第1話 ⑤
それからの俺は相変わらず勉強しない分、スポーツに打ち込んだ。
陸上競技はまだ花が咲かないでいるが、格闘技ではそれなりに良い成績を出した。空手でちゃっかり全国大会に進み、ちゃっかり優勝してみせた。ボクシングはせいぜい適当なスパーリングを年間で十数試合して全勝。合気道は同年代の相手がいなかったので師範とひたすら稽古を積む日々。柔道は投げ技を全て習得すると同時に早々に辞めたから試合には出ていない。水泳も今年の冬で辞める予定だ。十分体力と筋力と肺活量をつけたしな。役目は終えた。
途中夏休みのうちに大阪で世界陸上が行われるという大イベントがあった。実はかつてこの時に、中学では陸上をやることを聞いた母さんが、中学の陸上部の顧問がチケットを押さえたとのことで、良ければ部員たちと一緒に観に行ったら?と誘われたのだ。
しかしこの時の俺はまだ陸上競技に対してそんなに情熱が無く、それどころかゲームにしか興味が無かったガキだったので、馬鹿なことに観に行かなかったのだ。
ここが次の人生修正箇所。俺は世界陸上を見に行く!
因みに今更だが、俺の住まいは大阪府の東大阪市だ。
夏休み、そして世界陸上大阪が開催される日...俺は長居駅で中学の陸上部と合流して一緒にスタジアムに入って席に着く。
「もしかして来年陸上部に来るん?」
褐色の女子...たしかU本
「なんかめっちゃ速そうやなー。俺すぐに追い抜かれそうや」
俺を見てそう言った色黒の男子は...Y部さんだ。“べーさん”っていつも呼んでたなー。この人は、かつての俺にとって目標の先輩だった。2年生の秋頃にこの人は大化けした。翌年には大阪で200m2位、400m3位入賞して近畿大会にも出場を決めることになってる。今はまだあまり速くないみたいだが、いずれは俺の目標になる人だ。いや今回は、ライバルだ...!
「来年一緒に走りましょう」
俺は来年先輩になる人達に挨拶して回った。短距離キャプテンになるN西さんに部の主将を務めるH多野さん、リレーのアンカーだったK田さん...。
いや~懐かしい。またこうしてかつての先輩たちと会えるとは。皆良い先輩だったんだよなー。特にべーさんとは練習でよく一緒に走ったよな。U本さんとO島さんには夜の良いオカズになってもらいましたっけ!うんやっぱり顔も体つきも良いな。また二人で抜こう。
そして夜時間、100mの決勝を観る。アメリカのダイゾン・ケイ、ジャマイカのヨルファ・バウエルなど、かつての世界のトップスプリンターたちを現地で見られることに俺は嬉しく思った。2000年代後半の頂点に君臨するスプリンターたちの、レース......俺は圧倒された。
これが、生の9秒台の世界か...。かつて俺は日本人で10秒フラットのレースを現地で見たことがあった。ここ長居スタジアムでだ。あれももの凄いレースだったが、やっぱり世界トップはあれをさらに上回る凄さだったな...。
速い...純粋に速い。直で見て改めて9秒台のクソ速さを体感した。
だが俺がいちばん観たいレースは...100mの倍の距離を走る種目、200mだ!中学生からは俺は200mを専門種目にして活動してきた。200mのレースの方がなんか面白いからである。その200mに今年は、あの男が出る!是非観たい!
数日後、中学陸上部とともにスタジアムで観戦する。夜になり最後の種目が行われる...200mだ。出場選手を見る。先日100mで金を獲ったケイが出てくる。その次に出てきたのが...ユサイン・ボルト。後に100・200ともに不滅の世界記録を樹立させるジャマイカの男だ。
身長196㎝、デカい。ケイですら小さく見えるくらいだ。
そしてレースが始まる。
......いやぁ、圧巻だった。今大会は銀メダルだったとはいえ、凄い走りだった。19秒台、エグい世界だ...。
俺もあと10年以内であそこに...!
夏休み明け以降は、陸上競技に対するモチベが増した。あの選手権大会を観に行って本当に良かった。心にグッときたね。彼らの走りを現地で見たのは大正解だった。
後日のリレー決勝も良かった。日本のリレーパス。この頃には既に完成していたんだな。感動したぜ。
世界トップクラスのレースをたくさん見たせいで、俺のモチベは上がりっぱなしだ。早く、レースに出たいなぁ...。
練習していく中で俺は確信していた。走りで花が完全に咲くのはたぶん高校生くらいだと。今はまだ早く咲かせる必要は無い。俺の時代を築くのは2010年代以降で良い。それまではまだ中学生のトップレベルで陸上競技を楽しもうと思う。あとゲームやスクールライフもな!
そして秋も冬も地道に下積みを重ねたり、娯楽面では能力を使って宝くじをじゃんじゃん当てて稼いで好きな物をたくさん買った。読み集めていた作品、ゲーム、さらにはノートパソコンもこっそり買っておいた。これで簡単に
月日はあっという間に過ぎ、小学校を卒業する時が来た。
身長は本来の時と違って165㎝にまで伸びて、自分でも分かるくらいにしなやかな筋肉が備わっていた。陸上競技の自主トレ、水泳、そして格闘技で培ってきたものが全て俺の血肉となっている。この先やっていくスポーツを一つ選ぶなら...やっぱり陸上競技だ。俺はどこまでいっても単純に思い切り走ることが好きな男みたいだからな。ここはどう足掻いても変わらない歴史になる。
さて...金にしろ娯楽にしろ学校にしろスポーツにしろ...面白くなるのはここからだ。
存分にこのやり直し人生を謳歌しようではないか!!
小学生編 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。