第2話 マーケティングが強い企業


――過去にこんな話があった。


既存本のコピーをフルカラー80ページにして、新たにイラスト追加した本を出版しよう。


本の価格は2,940円(税込)


かつて、発売日2007/12/25に大々的に宣伝され売り出された本である。


既存本の価格は980円で、その本が販売される数年前に作成されたものである。

既存本の販売数は、1万部にも届かない。




――売れるわけがない!



通常なら、そう思われていた。

誰が見ても売れるわけがないとおもう。



 しかし、重版に次ぐ重版、品薄が続き、各書店に予約票が届きまくり、問い合わせも数万件あったといわれる伝説の本になっていた。


しかも、2013年12月31日まで重出版を繰り返したのである。



 それでも飛ぶように売れていった。



 結果的に数十万冊市場に出回り、中古などで数多く出回っている。

もしかすると数百万冊に上るかもしれない。



日本全国だけに限らず、海外でも同時販売されたのだ



鳴かず飛ばずで980円でさえ、誰からも見向きもされなかった本が、3倍近くの値段をつけ、100倍以上の重出版まで行ったのだ。



●mazonでは、現在の価格は1円+送料。

新品中古問わず30冊以上の在庫がいまだにある。

そのため、現在飽和してるため、本自体の入手は容易い。



 これのカラクリは簡単である。



大手オークション会社を経営する大手電話会社で有名の子会社で、ある出版社が売り出したものだ。


販売元も大手電話会社でさらにそこも子会社。



つまり、グループ総出で広告に注ぎ込んだのだ。



 そして、その本は有明のビックサイトで行われるコミケなどでも宣伝、販売が行われた。



――ただ、ユーザーは、本の内容などどうでもよかった。



何を求めて購入に殺到したのか?


本についてくる【おまけ】が目的である。


 昔、ビックリマンチョコがヒットしてシールだけ抜きとられ、中のお菓子が大量に破棄されるなどの社会現象になったことがあったが、これに近いものがある。




 当然おまけに関しては、新品じゃないと入手困難である。



――つまり、中古書店に何十冊並ぼうと関係ない。



ようは、ユーザーは”新品”にしか興味が無かったからだ。



このように3つの要素が重なったことで起こった現象である。




・大手電話会社というネームバリューによるマーケティング戦略。


・最初はただのおまけでしかなかったが、徐々に口コミで広がり、欲求を満たそうと求めるユーザー層。


・発売元は独自のルートで数万人のユーザーに宣伝できる地盤を持っている運営会社。



まさにこの三つが重なった奇跡の調和ともいえる。





当然これに味を占めた運営会社は、たびたび近いものを出してたりする。


ハズレを何度も引くこともあるが、ヒットすれば収益は莫大のものになる。


更に言えば、後ろに控えてるのはマーケティング戦略で成功を収めている会社である。


外れるわけもなく、その事業のみで、運営開始から20年で数兆円規模の売り上げを叩き出している。




ユーザーにどれだけ認知するか?

ユーザーの購買意欲をそそるか?

ユーザーに求められる商品になるか?




このあたりが重要であって、この会社にとってみれば、本の内容については、ほんとどうでもいいわけだ。




この本を生み出した作者として、この結果をどう考えるかは、作者にしか分からない。



 だが、私はこう思う。


――世に出したけど誰の目にも触れられないよりは、良かったかもしれない、と。

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