ヤンデレに愛されて仕方が無い第六十話
首を抑えて地面に転がる老婆に冷たい視線を送る八峡。
(こんなの後輩にゃ見せられねぇな)
そんな事を考えながら未だ動く老婆に士柄武物で首を完全に断ち切る。
八峡の瞳は濁り切っていた。それは彼を殺し続けた贄波教師と同じ目だった。
殺す事に頓着の無い瞳。八峡は何時の間にか贄波教師の効率の良い殺害方法を伝授していたらしい。
士柄武物を振る。老婆の体液を軽く払い、士柄武物を老婆の趣味の悪い服で拭いた。
(さて、これで俺を狙う奴は居なくなるだろうが……)
(宗教団体ってのはそう簡単じゃねぇからな)
(頭が死んでもまた別の頭が生えるのがセオリーだろうし)
(それにより一層俺に対する執着をしてくるかも知れねぇ)
(今以上に面倒臭くなる事もありえるって訳だ)
八峡は自身の軽率な行動に対して反省したが後悔は無かった。
(ま、ムカつくババア殺したのはスッキリしたし)
(これからの事はこれから考えるか)
と楽観的だった。
(東院ん所に戻るとするか)
(アイツ、怒るだろうな)
(まあしゃあねぇか)
そうして戻ろうとした時。
八峡の足に何かがしがみ付いた。
それを見る為に八峡は足を見る。
其処に居るのは首輪を付けた少女だった。
「あ、ぁ……」
「ありがとう……ありがとう、ございます」
「貴方は……私を救って下さった」
感謝の言葉を並べる白髪の女。
八峡は感謝される事に対して不服そうだった。
別に感謝される覚えはない。
ただ八峡が勝手に彼女を救い、彼女は勝手に救われたのだから。
自己中心的な行動が結果的に彼女を救ったに過ぎない。
「貴方の為に……私は全てを、捧げます」
「私の光です……私の全て………」
そんな事を言う彼女に対して。
八峡はふと思いつく様に指を鳴らした。
「俺の言う事聞いてくれる?」
「なんでもします」
「なんでも、言って下さい」
「じゃあよぉ」
八峡は老婆の服を剥ぎ取ってそれを彼女に渡した。
「これ、着てくんね?」
そうして、八峡は老婆の服を着た少女と共に元の部屋に戻っていく。
其処には、当たり前の様に勝利をしていた東院の姿があった。
「貴様ッ!俺を置いて行くとは何事だッ!」
そう怒りを露わにしながら東院が八峡へと近づくが。
すぐ隣に居る数奇な恰好をした少女を見て止まる。
「おい凡骨、なんだその女は」
東院が警戒する様に言った。
八峡は隣に立つ女性を見て言う。
「新しい教祖様」
そう言った。
東院は訝しげに八峡の顔を見て、次に少女の顔を見る。
服に多少の血が付着している事から、東院は教祖を殺したのだろうと推測した。
つまりこの女はその教祖に成り代わる存在だと。
「信者は黙って無いだろうが」
「大丈夫だろ、奇跡の御業って奴は」
「前の教祖様じゃなくて、この女がしてたみたいだし」
八峡は前老婆の言葉から、彼女が術式持ちである事を知っていた。
彼女の手によって、負の感情を取り除く行為を行っていたのだ。
「まあ、なんとかなるだろ」
「ならないだろ、馬鹿か貴様」
東院は相変わらずの様に否定する。
八峡はそんな東院を無視して彼女に顔を向けた。
「お前さ、名前、何て言うんだ?」
少女に名前を伺うと。
少女は少し考えて、自らの名前を口にする。
「祁答院……歌鳴子」
そうして、彼女は奴隷から教祖と言う成り上がりをして見せた。
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