくだりである。


 この辺は確かにプレイしていて嬉しい展開ではないが、ライザの仕事の仕方にも問題があるので、一概に漁師の言動を非難できない。

 ライザは不漁という問題を解決するコンサルタントとして雇われた身であり、成果がなければ批判されて当然である。問題が解決しない以上、努力したことは何の評価にもならない。これが王宮付きの錬金術士だったら、責任を問われて首を刎ねられていたかもしれない。嫌味を言われるだけで済んだのはマシなほうである。

 また、依頼された仕事を充分にこなしていない内から、外界の魔物に気をつけろという、具体的にどう気をつければいいかわからない警告を発したのもよくない。こうした、クライアントにとって都合の悪い警告は、信頼関係が築けてからすべきである。どうしても警告したいなら直接言うのではなく、護り手を通して伝えるべきだっただろう。


 クーケン島は閉鎖的な村ということになっており、作中でも度々その点をライザたちは批判しているが、私は閉鎖的とは感じなかった。

 掟を破っても何のペナルティもなく、わりとこっそり島の外に行っている村人も多い。外部から商人も来ているし、よそ者や錬金術を特段嫌っている様子もない。若干その辺でうるさいのは村長とモリッツだが、彼らも外界の魔物を倒した途端に好意的になったところを見ると、偏見に凝り固まっているというほどでもない。


 私はあの島の住人は、閉鎖的というよりは、良くも悪くも子供っぽいのだと思う。目先の利益しか考えず、島の遺跡や歴史などには興味が無く、噴水が枯れても原因を調査しようともしないし、ライザたちが決死の戦いを挑んでいても誰も気付かない。その代わり(ボオスを除けば)陰謀や裏切り、妬みなどとは無縁で、ライザたちが仕事をする分にはちゃんと評価してくれる。

 ライザたちやボオスの精神年齢が見た目よりも低いのは、プレイした人なら気付いたと思うが、あれは島の住人の特性なのだろう。



 ストーリーに関して私が気に入らないのは、ボオスの性格設定周りだけ。

 ボオスは、前半と後半で性格にギャップがある。前半は口先だけの人間で、ライザやレントではなく一番弱っちいタオを集中的にいじめて、実力で敵わないとみると陰口を広めて間接的にライザたちの力を削ごうとする陰険卑劣虚勢姑息野郎である。

 しかし、竜にボコられたり、キロに助けられたりした経験を経ることで、自分のへっぽこ具合を嫌というほど認識して、陰険卑劣虚勢姑息野郎を卒業しようとする。ここまではいい。


 しかし、話によると、ボオスは小さい頃、ライザが溺れかけているのを助けようとして大人を呼びに行き、その行為が「逃げた」と誤解されたことがあったという。これはおかしい。

 この話が事実だとすると、ボオスはもともと騎士道精神を持ち合わせていたことになる。そんな人物が陰口を広めるという手口を使うだろうか? どうもこのくだりには納得がいかない。


 おそらく、陰口のエピソードか、ライザを助けるエピソードか、どちらかが後付けの設定なのだろうと私は思う。

 考えられるパターンその1は、陰口を広めたのはもともとはボオスではなかった可能性。当初のシナリオでは、島の連中が錬金術を気味悪がってウワサが自然発生した、という筋書きだったが、それだと島の雰囲気が陰険になりすぎてよろしくないということで、ボオスの策略ということに変更した。

 その2は、ライザが溺れかけたとき、ボオスは助けを呼びに行ったんじゃなくて、マジで逃げた、という設定だった可能性。開発途中で設定が変わり、「実はあのときボオスは大人を呼びに行っていた」という設定が後付けされた結果、矛盾が生じてしまったのかもしれない。

 その3は、そもそも脚本家は、ボオスとライザたちがケンカしている理由を考えていなくて、途中で理由が必要になったからライザが溺れた件を追加したが、そのせいでボオスの性格設定に矛盾が生じているのに気付かなかった、という可能性。

 私はその1が本命だと思っている。シナリオが暗くなりすぎるのを回避するために、ボオスに損な役回りを負わせたのだろう。



 ライザがいくらなんでも短期間で錬金術士として成長しすぎじゃないか? というのは少し気になったが、クリント王国の錬金術士が何も無いところからああした大掛かりな装置を発明したのに対して、ライザは故障した実物を見た上で、それを修理したり改良するだけなので、そこはそんなに無理はないのかな、とも思った。

 また、錬金術そのものも、昔と比べて発展しているとも考えられる。器具は当時の物をそのまま使っているが、技術や知識の体系は整備されて、初学者でも理解しやすくなっているのだろう。


 クリント王国が総掛かりで失敗した作戦を、ライザたち6人で成功させてしまうのも非現実的なように感じるが、クリント王国の人間がクーケン島の人々のように子供っぽかったのだとしたら、ありえなくもない。

 きっとクリント王国の連中は危機的状況に陥っても、ひとつにまとまらなかったのだろう。全員で一丸となって作戦を遂行すれば女王を始末することは可能だったが、統率が取れずに失敗した、ということなら充分ありえる。


 私はライザが農家の娘だという設定を知ったとき、農業と錬金術は相性がいいなと思った。実家の畑だのヤギの餌だのを改良して、高品質な麦やミルクが取れるようになれば、それを調合にも活かせたりする。『アストロノーカ』的展開があるのか? と期待していたが、ちっともそういう方向に話が進まないのは意外だった。ライザは心底農業に興味がないらしい。


「うに」が木になっているのは懐かしかった。無意味にたるを調べられるのもシリーズの伝統になっているようである。ただ、今作のたるの多くは、ぶっ壊して素材を採取するためのものなのだが。


"RDR2"から続けてこのゲームをプレイしたわけだが、どうも別のゲームをプレイしている気がしなかった。"RDR2"でも、もっぱら素材を求めて草を引っこ抜いたり、動物を殺して皮を剥いだりしていたからだろう。キャラクターの言動がガキっぽいのも共通している。

 ライザを操作しているときも、どうも私はアーサーを操作している気分が抜けなかった。アーサーにしては走るのが速いし、素早く草を引っこ抜くし、ファストトラベルをするのにいちいち焚き火をしてムービーを20秒近く見る必要がなかったりして、ずいぶん快適なわけだが。

 プレイしながら、そのうち野生馬が出てきて乗れたりしないのかね、とか、わけのわからないことを思ったりしていたが、そういえば『ワイルドアームズ3』のヴァージニアは馬に乗っていたか。ヴァージニアはライザと方向性は似ているが、完全に振り切ってしまっているぶっ飛んだリーダーだった。あれに比べればライザはかなり常識的な気がする。



 プレイアブルキャラについて。


 本作は6人パーティで戦闘に出せるのは3人だが、結局私はクエストをこなすのを優先したため、6人をまんべんなく使った。前半はライザ、レントに後衛をローテーションというシフトだったが、後半は戦闘関連のクエストが多いレント、リラ、アンペルという組み合わせが多かった。終盤はライザの戦闘関連のクエストがなくなることもあって、ライザはずっと補欠。ラスボス戦にも参加しなかった。

 クエストをひととおりこなした後は、レント、ライザ、アンペルの組み合わせでほぼ固定。


 クラウディアがあの格好でちゃんと戦えるのは、ものすごいギャップがある。日本のゲームでは、およそ戦闘に向かない格好で戦うのは珍しくないが、それにしてもクラウディアの一般人っぽさは飛び抜けている。しかも得物はフルート。クラウディアが戦えることの衝撃に比べたら、クーケン島の秘密なんかなんでもない。


 前衛はどのキャラも使いやすく、大きな差はないように思う。ただ、ライザの万能さはひとつ抜けている。攻撃から回復までなんでもこなす上、高品質のアイテムを開発できるようになると、シエルライトからのアイテム使用で暴力的なダメージを与えられるようになる。錬金も鍛冶も魔法も撲殺もお任せという、ドヴァキン並の万能さ。


 後衛はアンペルが優秀な気がする。通常攻撃の火力は高めだし、時間関係のスキルも使いやすい。フェイタルドライブでほとんどの敵をブレイクできるのもいい。


 このゲームの仕様上、プレーヤーが動かすのは後衛の方が都合がいい。つまりはタオ、クラウディア、アンペルの誰かを操作するのが理に適っている。

 なのに、なぜか前衛を操作して攻撃ボタンを連打しがち。攻撃ボタンを連打するだけなら、NPCに任せても同じなのに。

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