ライザのアトリエ2 (6500字)

『ライザのアトリエ2』をSteam版でプレイ。私は採取地としてクーケン島が追加されるDLC目当てでDigital Deluxe版を購入した。


 クーケン島については、序盤から上位の素材を入手可能になるが、品質上限が低いので、本編で同じ素材が採れるようになると行く意味が無くなってしまう。また、クーケン島内では本編ほど細かくファストトラベルできないので移動が不便。あとは、村や隠れ家、前作のネタバレ地域には行けない。イベントなどもなし。

 前作を懐かしむ分には悪くないが、なくても支障ない内容である。同梱されている追加衣装に興味がないなら単体版で問題ない。


 本作は他に、Digital Deluxe版にシーズンパスを同梱したバージョンも売っているが、こちらも追加衣装に興味がないのであれば、イベントやレシピなどが追加されるDLCを単体で購入した方が安い。


 余談だが、私はキャラクターやアバターの見た目を変えられる要素に高い金をかける人の気持ちは分からない。私はこうしたカスタマイズにこだわりがない。デフォルトのままでよくないか? と思ってしまう。

『スカイリム』などのMODでキャラクターを変えられるものもあるが、そういうのにも興味がない。私はプレイアブルキャラが美少女だろうが髭面ハゲのむさいおっさんだろうがヤギだろうが、どうでもいいのである。キャラの外見だけでなく、言動やストーリー展開まで変わるなら話は別だが。

 ただ、車ゲーやロボゲーでは、選べるカラーが少ないとがっかりするし、塗装しては暗いところと明るいところで色合いをチェックして、気に入らなければ塗り直したりしている。"Forza"シリーズは車の見た目を細かく変えられるのでいい。ホイールをカーボンにして「すげえ、超贅沢!」とか、しょうもないところで盛り上がれる。もちろん、カーボンにしても車重や強度が変わったりするわけではない。



 プレイ環境は前作と同じ。i7-3700、GeForce GTX 1060 6GB、メモリ16GB、SSD。解像度1980x1020、影、草の密度をミドルにすることでほぼ60fpsが出る。もう少し安定させる場合は、(リアルタイム)ローカルリフレクション、ポイントライト表示距離を1段階下げる。草やオブジェクトの表示距離を下げるのも効果があるが、これらの設定を下げると、一昔前のポリゴンゲームのように、近づくと草や建物が生えてくるように見える。


 序盤のみ、この設定だと少しカクつきが出たので画質設定を全てミドルにしてプレイしていたが、しばらくプレイしていたら影以外をハイにしても問題なくなった。なぜかは知らない。キャッシュができたから?


 シナリオは前作をプレイしている人向けになっており、前作を知っていることを前提に話が進む。そのため、前作を知らないと話が見えない箇所がいくつかある。

 ストーリーのうえで重要な事物に関しては、新規キャラクターが説明を求める流れで説明されるが、前作キャラのサブストーリーでは、前作未プレイ者が置いてきぼりになりそうなやりとりもいくらかあった。


 前作よりも全体にボリュームアップしており、錬金術の複雑さもアップ。RPGとしてプレイしたい人には面倒くさいだろうが、このゲームはそもそも錬金術ゲーなので、錬金術周りでやれることが増えるのは大歓迎である。



 錬金術のシステムは前作とほぼ同じだが、レシピの開放方法やレシピ進化などの仕様に変更があり、前作より少し複雑になった印象がある。

 前作でも、強力な上位アイテムをつくるためには、まずは下位のアイテムからしっかり作り込んでいく必要があったが、今作は下位から上位へと積み重ねる工程が前作よりも増えていて、新システムのエッセンスによって奥深くなってもいる。


 新システムのひとつ、エボルブリンクは、アイテムを合成することで追加効果を付与するものだが、一部の組み合わせでは新しいアイテムができることがある。

 なお、とあるコアドライブの発動条件に「アポカリプスとN/Aを同時使用する」というものがあり、下手に用語に詳しいと「表示がバグっててわかんねーよ。DLCでも導入しないと作れないアイテムを使わなきゃならんの?」などと思うだろうが("N/A"とは該当無しを意味する言葉で、だいたいエラーが起きたときにお目にかかる)、実は"N/A"というアイテムが存在し、それはエボルブリンクで作ることができる。紛らわしい。


 エッセンスは、使用することでレシピの一部を強化できる。特に、アイテムに最上位の効果を付与する際に必須となる。

 本作をプレイしていると、ある時点で「『極』の付いた採取道具ってどうやって作るんだ?」という疑問が湧くと思うが、それは「匠」効果を付与する環にエッセンスを使うことで開放される。その他、属性値+2を+3にしたり、影響拡大+2を+3にしたりなど、結構やりたい放題できる。

 エッセンスで悩ましいのは、属性を変更できること。たとえば、火属性付与を雷属性付与に変えたり、薬品属性付与を毒属性付与に変えたりできるのだが、変えた場合は元の属性がなくなってしまうので、そのアイテムが何のために必要なのかを考えて、最適な属性を付与する必要がある。単にゲームをクリアするだけなら、そこまで考えて調合する必要はないのだが、こだわり出すと深淵に嵌まる。どのアイテムを作るのに何が必要で、そのためにどんな中和剤が必要かとか、メモをしてはひとつひとつ調合していくことになる。ここまでやり出すと、結構本格的な錬金術をやっている気分になってくる。ちまちましたことが好きな人にはたまらんだろう。繰り返すが、クリアするだけならそこまでやる必要はない。やりたい人はとことんこだわれる、という話である。


 前作だとストーリーが進まないと手に入らない素材のせいで錬金術の仕事が足止めされることがしばしばあったが、今作では、宝箱から上位アイテムを少しだけ先取りできたり、店の品揃えを改良できるシステムを利用することで、足止めされている感はだいぶ緩和された。うまくやれば、早い段階でかなり後にならないと入手できない素材を使い、上位のアイテムを作ることができたりする。


 錬金術の面倒くささは前作以上であり、やり出したらかなりの時間を取られるが、それを楽しむのがこのゲームの本筋というものである。このシリーズの本質はSLGであり、今でもそうである。RPG要素はあくまでサブに過ぎない。『スカイリム』で錬金術、付呪、鍛冶が好きだった人なら前作以上に楽しめるだろう。アトリエに引き籠もり、超強力な錬金素材をちまちまと作っては、悪の科学者のような悪い笑みを浮かべて悦に入ることができる。


 前作のライザは錬金術だけでなく鍛冶までこなすドヴァキン並の万能ぶりだったが、今作では鍛冶に関しては鍛冶職人にお任せすることになった。インゴットや武器や防具は錬金術で作れるが、さらに改良するには職人のところに持っていく必要がある。

 また、畑仕事も農家の知り合いに委託する形に。なんでもかんでもライザがやってしまうよりは、多少は分業する方が現実的だし、ほっとするところではある。しかし、畑仕事についてはライザがやってもいいことではある。肥料や栄養剤、種などは作るくせに、畑仕事そのものには心底興味がないらしい。



 仕事の依頼は、通常の依頼に関しては、カフェにある掲示板から受注できるようになった。期限はないが、受注できる件数に制限があり、一部の依頼は受注時に手数料がかかる。なんで依頼を受ける側が前金を払わにゃならんのかと思ったが、どうやらこれは仕事に失敗したり、放棄した際の保険金という扱いのようである。おそらく王都では受注した仕事を放り出す人が多いため、こうしたシステムが確立したのだろうと思われる。面白い仕組みだと思う。


 イベントとして依頼される件については、従来通り自分で依頼人のところに行ったり、依頼人がアトリエを訪れることで発生する。



 行けるところはかなり増えた。前作は行ける範囲がやや狭い印象を受けたが、今作は充分なボリュームがある。メインクエストでは行く必要のない箇所もある(サブクエストを進める上でのトリガーになっている)。

 効率よく採取できる場所となると結局は限られてしまうが、探検ゲーとしても充分楽しめるボリューム。


 もともとこのゲームでは敵とのエンカウントを容易に回避できるが、今作ではレベルの低い敵はこちらを見かけると逃げるようになったため、エンカウントはさらに減り、より探索が楽になっている。


 今作は遺跡の調査が目的となっており、遺跡をある程度攻略すると、調査の手掛かりが得られるようになる。手掛かりを集めて組み合わせると、ストーリーを進める上で必要なレシピを発見したり、遺跡に関する情報が得られたりする。

 この手掛かり集めは遺跡中をくまなく歩き回る必要があり、少々面倒。ただ、お手軽に考古学研究的な雰囲気が楽しめるという点では悪くない気もする。もう少し頭を使う内容の方が面白かった気もするが、難しすぎて行き詰まるプレーヤーが続出しても困るから、ほどほどの難度になっているのだろう。


 また、今作では、複数の遺跡の調査を平行して進められる場合があり、一本道RPGらしさを多少紛らわしている。結局どう進めてもストーリーは同じだが、自由の幅があることは悪くない。ストーリーの都合で素材が採取できないせいでレシピ開発が滞ってしまうのを緩和する意味でも、行ける範囲が広いのはいいことである。



 システム周りは前作を踏襲しているが、細々と変わっている。採取周りのシステムは改良されて使いやすくなり、前作ではほとんど意味がなかったジャンプはフィールド移動中に使用するようになっている。ツタを掴んで崖を登ったり、泳いだりといったアクションも増えた。


 特に変わったのは戦闘システムで、前作のように敵味方が一列に並ぶ形ではなくなった。敵味方が戦場を走り回ったりしながら入り乱れて戦う形式になったため、操作中のキャラと、そのキャラが狙っている敵以外の動向が掴みにくくなっている。視界外から攻撃されそうなときは赤い警告表示が出るが、プレイしていると結構見落としがちである。

 戦闘中の忙しさは相変わらずだが、タイミング良く防御することで攻撃を防いだり、多段攻撃が出来るようになったりと、よりリアルタイムでの操作が要求されるようになっている。アクションゲームに近くなった。


 キャラクターの個性も前作より出ているように思う。キャラによって一撃が重い、APが稼ぎやすい、TLvを上げやすい、などの特性があって、プレーヤーの戦術に合わせて使うキャラを選べるようになっている。


 今作では前衛3人に加えて、4人目のキャラをサポート役として配置できるようになった。サポートキャラはゲージが溜まると選択中のキャラと交代できる。交代時には攻撃を仕掛けるので、それでコンボを繋いだりも可能。

 本作の戦闘の難度は低いので、このシステムを使いこなさなければならない局面はあまりないが、死にかけのキャラと交代したりなどすることで戦術の幅が広がる。なかなか面白いシステムだと思う。


 戦闘の難度は、錬金術でどの程度アイテムや武装を作り込んでいるかによって大きく変わる。強力な武具やアイテムを所持していれば楽勝だし、そうでなければだんだん厳しくなっていく。

 とはいえ、基本的には難度ハードくらいならそう難しいことはない。カリスマ以上になると敵の基礎ステータスが跳ね上がるが、それ以上に問題になるのはデバフの影響がキツくなること。高難度でプレイするならデバフ対策は必須。



 シナリオについては、前作は、主人公のライザが悪ガキから成長するという内容だったこともあり、大人が子供のことを認めてくれないとかなんとかという青臭い感じの展開があったわけだが、今作のライザはすでに一人前の錬金術士であり、きっちり仕事をこなしている。前作のような鬱陶しい展開はない。

 前作は、ライザがストーリーを主導する側だったが、今作のライザはタオの手伝いのために王都を訪れており、メインストーリーでもサブストーリーでも、基本的に誰かを助ける側となっている。特にサブストーリーは、主要キャラクターの抱えている問題を解決していく内容。ライザ自身の問題をどうにかする話はほとんどない。そのため、ストーリーとしてはだいぶ安定して落ち着いた内容になっている。



 その他、細々とした雑感について。ネタバレあり。



 今作の舞台は都会なわけだが、都会でも錬金術士が認知されていないという設定だったのは意外だった。結局、本作ではアンペルとライザ以外に錬金術士は出てこない。王都に大学があって体系的な研究がされているのかと思っていた。

 前作で錬金術士という存在がなかなか認知されなかったのは、島民が無知な田舎者だからというわけではなかったようである。


 今作では、タオとクラウディアの武器が変わっている。タオがハンマーから双剣に変えたことについては作中のイベントで触れられているが、クラウディアがフルートから弓に変わったことについては何も触れられていない。フルートで戦う前作のクラウディアは衝撃だったが、今作は普通である。

 双剣に持ち替えたタオは手数が多くてTLvを上げやすく、使い勝手のいい頼れるキャラになっている。


 レントのサブイベントは、やりたかったことはわからんではないが、シーンによってレントが明るくなったり暗くなったりと情緒不安定で、ちぐはぐな印象を受けた。

 本来ならレントの精神的問題が解決されてからパーティーに加わるべきだが、そうするとレントは隠しキャラ扱いにせざるを得なくなり、それだとメインシナリオやレントが絡んでくる他のキャラのサブイベントを、レントのいるバージョンといないバージョンの2種類作る必要があり、そんな余裕はないからああなっているのだろう。


 セリのイベントも、進め方によっては矛盾が生じる。遺跡攻略の前にセリのイベントを進めてしまうと、ライザはすでにセリが種を探していることを知っているのに、メインクエストでは知らない体で話が進むことになる。


 遺跡調査を進めると、早い段階でフィーが何者かはある程度わかるようになっているが、シナリオ上は終盤まで知らないことになっていて違和感があった。少なくともライザは遺跡に残る記憶にアクセス可能で、それを見れば当時、フィーと同じ生物がいたことや、その役割について、もっと早い段階で理解できたはずだと思うのだが。

 遺跡調査はストーリー上必要なレシピの開放以外では必須ではないため、プレーヤーによって調査進捗に差が生じることからああなっているのだろう。しかし本来なら、調査で知り得た情報は、知っている体でシナリオが進展して欲しいように思う。知っているのといないのとでシナリオが分岐すると面白いが、そこまで望むのは酷なのか。


 前作に続き、本作でもライザ自身の恋愛話は全くないが、パトリツィアのサブイベントは恋愛絡みの話となっている。ライザはパトリツィアに恋敵と思われていることには最後まで気付かなかったが、パトリツィアがタオを好いていることにはすぐ勘付いたらしい。鋭いのか鈍いのかよくわからん奴である。


 都会暮らしは金がかかるという話だが、私は終盤まで金を使わなかった。前作の島暮らしの時よりも金が必要なかった気がする。前作は一部のレシピを買うのに金がかかったが、今作は無銭プレイもできそうなくらい金がいらない。ただ、一部の依頼受諾の際に手数料がかかるので、その支払いは必要か。


 本作では「くり」が登場するが、当然のごとく水中で採れる。見た目は「うに」と同じで紛らわしいが、うにではないのでうにとしては使えない。必要となるレシピもないようで、はっきり言って紛らわしいだけで邪魔なだけの採取物と言える。

 さらに紛らわしいことに、水中では「ミズうに」というのも採れて、こっちは「うに」扱いのようである。結局、ミズうには栗なのか海栗なのか、どっちなのだろう。……海栗と書いたら余計わけがわからなくなるか。


 前作で「野生馬に乗れないのかね」と思っていたら、本当に聖獣に乗れるようになった。乗らないと進めない場面はないので影が薄く、このシステムの存在を忘れがちではあるが。聖獣でないと行けないところを用意するなどして、もう少しシステムとして絡んできたら面白かったと思う。

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